米国出身の夫と共に日本酒文化を世界へ!老舗酒屋5代目の挑戦【株式会社裕多加ショッピング】
2025年9月1日 公開
老舗酒店後継への迷いから酒店&バーの開業へ。
「商売人として尊敬する一方で、私にとって父は柔道の師範でもありました。小学四年生で柔道を始め、高校を卒業するころには実業団入りの話もいただき、当時は武道の道へ進むというのも選択肢の一つでした。しかし大きなけがをしてしまい、あきらめざるを得なくなってしまったんです」
理恵さんは気持ちを切り替え「世界の人が何を考えているのか知りたい」と、19歳でカナダへ語学留学をすることを決意。つたない英語とジェスチャーでコミュニケーションを取りながら異国で暮らした経験は、社交性を高める良い機会だったと振り返る。
「帰国後、家業を継ぐことへの現実味は増しましたが、まずは自分の力でどれだけできるか力試しをしようと2006年、裕多加の看板は借りずに『酒屋&BAR観月蔵』をオープンしました。店を継ぐとしても、日本酒が同世代や女性にあまり飲まれていないという実感があり、何もしなければ日本酒文化が途絶えてしまうのではという危機感もあったんです」
販売店でありながら、夜はバーとしての顔を持つ観月蔵。理恵さんは20代の若者や女性をターゲットに、日本酒好きではないという方でも楽しめるようにとワインやビールなども提供。知り合いの店でシェイカーの使い方を習い、オリジナルカクテルを振る舞うこともあったという。日本酒に親しむ裾野を広げる店として、来店をきっかけに日本酒の魅力にはまる人が増えていった。
結婚・出産を経て立ちはだかるコロナの壁。
「ヒッチハイク旅行をしていた彼に知人を介して出会い、父がプロデュースした日本酒『北斗随想』をごちそうしました。『お米から出来ているのにフルーティで、食事にもよく合う』と彼が気に入って。帰国後も度々来日しては父の店を手伝ってくれるようになりました」
2008年、裕一さんから頼まれて家業に戻ることにした理恵さんは観月蔵を畳み、カリンさんと共に裕多加ののれんをくぐった。「後世に日本酒文化を残すために、日本酒をもっと多くの人に知ってもらいたい」という意志は変わらずとも、家業の命脈を守らなければならないという後継者としての使命感もあった。
2009年に結婚、その後3度の出産を経てからは、理恵さんは日本酒を知らない人たちが日本酒に触れられるきっかけを作ろうと、異業種を掛け合わせた花とチーズと日本酒のコラボイベントや、神社の境内で書道や日本舞踊などと一緒に日本酒を楽しめる日本の伝統文化の体験イベントを主催するようになった。しかし、2019年の新型コロナウイルスの流行を境に、厳しい状況に追い込まれていった。
「店の売り上げにも大きな影響があり、飲食店からの注文はほとんど無くなり、観光客がお土産品として酒を購入していく機会も無くなりました。巣ごもり需要もあまり実感できず…。それでも逆境にこそ燃える性格の私は、思い切って2号店を出店することにしました」
5代目社長として酒造りにも挑戦。
「2022年には念願の移動バー『SAKE TRUCK』も稼働し始めました。それでも経営不振は続いていたのですが、どん底だからこそ好転のチャンスだという思いで、同年5代目社長就任を決意しました」
後継直後の2023年、娘の頼もしさに安心したかのように裕一さんは他界した。父として、柔道指導者として、商売人の先輩として教え導いてくれた言葉の数々に、理恵さんは人生を通して支えられてきたと追想する。
「一番心に残っているのは『迷った時は大変な道を選びなさい』という言葉です。人生の岐路に立った時、いつもこの言葉を掛けてくれていました。若いころは意味が分かりませんでしたが、今なら分かります。仕事でもプライベートでも、苦労は必ず糧になるということを実感しているからです」
理恵さんは裕一さんの遺志を引き継ぎ、カリンさんと共に、国内外へ知識や歴史などの日本酒文化継承に注力しつつ、新たな事業にもどんどん挑戦していきたいという。
「裕多加では2018年から『顔が見えるお酒プロジェクト』と称して、知人農家の米を酒蔵メーカーに持ち込んで『ヒトツメ』という名で日本酒を製造しています。いずれは自社製造の酒販売を実現したいですね。醸造時に出る酒粕を肥料にするなど、循環型農業に積極的に取り組むことで、環境問題にも向き合う酒屋を目指していきたいと考えています」
株式会社裕多加ショッピング
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
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