日本と世界をつなぐ一杯を。元CAが巻き起こす日本茶ブーム。【大森園株式会社】
2024年6月24日 公開
大病に立ち向かい、夢をかなえたお茶屋の孫娘。
「ですが、私自身は幼いころから日本茶よりも牛乳や麦茶が好きで、両親も『将来は自分の好きな道に進みなさい』と言ってくれていたので、家を継ぐという考えは全く無かったんです」
大学では経済学を学び、ゼミでの研究内容は、当時NIES(新興工業経済地域)として高い成長率を記録していた、韓国・台湾・香港・シンガポールの経済発展がテーマだった。研究調査の一貫で東南アジアへ足を運ぶこともあり、次第に日本と東南アジアをつなぐ航空会社への就職を夢見るようになっていく。しかし、歩みを進めようとした矢先で、大森さんは大病を患ってしまう。
「入退院を繰り返し、大学を卒業するまでに7年もかかってしまいました。就職活動では無理を押して受けた航空会社に全敗。体のことも考えて一度は実家近くの企業に就職したのですが、夢をあきらめることができず、たまたま従業員を募集していたシンガポール航空の就職試験を受けたら合格したんです。当時25歳で、CAとしては入社ギリギリと言われる年齢でした」
亡き祖母の思いを継いで、日本茶を世界へ。
「徐々に病状も良くなったこともあり、シンガポールに居住地を移し、シンガポールと日本を結ぶ路線のCAを担当していました。結婚を機に丸5年で退職したものの、ここで学んだ接客サービスや経験は一生ものの財産として、人生の基盤になっています」
日本に戻った大森さんは離婚を経て東京でツアーコンダクターの仕事を始める。その背景には、多民族・多宗教の国、シンガポールで働いていたことで、多様なニーズに合わせた接客ができるという自信があったからだった。しかし仕事が軌道に乗り始めたその時、今度は祖母が末期がんで倒れたという一報が届いた。
「祖母は幼いころから私を娘のように育ててくれた人です。放ってはおけないとすぐに仕事を休み、祖母の看病のために北海道に戻りました。たった1カ月で看取ることになってしまいましたが、それまでの間、祖母の大森園に対する創業当時からの思いを聞くことができました」
戦後、少ない資金で行商から始めて苦労の末に店を構えたこと、人生を懸けて店を守り抜いてきたこと、そのすべてを聞いた大森さんは大森園を後継することを決意した。
「その時、シンガポール航空で働いていたころをふと思い出したんです。機内サービスで出していたドリンクメニューの中でも、特にビジネスクラスやファーストクラスを利用するお客さまには日本茶がとても人気だったなって。だから旅行業界から離れたとしても、今度はきっとお茶を通して世界中の人とつながることができる。バラバラだった点と点がつながった瞬間でした」
祖母譲りのチャレンジ精神で、日本茶ブームと茶畑をつくる。
「代表になってからは更に責任も増し、壁にぶつかることもありますが、その度『生きていたら大変なことなんてあって当たり前。悩んでいないでやってみなさい』という、いつも祖母が言っていた言葉が聞こえてくるんです」
大森さんはその後、日本茶インストラクターの資格を生かしてお茶の仕入れも担当している。茶の味は季節や天候などによっても変化するといい、自らで味を見極め、納得したものを商品として提供したいという思いがあるそうだ。
更に挑戦はとどまることを知らず、2023年からは通信制の早稲田大学人間科学部に入学。日本茶の健康成分を科学的に説明できるようになるのが目標だ。他にも、小学生にお茶のいれ方や知識を教えるイベントを開催したり、店舗の一角で初心者向けの茶道教室を開催したりしているという。祖母・シズエさん譲りのチャレンジ精神は、脈々と受け継がれている。
「10年ほど前からは店や自宅で、冬に耐えられないと言われている茶の木の栽培も始め、5本ほど越冬に成功しました。将来は北海道に茶畑をつくるのも夢の一つです。昨今、急須でいれた日本茶は若い人に飲まれなくなってきていますが、本来のおいしさを知るきっかけさえあれば、コーヒーのようにブームが到来するはず。そう信じて、これからも挑戦を止めずに突き進みたいと考えています」
大森園株式会社
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
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