北海道の経営者に聞く3つの質問「転機・人・未来」 水産仲卸の老舗として信頼される一鱗共同水産株式会社の本間隆社長に聞いた「転機・人・未来」

2020年9月17日 公開

札幌市中央卸売市場を拠点に、水産仲卸の老舗として信頼を寄せられる一鱗共同水産株式会社。生産者と生活者を結ぶ存在として確かな目利きにこだわる一方、最近は飲食企業とのコラボレーションやSNSを活用した広報などにも力を入れています。代表取締役社長の本間隆さんに「転機」「人」「未来」について尋ねました。

魚の消費量も食べ方も変わる今、水産仲卸の役割が問われる時代です。

代表取締役社長/本間隆さん(58歳/写真左)
札幌市出身。創業家に生まれ、小樽商科大学卒業後、医薬品の卸売企業に就職。約3年後に一鱗共同水産株式会社に入社。2013年に2代目の代表取締役社長に就任。写真右は3代目を継ぐことになる息子さんの雅広さん。

本間さんの「転機」は?結婚を機に家業に戻った後、この業界の「正直な商売」に心酔しました。

創業者でもある父は、大手スーパーやコンビニとの取り引きを積極的に獲得し、一方でリーズナブルな価格を売りとする量販店ともお付き合いを始めました。一つの顧客だけに偏るのではなく、この両輪で収益を確保するスタイルは先見の明があったと思います。ただし、水産仲卸業界は、漁獲量に左右されやすい世界。商売の波があることは父も分かっていましたから、会社を継ぐように強く言われたことはなく、母も「安定的な公務員になりなさい」と口を酸っぱく言っていました。
私自身、大学卒業後は医薬品の卸売企業に就職しました。いつか会社を継ごうと考えていたような…いないような(笑)。ただ、当時の風潮もあり、結婚を機に家業に戻りました。私が水産仲卸業界で働くことになった理由はさほど深くはありません。けれど、市場で働く人々は口調が厳しくても裏表がなく、結局はこの業界の「正直な商売」に心酔したんです。

本間さんが求める「人」とは?自らの稼ぎで会社を伸ばそうとするハングリーな人材。

かつての水産仲卸業界とは異なり、今は市場休が増えたことで年間休日も多くなっています。お盆休みや正月休みといった長期休暇も交代で取りやすくなったので、令和時代の若い世代にとってはチャレンジしやすい環境になっていると思います。
一方で、営業職の場合は「昭和」が残っているのも正直なところです。「他と同じ値段だけどお前だから買う」というように顧客から好かれる人柄が売上を高めていきます。今どきの若い世代は「ガツガツ稼ぐ」ことに否定的な方も多いと思いますが、仕入れたものを人より多く売って給与に反映させるというのは面白みも大きいものです。何より、この業界は漁獲量によって浮き沈みが激しいことも特徴。安定を求めるのではなく、自らの稼ぎが会社を伸ばすというハングリーな意気込みを持った人が活躍するのではないかと思っています。

本間さんにとっての「未来」は?水産仲卸の枠組みを超えた「ひと手間」が未来を開くはずです。

現在は魚の消費量が徐々に落ち込み、食卓での食べ方も変わってきています。水産仲卸企業は、今までのように良い魚を仕入れ、お客様に販売するだけでは生き残りが厳しくなると考えています。
ただ、嘆いてばかりでは何も始まりません。例えば、スーパーでニーズが高いサイズの魚だけをまとめたり、レンジで温めるだけでおいしい商品を開発したり、これまでの水産仲卸企業の枠組みを超えたビジネスが求められると思います。当社でも、多少は値が張ってもおいしい加工品づくりに本腰を入れ始めたところ。こうした「ひと手間」が大事になるのではないかと見込んでいます。
私の息子は高校教師として働き、会社を継ぐとは思っていませんでしたが、5年ほど前に家業に戻ってきました。彼も飲食企業とコラボレーションして居酒屋をオープンするなど、新しい試みに踏み出しています。会社の未来はそんな若い世代が切り開いてくれると信じています。

一鱗共同水産株式会社

1959年9月札幌市中央卸売市場開設に備えて設立され、水産仲卸として半世紀以上にわたり、量販店や大手スーパー、鮮魚小売店をはじめとするお客様のパートナーとして商品とサービスを提供。お客様を通じて生活者により良い「魚」を届ける一方、社員が幸せを感じて働ける会社づくりも目指しています。
北海道札幌市中央区北8条西20丁目1-20
TEL.011-621-4151
https://www.ichiuroko.co.jp

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