「良くなった」の言葉だけに満足しない。データと数字で示してこそ価値がある。【ゼロスペック株式会社】
2023年7月10日 公開
大手企業で学んだ、何事も数字で考える姿勢。
このユニークな商品を開発した多田さんは札幌市の出身。高校まではサッカーに打ち込み、卒業後、進路に迷う中で知人の勧めによりアメリカに留学した。海外に出たことで日本の良さを再認識して、短大卒業後に帰国、広告代理店に就職したというが、その理由がなんとも秀逸だ。
「あえて経営状態が悪化している会社に就職しました。そうした状況にある会社では何が起こるのか、学ぶことが多いのではと考えたのです」
結果、その会社は入社1カ月後に民事再生法の適用を受ける。だが、経営を家具小売業大手のニトリに営業譲渡したことで、同社の広告関連部門を担うニトリパブリックが発足され、多田さんも移籍することとなった。
同社では広告関連の業務の他、本社にも出向し新規事業開発を手掛けるなどさまざまな分野で業務経験を積んだ多田さん。当時よく言われた「数字で話せ」という言葉が、現在の自分にとっての重要な礎となっていると振り返る。
「物事を数字化して正しく判断し、ロジックで考える姿勢を学んだことはその後の大きな財産となりました」
多田さんは、入社時から「いずれは起業したい」と周囲にも公言。20代後半で似鳥昭雄会長と話す機会があり、その時に言われた言葉にもまた感銘を受けたそうだ。
「独立するなら40歳までは幅広く経験を積んでからのほうがいい、とアドバイスされました。それまで学べるものはしっかりと学び、吸収をしてからにしたほうがいい、と」
同社での日々は充実し一時は起業の夢も忘れるほどだったというが、最終的に多田さんは39歳で独立。会社の皆も応援して送り出してくれたそうだ。
「灯油は定期配送するもの」という常識を覆す。
「人口減少や高齢化が進む中で、将来はどんな仕事が必要になるかを考えました。そんな時にふと灯油タンクが目に留まり、灯油配達について調査してみたんです。まさにひらめきが下りて来た、という感覚でした」
調査の結果で多田さんが知ったのは、残量が分からない中で定期的に配達をする配送員の苦労。高く積もった雪をかき分けながらやっとのことでタンクにたどり着くと、まだまだ満タンに近く補給の必要がなかったり、反対にお客様から「タンクが空になる寸前なのにまだ来れないのか」とクレームがきたり…。
「灯油配送員の高齢化が進み人手不足が進めば、将来的に〝灯油難民〟が発生し、特に北海道では深刻な問題が生じるのではという心配も頭をよぎりました。海外ではゴミの量を可視化して効率的に回収するシステムがあると知っていたので、灯油タンクの残量を配達前に遠隔で把握することを思い付いたんです」
そうして多田さんが開発したのが、灯油タンクのふたにセンサーを取り付けて残量を把握するシステム。ニトリで学んだデータや数字の大切さを踏まえ、中小の業者でも気軽に使える価格帯や、導入の手軽さを重視した。
仲間を信じて未完成でもまずは一歩を踏み出す。
「『導入して良かった』という感覚的な評価よりも、導入した結果、残業時間がどれだけ減って、家族との時間がどれだけ増えたかなど、具体的な数字として分かる価値を提供することを大切にしているんです。ここでもまた『数字で話せ』というニトリでの教えが役立っています」
たった一人で創業したゼロスペックだが、現在の従業員は15人。急成長企業として注目を集めながらも、多田さんは「自分は未熟な経営者だ」と話す。
「最初から100%の事業、完璧な会社を目指すのではなく、まずは小さくても良いから一歩を踏み出すことを大切にしています。そして社員皆で検証し、改善を繰り返していけば、自ずと良い方向に進むでしょう。そのために、まずは共に挑むチームを信じること。どんな人であれ、一人でできることは決して大きくはありませんからね」
ゼロスペック株式会社
https://www.zero-spec.com
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