注目企業のトップに聞くin北海道 地域愛を原動力にオホーツクの課題へ挑み続ける。【株式会社渡辺組】

2026年6月29日 公開

明治後期から続く株式会社渡辺組は、オホーツク地方を中心に、建設業をはじめ、ホテル運営や食品加工、高校生向け下宿事業など、多角的な事業を展開している。2020年に6代目社長へ就任した渡辺勇喜さんは、ANAで培ったマーケティングや事業開発の経験を生かし、「オホーツクに最も必要とされる会社」を目指して組織改革を推進。120年続く企業として、地域課題の解決に向き合い続ける経営への思いを伺った。
代表取締役/渡辺 勇喜さん
遠軽町出身。幼いころから経営に興味を持ち、北海道大学経済学部へ進学。卒業後はANAへ入社し、営業やマーケティング、新規事業開発に携わる。2018年に家業へ戻り、2020年に6代目社長へ就任。現在は建設業を中心に、ホテル運営や食品加工、高校生向け下宿事業などを通して、オホーツクの魅力を発信している。

企画立案から営業、運営まで
磨き続けた経営技術。

1906年創業の総合建設業「株式会社渡辺組」。渡辺さんは、明治時代から続く建設会社の次男として遠軽町に生まれ育った。少年時代は野球に打ち込んでいたものの「将来は経営にかかわる仕事がしたい」という思いから、3歳上の兄が進学していた札幌の北嶺中学校で寮生活をスタート。高校時代にはビジネスや経営への関心が強くなり、北海道大学経済学部へ進学し、マーケティングや経営戦略を学んだ。
「経営者へのあこがれはありましたが、その時点では家業を継ぐと決めていたわけではありません。自分の力で経営やビジネスに挑戦したいという気持ちのほうが強かったですね」
就職先は、自由に働ける社風に引かれて全日本空輸株式会社(ANA)へ入社。福岡で4年間営業を経験した後、東京本社で国際線の販売企画やマーケティング戦略立案、新規事業開発など幅広い業務を担当した。
特に印象に残っているのが、「ANAのふるさと納税」の立ち上げだ。企画立案から社内調整、役員説明、自治体営業まで一貫して携わり、事業を形にしていく一連のプロセスを経験した。
「ANAに勤めて13年。企画を作るだけでなく、周囲を巻き込みながら形にしていく力を学びました。やりたいことを最後までやり切れたことに、感謝しかありません」

家業を継ぐために
新たな挑戦へ踏み出す。

次のステップを考え始めた30代半ば、渡辺さんは家業を継ぐ決断をした。背景にあったのは、高齢になった父や周囲からの「戻るなら早いほうがいい」という声だった。建設業界は、すぐに仕事ができる世界ではなく、人や地域との信頼関係を築くことが大切だからだ。
「さまざまな葛藤はありましたが、家業を継いで自分の力を発揮してみたい、新しい業界で結果を出してみたいという気持ちが強くなり、戻る決意をしました」
遠軽町に戻ってきた2018年、当時の渡辺さんには建築や土木の知識がほとんど無かった。入社1年目は社長室長として現場に足を運び、社員や地域の人たちとの関係づくりから始まった。2年目は副社長として、業界特有の人間関係や仕事の流れを理解するために必死だったと振り返る。そして3年目の2020年、6代目社長へ就任。社長交代の当日、先代社長である父は「じゃあよろしく」のひと言だけを残し退任したという。
「一見すると冷たいように思えますが、私にとってはありがたいやり方でした。というのも先代が会社に残ると、社員はどちらを見ればいいのか混乱してしまう。これからは自分で考えて、自分で苦労しろという意味がそのひと言に込められていたと思っています」
ところが、その年に新型コロナウイルスが蔓延。地域行事や会合も次々と中止になり、社長として地域との関係を築く機会がほとんど持てなかった。大きな不安を抱えながらも、人材確保や既存事業の在り方を見直すなど、今向き合うべき課題を一つずつ整理する時間に変えていった。

地域に必要とされる存在を
120年先へつないでいく。

渡辺組は、建設業だけでなくホテル運営や食品加工、高校生向け下宿事業、ジビエ事業、トレーラーハウス事業など、多岐にわたる事業を展開している。例えばホテル事業は、地域に結婚式や会合を開ける場所が不足していることを知った祖父が手を差し伸べたビジネスだ。高校生向け下宿事業も、遠軽高校へ進学する町外生の住まい不足を解決するために始まったもの。ジビエ事業も、エゾシカ被害の解決と資源活用の両立を目指して始まった。
「自分たちの利益のために仕事をするのではなく、地域に喜ばれる事業が本業へつながっていく。地域を思い、課題解決に向き合う姿勢が、渡辺組のDNAに組み込まれています」
これまで培ってきた経験を生かし、2025年からは「遠軽ブラックストーンズ」という地域ブランディングプロジェクトにも力を入れている。町の白滝地区から出土した国宝の黒曜石をモチーフに、遠軽高校ラグビー部を中心としたスポーツチームのデザインや名称を統一。子どもから大人まで、地域企業や行政も同じブランドでつながることで、地域全体に新たな一体感を生み出す取り組みを進めている。
「人口が減る中でも、地域を支える若い担い手は必要です。『この町で挑戦したい』と思える環境を作ることも、企業の役割だと思っています」
そうした考えから、人材確保や社内改革にも注力。若手社員向けマンションの建設や外国人向け寄宿舎の整備、本社社屋の建て替えなど、「ここで働きたい」と思われる環境づくりを推進している。
「オホーツク地方は、これから食料安全保障の面でも更に重要な地域になると思っています。その基盤を支えるのが建設業です。畑を整備し、川や山を守り、港を整備する。地域インフラを支える存在として、これからもオホーツクに必要とされる会社であり続けたいです」

株式会社渡辺組

1906年、遠軽町で創業した総合建設業。現在は建設業を中心に、ホテル運営、高校生向け下宿事業、食品加工、ジビエ事業など幅広い事業を展開している。2023年には渡辺組ホールディングス株式会社を設立。「オホーツクに最も必要とされる会社」を掲げ、地域課題の解決に取り組んでいる。
紋別郡遠軽町南町3丁目
TEL 0158‐42‐3171

https://watanabe-gumi.com/
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BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。

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