注目企業のトップに聞くin北海道 北海道産素材を生かして、人を幸せにする菓子づくりを。【株式会わらく堂】

2024年6月10日 公開

北海道素材を使った菓子の製造・販売業を担う株式会社わらく堂。2代目社長の関根さんは、洋菓子部門「スイートオーケストラ」を新設し、のびるチーズケーキ「おもっちーず」や、のびるあんぱん「白石あんぱん」などの大ヒット商品を次々に開発。柔軟な発想力で、独創的なお菓子やパンの開発に取り組んでいる。関根さんに社長就任までの経緯、商品や従業員への思いなどを伺った。
代表取締役/関根健右さん
札幌市出身。父親はわらく堂創業者の関根武さん。専門学校卒業後は興味のあった広告会社へ入社。3年間営業職に従事し、わらく堂に入社。販売の傍ら営業活動を行い2007年、33歳の若さで社長に就任。洋菓子部門「スイートオーケストラ」の新設の他、大ヒット商品「おもっちーず」「白石あんぱん」などの開発に携わった。

菓子会社を成長させたのは、入社間もない元広告マン

札幌市出身。父親はわらく堂の創業者で和菓子に限らず、おこわやたこ焼きなどさまざまな食品を製造、店舗経営も担っていた。工場の2階が自宅だったが、「一体うちは何屋さんなんだろう?」と子ども心に疑問を抱いていたという。
「間近で家業を見ていましたが、別の世界を見てみたかったという思いがあり会社を継ごうとは考えていませんでした。テレビっ子だったこともあってマスコミに興味があり、菓子とは全く関係のない広告会社に就職し、営業として、チラシなどの広告物の制作依頼を受ける仕事をしていました。新規顧客の開拓を任されていたので、後につながる営業力が鍛えられたと思います」

その後新たな社会経験を求めて広告会社を退職。同じタイミングでわらく堂の店舗販売員に欠員が出たため、少しの間だけ父親を手伝うつもりで店頭に立った関根さん。このことがきっかけで、そのままわらく堂に入社する流れをたどったという。
「初めはおこわ屋で販売員をしていましたが、工場に目を向けると主力であるはずの和菓子の製造ラインがほとんど稼働しておらず、取引先も無い状態に気付いたんです。商品はあるのに製造も販売もされていないことに危機感を覚え、店頭に立つ傍らで和菓子の営業を始めました。電話帳片手にスーパーなどの小売店に片っ端から電話をかけて、商品を置いてもらえる先を確保する〝ローラー作戦〟です。広告会社での経験を、ここで生かすことができたんです」

和菓子屋発の洋菓子は、業績ものびるチーズケーキ

関根さんが決死の営業をするに従い、少しずつわらく堂の商品を扱ってくれる小売店が増え、会社は着実に成長を遂げていった。更なる攻勢に出るべく、関根さんは洋菓子部門の立ち上げを提案。入社してから3年目の2002年に誕生したのが「スイートオーケストラ」という新ブランドだった。
「北海道素材にこだわった洋菓子部門を立ち上げて、ホールケーキやスイートポテト、チーズケーキなどを販売し始めました。このころからある程度会社のことを任せてもらえるようになり、2007年、代表取締役に就任することが決まりました」

33歳という若さで社長になった関根さん。プレッシャーはあったものの、おいしいお菓子で全国の人を幸せにしたい、ブランドを成長させていきたいという思いで、変わらず新しいことに挑戦し続けた。商品開発で重視したのは、今までにない独創的な菓子作りだという。この発想から生まれたのが、2011年に発売開始し、大ヒットを遂げた「おもっちーず」だ。
「『日本版チーズケーキ』をコンセプトに商品開発を始めました。『チーズケーキ味の餅ではなく、餅のようにのびるチーズケーキを作りたい』。パティシエではないからこそ思いついた私の斬新なアイデアは、なかなか開発部の人間には伝わらず苦労しましたね。幾度となく試行錯誤を重ね、思い描いていたチーズケーキが商品化されるまでには実に8カ月もの時間を要しました」

社をあげて開発された「おもっちーず」は2011年の発売と同時に、もちもち食感と、食べたときにのびるほど柔らかい生地が話題になり大ヒット。10年以上が経った今も不動の人気を誇り、わらく堂の看板商品となっている。

「チェンジにチャレンジ」が、社長としてのモットー。

柔軟な発想力で挑戦を続ける関根さん。そのルーツは先代からの教えにあったという。
「前社長である父は菓子に限らずさまざまな食品製造・販売に取り組み、更に喫茶店を経営していた時期もあれば、ラーメン屋を開いたこともあった。『何屋さんなんだろう』という疑問は抱きつつも、失敗してもあきらめることなく、次々と新しいことに挑戦する父の背中を見て育ったからこそ、今の私があると思っています。今後は和菓子、洋菓子に続いてパンの分野にも手を広げ、新たな商品開発にどんどん挑戦していきたいですね」

ちなみに「のびる」商品はチーズケーキだけではない。現在はのびる餡子が入った『白石あんぱん』が販売されているほか、のびるカスタードクリームも開発中だ。「業績ものびると良いなと思っています」と笑う関根さんだが、その眼差しは真剣そのものだった。
「昨日より今日、今日より明日、変化していくために挑戦し続けようということは、70人ほどの従業員にも常々伝えています。挑戦し続けることで、みんなで会社を大きく育てていきたい。そうすることで従業員全員が幸せになれるような会社にしていきたいと考えています。『お菓子で人を幸せにしたい』という言葉は、お客さまだけではなく従業員のためのものでもあるんです」

株式会社わらく堂

1966年に札幌で創業。大福や団子、人形焼きなどの和菓子を中心とした菓子製造・販売業を担う会社として誕生したが、菓子以外にもおこわやたこ焼きなど、さまざまな商品を開発し世に送り出してきた。2002年には地産地消をテーマに洋菓子ブランド「スイートオーケストラ」を新設。代表菓子ののびるチーズケーキ「おもっちーず」は、農林水産大臣賞を受賞。
北海道札幌市白石区栄通7丁目6-30
TEL.011-853-3126
https://www.warakudo.co.jp/
BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時25分〜放送中!

注目企業のトップに聞くin北海道

最新記事5件

すべての人の笑顔のために。保育と福祉で地域づくりを。【株式会社クローバー】 2024年7月22日 公開

小規模保育園を開園した代表の田中さんに、起業に至った経緯や子どもたちへの思い、今後の展望などを伺った。

酒造りでまちづくり。「地域創生蔵」を全国へ。【上川大雪酒造株式会社】 2024年7月15日 公開

サラリーマンだった塚原さんが起業したきっかけや、酒蔵建設に至った経緯、今後の展望などを伺った。

未来を描く一本のペン。絵師が手掛けるまちづくり。【株式会社commons fun】 2024年7月8日 公開

大手建築事務所で都市開発に携わりながらも大学院に進学を決意したきっかけや、独立して会社を立ち上げた経緯、今後の展望などを伺った。

“We Are Stars.”バレーボールチームと共に、北海道を元気に。【株式会社北海道イエロースターズ】 2024年7月1日 公開

バレーボールチームの代表取締役に就任した経緯、チームメンバーへの熱い思いなどを伺った。

エンジニアの一人ひとりの幸せな人生のために余白のある働き方を。【株式会社Point】 2024年6月24日 公開

「人生ハッピーな方がいい」と話す同社代表取締役の安田崇志さんに、その詳しい理由や今後の展望を伺った。