注目企業のトップに聞くin北海道 どんな人にもチャンスを与えたい。就労支援で北海道の未来を照らす。【FUTUREFLIGHT グループ】

2023年9月11日 公開

官公庁の業務を請け負うアウトソーシング事業を中心に、障がい者や刑務所出所者、シングルマザーや難病患者など、社会的弱者と呼ばれる人々の就労支援に力を入れるFUTUREFLIGHTグループ。現在は薬物依存症からの回復サポートや、生活困窮者への食料支援など、更なる社会貢献を推進している。代表の釜澤さんに、会社設立に至るまでの経緯、経営者としての思い、今後の展望についてお話を伺った。
FUTUREFLIGHTグループ 代表/釜澤剛璽(ごうじ)さん
札幌市出身。1999年、ITベンチャー企業に入社。ITビジネスを基軸に、20代で上場企業のグループ子会社2社の代表取締役に就任。北海道夕張市の財政破綻後、プロジェクトリーダーとしてホームページのリニューアルなどを手掛ける。2012年、ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現を目指し、現在のFUTUREFLIGHTグループ、株式会社FFを創業。

原点は、財政破綻の街を見て抱いた「人を支援したい」という思い。

起業家だった父親の影響を受け、子どものころから漠然と起業を考えていたという釜澤さん。会社を立ち上げたいという思いから、大学では経済学を専攻し、同時に専門学校でプログラミングを習得。卒業後は大手IT企業に就職した。
「1999年当時、インターネットはほとんど普及しておらず、ブロードバンドが生まれたばかり。企業のホームページでさえ、きちんと管理されているとはいえない時代でした。しかしネット社会が間違いなく到来すると予測していました」
さまざまな企業へ向けたレンタルサーバーやホームページの営業、パソコンなどの機器販売に明け暮れる中、釜澤さんの耳に大きなニュースが入ってきた。それは北海道夕張市の財政破綻だった。
「僕は札幌出身ですが、北海道内ということもあり衝撃を受けました。しかも、その夕張市
へ、IT化支援のために会社から派遣されることが決まったんです」
業務内容は、夕張市のホームページのリニューアル。破綻してしまった夕張市に支援金や市債が集まるよう、見やすく、使いやすく、機能性の高いものへと作り変えることだった。
「市民の意見を取り入れようと街で情報収集をすると、住人から『この街を出て行きたい』
という悲痛な声が聞こえてきました。次第に僕は、この現状をなんとかしたい、悩める人々のために自分の時間を使いたいと考えるようになり、いよいよ起業を決意したんです」

従業員の身体障がいを機に就労支援に乗り出す。

社会的な支援を行うためには予算が必要だった。まずは足掛かりのため、官公庁の施設管理、受付業務などを請け負う会社を設立した。しかし経営が軌道に乗ってきた矢先、従業員が交通事故に遭う。車椅子生活を余儀なくされた部下のため、釜澤さんは貯めていた資金を使い、すぐさま障がい者就労支援施設を立ち上げる。
「正直、資金がそれほどあったわけではありません。しかし、重度の身体障がいを負った従業員を前に、すぐに行動しなければならないと思い立ちました。そもそも、困難を抱える人々への支援が起業の目的、とにかくやってみようという気持ちだったんです」
そして、施設の運営開始を機に、障がい者だけではなく、刑務所出所者、シングルマザー、難病を抱える人など、さまざまな困難に直面している人々の就労を支援するようになっていった。
「子どものころ、父親の経営する会社で出所者を雇用しているのを見て、働き口がない人々の問題を身近に感じてきたんです。こうした人々にセカンドチャンスを与えたいと思うことは、必然的な流れでした」
現在は250人ほどが、釜澤さんの会社を通して仕事を得ている。そのうち20人ほどが出所者である。これは東日本で出所者の就労を支援する企業の中では、トップレベルの数字だという。

就労支援で人を、北海道を元気に。

FUTUREFLIGHTグループでは、就職先でのミスマッチを防ぐため、さまざまな業種業態への慎重な就労支援に努めている。その背景には、出所者の7割が仕事に就けず、再犯を繰り返すという現状がある。
「就職が再犯を防ぐ。再犯者がいなくなることで、その人を管理するための税金もかからなくなる。そもそも再犯がなくなれば、街は平和になります。人を不幸にしていた人が、幸せにする人に変わっていくんです。就労支援が直接、我々がより良い社会で生きていくことにつながります」
しかし一生懸命やっても、再犯に走ってしまう人や消息を絶ってしまう人も少なくない。「それでも、相手を信じることを大切にしている」と、釜澤さんは涙を浮かべながら言葉を継ぐ。
「たとえ裏切られたとしても、自分は裏切らない。何度でも信じる。相手を信じて、ほんの少しでもその人が変わっていく瞬間が見えた時、それが私の原動力となり、会社の成長にもつながる。その力は、相手が出所者であろうと誰であろうと、変わることはありません」
釜澤さんは近年、過疎化している街や、担い手が不足している産業への就労支援を加速させ
ている。更に薬物依存症の回復支援センターの運営、生活困窮者への食料配布といった社会貢献活動にも取り組んでいる。
「困難を抱える人が元気に働けるようになると、おのずと産業や地域も活気を取り戻します。社会問題の解決や困窮者の支援に取り組みながら、働きたい人が誰でも働ける世の中をつくる。そして、社会を、北海道を元気にしていく。これからもその目標は変わりません」

FUTUREFLIGHTグループ

2012年、札幌で官公庁の業務を請け負うアウトソーシング事業をメインとした株式会社FFを創業。現在は株式会社キャリアエディション、一般社団法人フードバンクセンター、精神訪問看護ステーション、薬物依存回復センターも運営。障がい者やシングルマザー、ヤングケアラー、出所者、生活困窮者、難病患者など、社会的に困難な立場にある人々をサポートする新たなビジネスモデル「社会的企業」を目指している。
北海道札幌市中央区北4条西6丁目1
TEL.011-522-8753
https://futureflight.co.jp/
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
BOSS TALK
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時25分〜放送中!

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