北海道の経営者に聞く3つの質問「転機・人・未来」 函館で「DiDi」をいち早く取り入れた道南ハイヤー株式会社の佐々木龍也常務に聞いた「転機・人・未来」

2020年3月12日 公開

単なる函館地域の足としてだけでなく、観光に力を入れた施策やDiDi(AIによる配車サービス)に代表される新しい仕組みの導入によって、市内でもトップクラスの乗客数を誇る道南ハイヤー株式会社。常務取締役の佐々木龍也さんに「転機」「人」「未来」について尋ねました。

これからの新卒世代にこそ、タクシーでしか味わえない仕事の面白みを知ってほしい。

常務取締役/佐々木龍也さん(57歳)
北海道函館市出身。33歳の時に整備士として道南ハイヤーに入社。平成19年に整備工場長から企画営業の部署に異動し、現在に至る。名古屋在住のオーナー(代表)に代わり、普段は会社のトップとして事業を統括。

佐々木さんにとっての「転機」とは?「タクシー規制緩和」と「アイデア100連発」メモです。

もともと当社の整備工場で働いていました。私…というより業界全体の転機となったのが平成14年の「タクシー規制緩和」。タクシー事業への新規参入が自由化され、事業者数も車の台数も爆発的に増えたんです。
お客様や人材を奪い合う厳しい状況に立たされた上、ほどなく前オーナーが病気で亡くなってしまい…。会社が傾く覚悟をしていたところ、現オーナーが救いの手を差し伸べてくれました。まずは、タクシーの色を青に塗り替え、当社の新たな出発をアピールするとともに、従業員からアイデアを募ってお客様を増やす企画を次々と打ち出したのです。
私の転機は平成19年。実は整備士時代から「アイデア100連発」というタクシー業界で生き残るための思いつきをメモに書き留めており、会議の度に発表していました。その結果、企画営業の部署に異動することになり、集客や乗務員募集、経費削減の営業戦略を考える今の立場になったんです。

佐々木さんの「人」とは?一人ひとりの乗務員が会社のブランドなり、お客様を増やしています。

私が会社の戦略を考えるようになってからは、市内の催し情報や業務連絡を載せた社内新聞を毎日発行したり、モニターアンケートによって接遇を改善したり、情報共有と乗務員教育に力を入れました。また、函館の人口減少は避けられない一方、観光や出張に来る方は1日約1万人にも達することから、そのマーケットを主力のターゲットにすべく、観光案内の資格「はこだて検定」の取得者を募ったんです。
いずれも乗務員にとっては負担になりますが、幸い少しずつ取り組みに同調してくれ、彼ら・彼女らの成功体験=売上アップが次の賛同者を生みました。今や観光案内ができる資格取得者は50名を超え、乗務員が会社のブランドとしてお客様を増やしています。ただし、観光案内を押し付けるのではなく、当然ながら好きなスタイルで乗務してOKです。そのために一人ひとりに合ったアドバイスの仕組みやコミュニケーションツールも用意しています。

佐々木さんが描く「未来」は?新卒採用に乗り出し、勤務初日の様子をYouTubeで発信してみたい。

これまで観光を軸に営業戦略を進めたことで、多くのホテルやクルーズ船がタクシー待機場所に当社を指名してくださるようになりました。今後はM&Aによって車の台数を増やすとともに、売上がアップしやすい企業として乗務員も拡充したいと思っています。
ただ、若い世代となると人数が少ないのが現状。私が描く未来は新卒採用に乗り出せる体制を整え、タクシーに乗務してくれる若者を増やすことです。例えば、新卒の女性が二種免許取得や研修をクリアした上で、初めてお客様を乗せたとします。その輝くような笑顔と仕事の様子をYouTubeで発信すると、タクシー会社のイメージもガラリと変わるのではないか、と。
タクシー乗務員は日本でチップをもらえる数少ない仕事。その金額の大小ではなく、感謝の気持ちをストレートに受け取れるという醍醐味は他にはない手応えになると思います。

道南ハイヤー株式会社

「地域一評判の良いタクシー会社」をモットーに、地元住民や観光客に選ばれる取り組みを実践。GPS配車や多彩な支払方法への対応、配車アプリの導入などに加え、「質の高いサービス」と「安全で快適な空間」を提供。
北海道函館市桔梗2丁目18番6号
TEL.0138-47-0005
http://www.smile-taxi.com/

北海道の経営者に聞く3つの質問「転機・人・未来」

最新記事5件

創業100年を超える山﨑火薬銃砲店の山﨑靖允社長に聞いた「転機・人・未来」 2021年1月14日 公開

北海道には北海道に合った、ビジネスのあり方があると思います。

ページトップへ戻る