注目企業のトップに聞くin北海道 注目企業のトップに聞くin北海道【みのりの丘グループ】

2022年3月7日 公開

江別市の「大麻東町ニュープラザ商店街」を中心に、小規模多機能型居宅介護施設やデイサービス、訪問看護ステーションなどを展開するみのりの丘グループ。代表の武市寿人さんに、事業の根幹をなす思いや福祉のまちづくりの取り組みについて伺いました。

江別市大麻エリアの社会資源を活用し、皆で高齢者の生活を支えたい。

代表取締役・理事長/武市寿人さん
札幌市出身。病院の事務や介護老人保健施設の相談員、ケアマネージャーなどを経験。2005年に江別市の介護企業に勤めた後、2011年1月に独立。現在はみのりの丘グループとして株式会社みのりの丘とNPO法人みのりの丘を運営。

住み慣れた地域で、最期まで暮らせる介護。

―独立までの経緯は?
病院や介護施設で働いた後、地域包括支援センターの前身にあたる在宅介護支援センターの業務に携わりました。主な仕事は地域に根差し、困りごとや必要な社会資源のヒアリング、ネットワークづくりなどです。ごく小さなエリアに入り込み、高齢者を中心とする人々がどんなことに悩み、何を提供するとより豊かな生活が送れるのかということを考えるのがライフワークでした。こうした業務を積み重ねるうちに、多くの方は自宅で最期を迎えたいものの、病気で入院してしまうと病院でみとられざるを得ないというケースが大半なことにジレンマを覚えるようになったんです。住み慣れた地域で暮らし続けられる介護を届けたいと考えていたところ、運良く前職の社会福祉法人からデイサービスの施設を事業承継できることになりました。

―施設の立地もユニークですね。
大麻地区には4つの商店街があり、本部を含めた大半の事業所を置くこの場所は「大麻東町ニュープラザ商店街」です。人々が集う場所に拠点を持つというのは、地域の課題を把握するにはぴったりの立地だと思いました。ここに暮らすほとんどの住民が顔見知りにもかかわらず、ウエット過ぎない人間関係というのも特徴でしょうか。まずはこの地域に深く根差し、目の前の一人でも、二人でも、暮らしをより良く支えられる介護を届けたいと思いました。

大麻の社会資源を活用した福祉のまちづくり。

―住み慣れた地域で暮らし続けられる介護とは?
私たちはいわゆる「箱物」といわれる大きな入居施設を持っていません。できる限り在宅での生活を続けてもらえるよう、デイサービスや小規模多機能型居宅介護(通い、宿泊、訪問の複合サービス)、更には訪問看護を展開しています。今年の4月には自宅での療養にも重きを置いた看護小規模多機能型居宅介護もオープンする予定です。ただし、すべてが施設内で完結する入居施設とは異なり、在宅を続けるには各種手続きや隣近所とのかかわりなどが必要になってきます。それらすべてを医療や介護だけでカバーするには、マンパワーが足りないというのが私の考えです。そのため、地域の人々と役割分担しながら一人ひとりを支えていくことが大切だと思っています。つまり、他業種や自治会とうまく手を携えながら、福祉のまちづくりを進めるのが理想的です。ここ最近は商店街に訪問診療に特化したクリニックもでき、連携を深めています。

―既に他業種などと連携を?
5年ほど前、世代間交流やまちづくりを目的に、他業種や民生委員、大学教授などと「大麻地域創造会議」を立ち上げました。例えば、メンバーの中に畑を持っている人がいたため、そこで高齢者と保育所の子どもたちが一緒になって大根抜きを楽しみました。江別の酪農学園大学で管理栄養士を目指す学生も招き、大根を使ったレシピや栄養素について寸劇仕立てで伝えたのも好評でした。大麻エリアには大学も多く、こうした社会資源を大いに活用することで、介護だけにとどまらない福祉のまちづくりも進められるはずです。

収益性も確保し、永続的に取り組める体制を。

―スタッフも取り組みに参加を?
例えば、コロナ禍の前は居宅介護支援事業所のケアマネージャーがホストとなり、地域の方にワンプレートの食事を提供する企画を実践するなど、積極的に参加してくれました。こうしたサービスを受ける方はご年配が多く、困りごとや悩み事を聞いた上で専門職としてアドバイスや手続きをするきっかけになっていました。ケアマネージャーの職域からは大きくはみ出していますが、自分たちが必要な存在だと再認識できる場にもなっていると思います。

―皆さん、楽しく働いているのですね。
介護・福祉業界には安い賃金で働くイメージを持つ人も多いようですが、全くそんなことはありません。私たちは大きな入居施設を展開していない分、設備投資が掛かりませんし、ランニングコストも抑えることで人件費に回すように工夫しています。最近、商店街で飲食を楽しめる場が減ったため、なぜか当グループに「お店ができないか」と相談を持ちかけられました(笑)。管理栄養士のスタッフが「やりたい!」と手を挙げたので、会社として事業を立ち上げる予定もあります。このように地域に求められるニーズに応え、収益性も確保しながら永続的に福祉のまちづくりに取り組める体制を整えるのも使命だと考えています。

みのりの丘グループ

江別市大麻エリアを中心に介護施設を展開。住み慣れた自宅や地域で暮らし続けることができるように必要な福祉サービスの充足や社会資源の創造を地域住民と進めるのがビジョン。
北海道江別市大麻東町15番地の30
TEL.011-398-9657
https://www.minorinooka.jp/

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