十勝農業の未来に向けて、「作るだけでは終わらない農業」を。【前田農産食品株式会社】
2026年6月22日 公開

本別町出身。明治32年創業の農家の4代目として育ち、東京農業大学卒業後はアメリカへ留学。農場経営や大規模農業について学び、2000年に家業へ戻った。現在は140ヘクタールの農地で4種類の小麦を中心とした農業を展開しながら、自社ブランド小麦粉や電子レンジ専用ポップコーンなどの開発・販売にも取り組む。若手農業者の国際交流支援活動にも力を入れている。
アメリカの大規模農業を学び、
実践への情熱が芽生えた。
渡米当初はテキサスの大学で1年過ごし、北海道と気候が似通った北部のアイオワ州立大学へ転入。学生主体の農場経営プログラムなどにも参加し、多くの農場を見て回った。
「頭の中が、アメリカナイズされました。ただ、いくら農場で話を聞いたり、教科書を読んだとしても、実践しなかったら意味がない。そう感じて1年半後に帰国し、すぐに就農しました」
当時の自社農地は、およそ74ヘクタール。小麦を中心に、ビート、大豆、小豆などを栽培していた。一方、アメリカでは400ヘクタール規模の大農場も珍しくなかったため「規模拡大こそが農業の正解だ」と考え、作付け面積を広げていった。しかし、比例して土壌や気候、人手のやりくりなど、管理すべき要素も増えていった。
「規模を広げればうまくいくと思っていましたが、現実は単純ではありません。このままでは、維持が難しいと感じました」
転機となったのが、2009年。父に今後の経営について相談した際、「お前がこの会社の方針を決めるんだ」と言われたことがきっかけで、自分なりの農業を考えるようになっていく。
農業持続の鍵は
一過性ではなく、食文化にあり。
実は前田さんはかねてからパン用小麦「春よ恋」の生産にも着手。そのころ、十勝の製パン業界を牽引していた「満寿屋商店 ますやパン」の杉山雅則社長から、「十勝のパン用小麦で食文化を作りましょう」と声を掛けられた。その言葉が、心の中に残り続けていた。
「『食文化を作る』と言われた時、これは1年や2年で終わる話じゃない。10年、20年かけて、一緒に育てていくものなんだと実感しました」
その思いは、農業を続ける覚悟にもつながっていった。2009年からは冬期間を活用し、小麦の乾燥や選別を行う設備を自社で整備。製粉会社と契約してオリジナル小麦粉として販売し、パン店へ直接届ける仕組みも整えた。併せて、パン職人たちを畑へ招く「北海道小麦キャンプ」も開催し、生産者と作り手が直接意見を交わす場づくりにも取り組んでいる。
「農業を持続するためには、一過性の作物づくりではなく、続けられる仕組みや技術向上が必要です。更に、お客さんに届く形まで考えることも大切なんです」
“作るだけ”を超える
ポップコーン事業へ。
「小麦に種類があるように、ポップコーンにも寒冷地向けの品種があるはず。そこで、ポップコーンの本場のアメリカで、最北端にある農家を探して研修に行きました」
2年目も結果はほとんど変わらなかった。原因を探るため、再びアメリカへ渡り、現地の農家を訪問。そこで返ってきたのが、「ここにお前の答えはない」という言葉だった。北海道には北海道の環境に合った方法が必要なのだと気付いたという。
着目したのは、「穀物混合乾燥法」と呼ばれる技術だ。異なる穀物を一緒に乾燥させることで、水分のばらつきを整える方法である。選別工程で出る規格外の小麦を活用し、ポップコーンの水分を均一化させる独自技法の研究を重ねた結果、3年目の2016年、ついに「北海道十勝ポップコーン」が誕生した。
前田さんには「ウェルカムトラブル」という好きな言葉がある。思い通りにいかないことも楽しみながら挑戦する。その姿勢が、新たな商品開発や海外への流通展開にもつながっている。
「人生も農業も、そんな簡単にうまくいくわけじゃない。だからこそ、トラブルが起きる前提で準備をして、社員みんなで楽しみながら挑戦していきたいです。そして、若い世代にも、農業を面白いと思ってくれる人が増えたらうれしいですね」
前田農産食品株式会社
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
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