注目企業のトップに聞くin北海道 起業の原点は北海道と東京の就活格差を埋めたいという思い。【株式会社FULLCOMMISSION】

2023年7月3日 公開

国内外からさまざまな人が集まり日々交流が生まれるゲストハウス「Ten to ten(テントテン)」の運営をはじめ、空き物件を宿泊施設として生まれ変わらせるコンバージョン事業、若手起業家支援も兼ねたシェアオフィス運営など、個性ある事業展開で注目を集める株式会社FULLCOMMISSION(フルコミッション)。代表の山崎さんに起業への思いや目標を伺った。
代表取締役/山崎明信さん
新潟県で生まれ、父の仕事の都合で各地を転々と移り住む。幼少期を北海道で過ごし本州の小学校に入学した後、高校2年生で帯広へ。北海道大学卒業後、東京の不動産デベロッパーに就職し、26歳で起業。

就活で感じた東京と北海道の格差、やるせなさ。

子どものころ、転勤族だった父について全国各地を転々と移り住んだという山崎さん。
「転校先でクラスメイトたちに受け入れられるため、常に面白がられる人であろうと努力して、気付けば人の輪の中に入るスキルを身に付けていました」
帯広の高校を卒業後、進学した北海道大学農学部ではアメフトに没頭。起業を考えるきっかけとなったのは、首都圏の企業を目指して就活する中で感じた疑問だったという。
「北海道の学生が3年生の冬ごろから就活を始めるのに対し、東京の学生は1、2年生の時からインターンの機会が豊富にあります。圧倒的な〝就活格差〟に愕然としました」
インターンを経験することには、働くとはどんなことかを学び、自分に合う職業を探す、選択肢を広げるなどのメリットがある、というのが山崎さんの見解。3年生の12月に就活を始める札幌の友人たちが、わずか3、4カ月で妥協を抱えながら就職先を決めていく姿を見るのがやりきれなかったと振り返る。「いつか起業して、この格差を埋めたい」という思いがこみ上げたそうだ。
3年以内の独立を目標に掲げ、山崎さんはまず東京の不動産デベロッパーに就職。空き物件となったオフィスや学生寮を、住宅やホテルに用途変更して生まれ変わらせる「コンバージョン」と呼ばれる業務を主に担当した。
ところが就職から2年たったころ、リーマンショックが世界経済を揺るがす。山崎さんの勤務先も倒産し、当時住んでいた社員寮も売却されることに。職と住まいを同時に失った山崎さんだったが、あるのは「今こそ起業」という選択、その一択だった。

初のアフリカ進出で知った雇用機会を作る大切さ。

かくして不動産のマーケティング事業をスタートした山崎さんだったが、家賃の高い東京で住まいとオフィスを確保するのは容易ではない。そこで思い付いたのが一軒家を借りて自宅兼オフィスとしつつ、5人の仲間たちとシェアするという方法だ。
「5人それぞれに人脈があるため、互いに紹介し合うことでコミュニティが広がり、新しい仕事にもつながったんです。シェアハウスが生み出す力ってすごい、と感動しました」
北海道にもこの文化を広めたいと考えた山崎さんは、札幌でのシェアハウス事業の展開を決意。同時期に放送していたテレビドラマの影響でシェアハウス人気が高まったことも後押しし、店舗数は5店舗に増えた。短期利用や宿泊の要望も多かったことから、事業をゲストハウス運営にも拡大。外国人人材を積極的に採用し、国際色を高めていった。
海外展開をしたのもそのころ。帰国を控えたタンザニア人スタッフから「また一緒に働きたい」と言われたことから、彼の働く場を作るためにタンザニアにも進出を果たした。
「東京と札幌どころではない、日本と海外との雇用や経済の格差を知りました。初めて現地の人を雇用した時に『働ける環境を作ってくれてありがとう』『これで子どもに教育を受けさせられる』と感謝されたんです。雇用を作るのは、とてつもなく有意義なことなのだと知った貴重な経験でした」
多くの仕事がある日本と違い、働く環境があることは決して当たり前ではないのだと山崎さん。雇用を作ることは人生の先を見通す機会を作ることでもあると、更なる雇用創出への思いを強くした。メキシコやベトナムにゲストハウスを展開し、更にコロンビア、フィリピンにも…と、快進撃を続ける最中に始まったのがコロナ禍だった。

アメフトで培った不屈のメンタルがコロナ禍の支えに。

世界中の宿泊業者が大打撃を受けたコロナ禍。山崎さんの会社も売り上げは10分の1に激減し、一部の海外拠点は撤退せざるを得なかった。しかしそんな中でも、不動産デベロッパーでの経験を生かし、コンバージョンによる不動産の再活用事業を軸に持ち直しに成功した。
「アメフトで培った、絶対にあきらめないメンタルがあったからピンチを乗り切れたんだと思います。どんな時でも格好良いのは最後まで前を向き続ける人です。起業した時に比べれば、今のほうが金もあるし仲間もいるだろ?って自分に言い聞かせ続けていました」
コロナ禍が収束しつつある今、山崎さんは再びシェアオフィスやシェアハウス事業に重点を置く。そこから若手起業家が生まれるように支援したり、イベントを開き学生との食事の機会を設けたりと、後身の育成にも力を注いでいるという。
「北海道のスタートアップ企業は、東京に比べ多いとは言えません。しかし東京では大企業でなければ受けられないような仕事を、我々のような中小でも任せてもらえるチャンスがあるのが札幌なんです。面白い企業が増えればそれだけ就職の選択肢が増え、東京との就職格差を埋めることにもつながります。これからの若い世代に背中を見せられるような仕事を作り出していきたいですね」

株式会社FULLCOMMISSION(フルコミッション)

2011年創業。札幌とメキシコでゲストハウス「Ten to Ten」を運営する他、空き物件を宿泊施設などに生まれ変わらせる不動産事業を展開。シェアハウスやシェアオフィスの運営を通じた若手起業家の支援にも力を入れる。
北海道札幌市中央区北5条西11丁目15-4 BYYARD内
TEL.011-200-0978
https://f-commission.com
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
BOSS TALK
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時25分〜放送中!
※番組は2023年9月26日で終了しています。

注目企業のトップに聞くin北海道

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