書店員が営むものづくり企業。亡き夫の後を継ぎ、美と健康を支える商品を。【株式会社サンセリテ札幌】
2025年3月17日 公開
書店員のワーキングマザーが夫のひと言で会社経営へ
「アナウンス大会にも出場した経験があって、短大卒業後もアナウンサーになりたくてテレビ局の面接を受けたこともありましたね。でも同じくらい本も好きだったので、書店員として大きな本屋さんに就職しました」
20歳で就職した書店には約25年間勤務。文庫や新書、社会学・自然科学に関する専門書など、ありとあらゆる書籍の発注、陳列、在庫管理などに携わっていたと言う。在職中に結婚・出産を経験した山本さんは、当時としては珍しいワーキングマザーだった。
「昭和の中ごろで専業主婦が多い世の中でしたが、一方の私は本当に慌ただしい日々を送っていました。テレビを眺める時間もなかったから、流行歌も分からないほどでした(笑)。それでも本に囲まれて働き、暮らしてきた25年間は私の財産です。窮屈な考えから自分を解き放ってくれるたくさんの言葉に出合うことができたからです」
転機が訪れたのは40歳を過ぎたころ。ご主人が突然起業を切り出したことを機に離職を決意する。「彼の猪突猛進ぶりを止めることはできなかった」と笑う山本さんだが、自身が子育てと仕事の両立に苦労した経験から、女性が働きやすい職場を自らの手でつくりたいという思いがあり、創業には前向きだったと言う。
「雇用形態を問わず、たとえ出産を機に離職したとしても気兼ねなく戻って来られるような職場、小さな子どもを抱えて働くお母さんに理解のある職場をつくりたいと考えていました」
こうして1993年「美と健康の総合カンパニー」を掲げ、夫婦2人でサンセリテ札幌は創業した。創業資金には、長く勤めた書店の退職金をなげうったのだと笑う。
赤字脱却のために商品の根幹を見つめた創業期
「お客さまに負担のない価格設定であることは前提ですが、ただ安いだけでは売れません。手間とコストを惜しまず品質にこだわること、お客様の生涯パートナーとして幅広い年齢層に向けた商品を取りそろえること、そして自分の家族に勧めたいと思えるものだけを作ることなど、事業の根幹となる考えをこの時に形作っていきました」
その結果、少しずつ業績は上向きになり、他社に先駆けていち早くECサイトを立ち上げたことなども相まって、サンセリテ札幌のファンは全国規模で増えていった。
夫との死別を経験し強まった健康への思い
「創業から約20年が経ち、夫は50代となったころでした。それまで若さにかまけて食事もそこそこに突っ走るあまり、無理をしすぎていたのだと思います。私は介護をしながら従業員と共に会社を経営していくことを余儀なくされました。そんな生活が10年続き、2021年、夫は会社と私を残して逝ってしまいました。改めて健康の大切さに気が付き、日常的に人の健康を支える商品作りをしていきたいという考えがより強くなったのはこのころです」
2024年に発売された「KAKEDASHI」にもそんな思いが込められているそうだ。より多くの人に気軽に手に取ってもらおうと、あえて健康食品のカテゴリではなく、一般の食品にしたのだと言う。ヒントとなったのは幼少時代の記憶だ。
「私の子ども時代は貧しかったこともあって、だしを取るのに使った昆布や鰹節は、つくだ煮やふりかけにして食べていました。だしがらにはミネラルやたんぱく質が豊富に含まれていて健康に良いと言うのに、今では捨ててしまう人がほとんどですよね」
原材料を見ると「昆布、かつお、いわし、さば、椎茸、あじ」と、食塩さえも使われていない。国内産の素材をそのまま粉末化した商品であることから、だしとしてはもちろん、料理のトッピングや隠し味、離乳食にも使えると言う。
「『飲んだら良くなる』という即効性よりも、長く続けることで美や健康につながる商品を開発したい。より良い商品と共に、より良い習慣づくりを提供したいと考えています。その背景には、決して当たり前ではない、大切な人との平凡な日々を、一日でも長く過ごしてほしいという私の願いがあるからに他なりません」
そう語る山本さんの目の奥には、ご主人の病から救えなかった後悔と、共に築き上げてきた会社を守り抜くことへの強い信念が伺えた。
株式会社サンセリテ札幌
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