宮地さんの出身は兵庫県。高校の授業を通じて食糧問題に興味を持ち「先進国ではフードロス、途上国では食糧難が問題となっている。両者の均衡を取ることで問題が解決できないだろうか」と考えたことから、大学の農業経済学科への進学を決意した。せっかく農業を学ぶなら広大な北の大地で学びたいと、選んだのが北海道大学。農家の生活の実際を知りたいと、3年生終了後に1年間休学してオランダで農業研修の経験をしたことが転機になった。
「週末ごとに近隣の国々へ出掛け、ビールを楽しみました。そこで国によってビールの味わいもビールを取り巻く文化もさまざまだと知ったのです」
ドイツのオクトーバーフェストやイギリスのパブを訪れ、ベルギーの伝統的なビールを味わうなどの経験を通じて、ビールの多様性や文化の奥深さを知ったそうだ。
帰国して4年生に進級した宮地さんは、すぐに「北大ビールサークル Be Are kids」を立ち上げる。更に北大のさまざまな学部の教授や外部実業家と共にゼミやプロジェクトを通じて学内だけでは学びきれない事柄を学ぶ学生団体「未来開拓倶楽部」にも加入した。倶楽部の自己紹介でビール愛を語ったところ、顧問の教授に「この倶楽部のオリジナルのクラフトビールを造ってみては」と勧められたというのだ。
教授に紹介された醸造所を訪ねて話を聞くと、一回の仕込みにかかる費用は最低20万円。学生の自分にはとても用意できないと一度はあきらめかけた。だが倶楽部のメンバーに呼び掛けて仲間を募ると約30人が応じてくれ、2023年6月には「Beer PJ(ビアプロジェクト)」が発足。ビール造りが始まった。
プロジェクトはまず企画書を作成し、出資者を募ることからスタート。出資を検討する学生には対面で熱意を伝えたいと、何度も説明会を開いた。最終的に10人の学生が出資に応じてくれたそうだ。