北海道の経営者に聞く3つの質問「転機・人・未来」 「社長のいか塩辛」や「社長の松前漬」がヒット商品の株式会社布目の石黒義男社長に聞いた「転機・人・未来」

2020年3月26日 公開

株式会社布目といえば、「社長のいか塩辛」や「社長の松前漬」のヒット商品に代表されるおいしい水産加工品を手がける老舗企業。代表取締役社長として経営手腕をふるう石黒義男さんに、「転機」「人」「未来」のキーワードからお話を伺いました。

おいしさも、従業員の環境も、「まだできる」をモットーに上を目指し続けます。

代表取締役社長/石黒義男さん(74歳)
北海道函館市出身。函館市内の中島廉売(市場)で水産加工品の販売店を営み、義父が株式会社布目の創業者だった縁からも昭和56年に同社に入社。昭和59年に代表取締役社長に就任。

石黒さんの「転機」とは?社長就任後に始めた社員の意識改革。

家内の父が当社の創業者です。私はもともと函館市内の市場でたらこや筋子、鮭などを販売する商売を営んでいました。当時は会社を継ぐとは夢にも思っていなかったのですが、初代が亡くなるなど、さまざまなきっかけがありましてね。昭和56年に布目に入社したこと自体が最初の転機でしょうか。
当社は老舗の水産加工会社として確固たる地位を築いていた一方、入社当初はそのポジションにあぐらをかいている側面も見受けられました。昭和59年に代表の座を引き継ぐにあたり、お客様へのあいさつを徹底したり、遠方から取り引きに来てくれる方を気持ち良くお迎えしたり、社員の意識を変えることから始めたんです。部署の垣根なく助け合う風土づくりや「ISO9001」に代表される安全・安心の強化も、社長就任後の取り組みです。こうした地道な意識改革が「布目ブランド」に磨きをかけたと自負しています。

石黒さんにとって「人」とは?毎月、社員の合同誕生会を開くほど「社員第一」です。

スタッフを大切にすることでおいしい商品が生まれ、お客様満足につながると考えています。例えば、社長に就任したばかりのころ、残業の多さから社員の疲れが見て取れました。原料の出し入れや解凍がスピーディーになる「低温蒸気解凍庫」を導入するなど効率化を図ったところ、大幅に作業時間を短縮できたんです。
7年ほど前に社屋と工場を移転した際も、広々とした食堂や横になれる休憩室を整え、トイレも複数設置しました。毎月、社員の合同誕生会を開き、昼休みに中華弁当を一緒に食べる催しもずっと続けています。「トイレに除菌シートがほしい」や「給料を上げてほしい」といった意見を私に気軽に伝える場としても機能しているんです。
当社は地元の新卒者が長く働いてくれて、正社員比率も高いのが特徴。産休・育休から復帰する女性も少なくありません。私の「社員第一」の思いが伝わっているのだと信じています。

石黒さんの「未来」とは?社員全員でおいしさづくりに向き合い、一つ上のおいしさを。

ここ最近、私は「まだできる」という言葉をよく使うようになりました。函館では、うちの看板商品「社長のいか塩辛」の原料でもあるいかの不漁が長く続いています。けれど、嘆いてばかりでは仕方がありません。当社の強みの一つは開発能力。3年ほど前に北海道産の新鮮で肉質の良い真いかを厳選し、製法からパッケージまでこだわり抜いた「社長のいか塩辛 極」を発売しました。いかの塩辛としてはかなり高額ですが、贈答用としてのニーズが高く、お客様からの評判も上々です。
このようにピンチの状況でも、社員が一丸となってアイデアを出し、おいしさづくりに向き合うことで必ず活路が見えてくるはずです。食品メーカーとして現状に満足せず、一つ上の味を目指すためのキーワードが「まだできる」だと思っています。皆で努力した結晶でもある利益を社員に還元することで家族まで幸せになってほしい…これが私が描く未来であり、願いです。

株式会社布目

函館近海の新鮮な魚介を中心に、塩辛や松前漬けを製造。来年には創業80年を迎える老舗の水産加工企業。商品の価格設定は高水準ながら、本物の味を求める方々に「布目ブランド」として愛される「安全・安心」で「高品質」の商品を提供。
北海道函館市浅野町4番17号
TEL.0138-43-9101
https://nunome.hakodate.jp/

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