根室市で生まれ育った中村さん。父親が漁師、祖父がウニの加工場経営者だったことから、幼いころから漁業関係者は身近な存在だったという。
「特に潜水士さんにはよく遊んでもらっていました。ウニの殻むきや、潜水服を洗うなどの手伝いをして、お小遣いをもらった思い出もあります。海にまつわる映画や本に触れるにつれ、光の届かない深海の世界に魅了され、徐々に海に関する仕事に就きたい、潜水士になりたいという具体的な夢を思い描くようになっていきました」
子どものころに芽生えた思いは大きくなっても変わらず、高校は国内で唯一潜水士養成課程のある岩手県種市高校へ入学。3年間下宿生活をしながら水中土木科で学び、国家資格である潜水士の資格を取得した。
「卒業後は地元・根室に戻ることも考えていましたが、潜水士としてより多様な業務経験を積もうと北海道の潜水会社へ就職する道を選びました」
入社した会社では海洋土木工事や海難救助はもちろん、潜水士の講習会や、大学に向けた潜水士資格テキストのためのデータ提供も行っていた。まだ20代だった中村さんは潜水業務の傍ら、大学教授のかばん持ちとして潜水士資格講座の会場へ足を運ぶことも度々あったという。
「受講生から潜水の経験談を求められる機会もあり、僕自身もより多くの人に海のことを教えたいと思うようになりました。更に講師として仕事をするために業務の傍ら講師資格を取得したことで、官庁や学校での仕事の場が全国へと広がっていきました」