―介護業界へは一般企業からの転職だったとか。
はい。昭和62年、私が39歳の時です。当時、渓仁会の事業主体はほぼ医療で、経営に関しても医師陣が中心でした。効率的な事業運営のための『医経分離(医療と経営を分離しそれぞれの専門家が担当すること)』が進められることになり、経営本部の担当役の一人として入社したというのが経緯です。当時は行政が高齢者の介護サービスを決定する措置制度の時代でした。
―そこから介護業界の変化を目の当たりにして来られた…
そうですね。特に2000年の介護保険制度の導入から今日まで制度の内容から施設環境、介護職の仕事、その技術まですべてが日進月歩です。今は介護予防の発想も浸透し、保険の世話にならない自立した生活を一日でも長く…という考え方が主流となっていますが、施行当初は高齢者なら介護度が軽くても保険制度をどんどん利用しましょう、という気運が高まっていました。今とは正反対ですね。
―介護の仕事内容も相当変わったのでは?
最も大きな違いは「お世話型介護」から「科学的介護」への移行ですね。かつての介護はお年寄りのお世話をしてあげたいという、働く側の奉仕にも似た精神に支えられていました。それ自体はとても尊いことですが、介護者に過度に依存する介護は健全ではないですし、なにより長続きしません。スタッフに負担をかけない介護、無理や無駄を省いた介護を実践するためには、科学の視点が不可欠です。ビッグデータやその分析結果を活用し、一人ひとりに適したプログラムやメニューを実践する「科学的介護」(LIFE)の重要性が、今後ますます高まっていくと思います。