中途の営業マンからトップに。地域の産業・生活を支える企業基盤で100年先の北海道を照らす。【エア・ウォーター北海道株式会社】
2025年5月12日 公開
1929年創業の北海酸素株式会社をルーツに、合併変遷を経て前身から数えることまもなく100周年を迎えるエア・ウォーター北海道株式会社。産業ガス・医療ガス・生活エネルギーをはじめとしたインフラ事業の他、農業・食品事業に携わる北海道地域に根差した展開をしている。高校卒業後、2回の転職経験を経て入社し、中途から社長を任されるまでになった庫元さんに、これまでの経緯や今後の展望などを伺った。
挫折や転職を経て見つけた得意分野。
札幌市で生まれ育ちスポーツ少年だった庫元さんは、幼いころから体育教師になりたいという夢を抱いていたという。高校入学後もその思いは変わらず、スポーツキャリアも生かしながら教員免許取得を目指すため、関東圏の大学を希望していた。
「長距離選手として陸上部に所属していたこともあり、スポーツ推薦枠で受験に挑戦しましたが、希望がかなわず不合格でした。道内での進学は考えていなかったこともあり、札幌市内のエネルギー供給会社へ就職することを決めたんです」
思い描いた進路ではなかったものの、気持ちを切り替えがむしゃらに働き続けた庫元さん。人事・総務・財務・経理など多くの業務に携わるうち、あっという間に3年の月日が過ぎていった。
「立ち止まることなくひた走ってきて、ある時にふと、本当にやりたい仕事ってなんだろうか、得意分野って何だろうかと考え始めたんです。その答えを追求しようと、転職を決意しました。本田宗一郎さんの著書『得手に帆あげて』に感銘を受けたこともあって、カーディーラーで営業職に就きました」
2年ほどで手応えとやりがいを感じた庫元さんは、営業職を得意分野としてスキルアップしたいと、更なる転職を決意。より地域や人々の暮らしに根差した幅広い商品・サービスを提供したいと23歳で入社した会社こそが、エア・ウォーター北海道の前身・北海道ほくさん販売だった。
「長距離選手として陸上部に所属していたこともあり、スポーツ推薦枠で受験に挑戦しましたが、希望がかなわず不合格でした。道内での進学は考えていなかったこともあり、札幌市内のエネルギー供給会社へ就職することを決めたんです」
思い描いた進路ではなかったものの、気持ちを切り替えがむしゃらに働き続けた庫元さん。人事・総務・財務・経理など多くの業務に携わるうち、あっという間に3年の月日が過ぎていった。
「立ち止まることなくひた走ってきて、ある時にふと、本当にやりたい仕事ってなんだろうか、得意分野って何だろうかと考え始めたんです。その答えを追求しようと、転職を決意しました。本田宗一郎さんの著書『得手に帆あげて』に感銘を受けたこともあって、カーディーラーで営業職に就きました」
2年ほどで手応えとやりがいを感じた庫元さんは、営業職を得意分野としてスキルアップしたいと、更なる転職を決意。より地域や人々の暮らしに根差した幅広い商品・サービスを提供したいと23歳で入社した会社こそが、エア・ウォーター北海道の前身・北海道ほくさん販売だった。
複数社での経験がキャリアアップの追い風に。
入社後は財務・経理などを経て、念願の営業部署に異動。オフィスワークにおいても素地はあったが、特に営業に関しては庫元さんなりの強い信念をもって取り組んだという。
「それまでの知識や経験を基に、例え相手が上司でもそんたくせず、より効率的な方法や今までになかった新たなアイデアを提示していきました。今振り返ると生意気だと思われていたかもしれませんが、お陰で評価されたり、責任ある仕事を任されたりすることも多かったように思います」
2010年からは営業責任者として新たな一般住宅向けハイブリッド給湯暖房システム「VIVIDO(ヴィヴィッド)」の販売を任された。オール電化住宅が人気だった当時、LPガスと電気のハイブリッドシステムの良さを理解してもらうのは至難の業だったという。
「しかし2011年の東日本大震災を機に、複数のエネルギーを併用してリスクに備えることの重要性が注目されるようになり、『VIVIDO』は知名度も売上も向上しました。営業努力だけではなく、世の中の変化に目を向けてサービスを提供することがいかに重要かを痛感した出来事でした」
人口減少・高齢化が加速し続ける北海道で、従来通りの事業を展開していくだけでは頭打ちになる。地域や生活者の需要に寄り添った新事業を打ち出すべきだと考えた庫元さんは、『ふるさと応援H(英知)プログラム』と称した、北海道全市町村への寄付金事業を推進していった。
「2023年度から道内179市町村に対し8年間で、総額10億円を寄付するという大きなプロジェクトで、私は事業企画部長として携わりました。この制度は単純に寄付金を出す制度ではなく、自治体からの社会課題に対し、エア・ウォーターは企業側の立場として寄り添い伴走する制度です。例えば、海がない東神楽町で当社が取り扱う酸素ガスや人工海水を使ったサーモンの陸上養殖施設を立ち上げることに成功しました。今後も食料自給率の向上に貢献することを計画しています」
「それまでの知識や経験を基に、例え相手が上司でもそんたくせず、より効率的な方法や今までになかった新たなアイデアを提示していきました。今振り返ると生意気だと思われていたかもしれませんが、お陰で評価されたり、責任ある仕事を任されたりすることも多かったように思います」
2010年からは営業責任者として新たな一般住宅向けハイブリッド給湯暖房システム「VIVIDO(ヴィヴィッド)」の販売を任された。オール電化住宅が人気だった当時、LPガスと電気のハイブリッドシステムの良さを理解してもらうのは至難の業だったという。
「しかし2011年の東日本大震災を機に、複数のエネルギーを併用してリスクに備えることの重要性が注目されるようになり、『VIVIDO』は知名度も売上も向上しました。営業努力だけではなく、世の中の変化に目を向けてサービスを提供することがいかに重要かを痛感した出来事でした」
人口減少・高齢化が加速し続ける北海道で、従来通りの事業を展開していくだけでは頭打ちになる。地域や生活者の需要に寄り添った新事業を打ち出すべきだと考えた庫元さんは、『ふるさと応援H(英知)プログラム』と称した、北海道全市町村への寄付金事業を推進していった。
「2023年度から道内179市町村に対し8年間で、総額10億円を寄付するという大きなプロジェクトで、私は事業企画部長として携わりました。この制度は単純に寄付金を出す制度ではなく、自治体からの社会課題に対し、エア・ウォーターは企業側の立場として寄り添い伴走する制度です。例えば、海がない東神楽町で当社が取り扱う酸素ガスや人工海水を使ったサーモンの陸上養殖施設を立ち上げることに成功しました。今後も食料自給率の向上に貢献することを計画しています」
仲間の応援で経営者へ。新施設で北海道に新風を。
庫元さんが社長就任の打診を受けたのは2024年。前触れは一切なく「まさに青天のへきれきだった」と振り返る。
「勤続32年。キャリアを重ねてきたことによる自信や、部長という肩書はあったものの、経営に関してはもちろん未経験。その場で快諾することはできず、しばらく悩んでいました。でも『今後も新事業の展開が求められる中、北海道の地域課題に真摯に向き合い、発言力を持ったリーダーとして会社をけん引してほしい』と同僚からも背中を押され、思い切って引き受けることにしました」
北海道の地域活性化に向けて、社内外問わず多くの働き手にとって魅力的な事業を展開していきたいと庫元さんは意気込む。2024年12月、桑園エリアに完成したイノベーション施設「エア・ウォーターの森」も、そんな思いのもと建設された。
「『エア・ウォーターの森』は産官学が地域と連携し、新たな事業創造を目指していく施設です。そこに優秀な人材が集まれば、会社の存在価値が高まることはもちろん、北海道全体の発展にもつながっていくと考えています」
ルーツである北海酸素の創業から数え、間もなく100年を迎える同社。次の100年を担う若い世代にタスキをつなぐため、常に新機軸を求める成長企業であり続けたいという庫元さん。そんな思いを体現した新施設が、今後どのような事業を展開していくのか目が離せない。
「勤続32年。キャリアを重ねてきたことによる自信や、部長という肩書はあったものの、経営に関してはもちろん未経験。その場で快諾することはできず、しばらく悩んでいました。でも『今後も新事業の展開が求められる中、北海道の地域課題に真摯に向き合い、発言力を持ったリーダーとして会社をけん引してほしい』と同僚からも背中を押され、思い切って引き受けることにしました」
北海道の地域活性化に向けて、社内外問わず多くの働き手にとって魅力的な事業を展開していきたいと庫元さんは意気込む。2024年12月、桑園エリアに完成したイノベーション施設「エア・ウォーターの森」も、そんな思いのもと建設された。
「『エア・ウォーターの森』は産官学が地域と連携し、新たな事業創造を目指していく施設です。そこに優秀な人材が集まれば、会社の存在価値が高まることはもちろん、北海道全体の発展にもつながっていくと考えています」
ルーツである北海酸素の創業から数え、間もなく100年を迎える同社。次の100年を担う若い世代にタスキをつなぐため、常に新機軸を求める成長企業であり続けたいという庫元さん。そんな思いを体現した新施設が、今後どのような事業を展開していくのか目が離せない。
エア・ウォーター北海道株式会社
北海酸素株式会社など複数の会社が合併し、1978年札幌市で設立。産業ガス・医療ガス事業、エネルギー・福祉事業、食と農業にかかわる事業を担う3つの企業と、金属加工業・環境分析事業・歯科事業にかかわる関連会社で構成され、地域との共生を目指す地場企業として、さまざまな分野で幅広く北海道の地域課題に取り組んでいる。

BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
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