注目企業のトップに聞くin北海道【社会福祉法人 栄和会】
2021年10月4日 公開
介護業界は、今後ますます「地域に必要とされること」が大切になると考えています。
1961年赤平市生まれ。大学卒業後、株式会社福祉新聞社の記者として働き、1994年に社会福祉法人栄和会の開設と同時に入社。生活相談員やケアマネージャーなどを経て現職に。
ICT化(情報技術やネットワークを活用したコミュニケーション)や介護ロボ、外国人材が更に必要な時代へ。
そうですね。私は福祉系の大学で福祉教育について学んでいましたが、当時は専攻分野にまつわる就職先がほぼなかったのが正直なところです。加えて、福祉の現場に入るのは自らの見識を深めた後にしようと考えていたこともあり、福祉専門紙の記者として全国を飛び回りました。11年ほど取材や執筆活動を続ける中で実感したのは、やはり高齢化問題が最重要課題だということ。北海道へのUターンを決めた25年ほど前、当法人の立ち上げのタイミングで、現場の職員として入社しました。
―今は高齢化問題に加え、人材不足も大きな課題では…
その通りです。私が会長を務める北海道老人福祉施設協議会でも、以前はケアの話題が中心でしたが、最近は人材確保のための取り組みについてを課題とするケースが増えています。とはいえ、「コレ」という特効薬があるとは言えないのが現状です。例えば、介護助手という補助的な職種を取り入れて業務の負担を分散させたり、高齢者を雇用して短時間だけでも働いてもらったり、未来を担う中高生にこの仕事の魅力を伝えるなど、複合的なアプローチを地道に続けるしかないと思っています。
―団塊世代が後期高齢者となる「2025年問題」も話題ですね。
私の見立てでは、介護人材が不足しているとはいえ、2025年問題は何とか乗り越えられると考えています。最も危惧すべきなのは、65歳以上の高齢者人口がピークとなる「2040年問題」。それまでにはICT化や介護ロボットによって業務の負担を更に軽減する他、外国人材の活用も実現しなければならないでしょう。当法人でも留学生の支援制度をすでにスタートさせています。
明確な評価制度や理念の具体化で「働きがい」を。
北海道老人福祉施設協議会は人材の研修に力を入れている組織です。本来はグループワークで学ぶことが多いため、オンラインの座学しかできないのはもどかしい一方、会議や研修の移動に時間が取られなくなったのはメリットです。私個人としては、当法人の仕事にこれまで以上にじっくりと腰を据えられるようになりました。
―なるほど。具体的にはどのようなことを?
一つは人事制度全般の見直しです。給与制度を10年以上変えていなかったため、求めている人材の基準をきちんと定め、スタッフの頑張りに報いられるよう整備を進めています。個人のスキルや技術だけではなく、「地域のことを考えているか」「周囲との連携を大切にしているか」といった法人としての評価軸も明確にする予定です。
―職員には法人の評価軸をどう共有するのですか?
実は同時に「栄和会Way(ウエイ)」という小さなブックレットも制作中です。法人理念は端的で読めば納得できる文言ですが、正直なところ漠然としています。そこで私たちが具体的に何をすべきか、どこを目指して働いているのか記載したものが必要だと考えたんです。迷った時には原点にすぐ立ち返られるよう、ポケットに入るサイズに仕上げます。これを読めば法人としての評価軸も一目瞭然となる見通しです。
―この二つの施策の狙いとは?
やはり人材面につながっています。スタッフに長く働いてもらうこと…つまり「辞められないこと」も人手不足の課題には有効打です。これまでも働きやすさは整えてきたつもりですが、今後は「働きがい」も提供したいと考えて取り組みを進めています。
目の前の利用者様だけでなく、地域を幸せに。
先ほど給与制度の時にも少し話しましたが、当法人は設立当初から地域とのつながりを大切にしています。各施設が町内会に入会していますし、コロナ禍の前には買い物バスの運行や一般の方も利用できるカフェの運営にも取り組んでいました。私たちは利用者様のケアだけではなく、周辺のすべての高齢者が幸せに暮らせるよう貢献するのが使命です。地域に必要とされることが、結果として入居者様やスタッフの信頼を得られることにつながると信じています。
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現在、内容を精査しているスタッフの具体的な行動指針「栄和会Way」。人事制度も含め、年内の完成を目指しているそうです。
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特別養護老人ホームあつべつ南5丁目に併設しているカフェ。一般の方が利用できる他、月に一度「認知症カフェ」も開催(現在はコロナ禍のため閉店)。
社会福祉法人 栄和会
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