誰もやっていないから自分がやる。家族で楽しめる「昼文化」をススキノに。【有限会社アートライフ】
2023年6月26日 公開
アスリートの道をあきらめ、飛び込んだ夜の世界。
出身は紋別市。公務員や教師の多い家系で、アルペンスキーの元・日本チャンピオンを父親に持つ。澤さん自身も小学生時代にはスキー、中学・高校では陸上競技で活躍し、将来は教師の道に進みつつオリンピック選手を目指していたという。
「ところが高校2年の時に背骨を骨折してしまって、東京の有名大学へのスポーツ推薦も辞退せざるを得なかったんです。幸いけがは治って札幌の大学に進学したものの目標を見失って…。『思いっきり逆の方向に行ってみよう』と始めたのが、ディスコでのアルバイトでした」
夜の世界へと飛び込んだ澤さんに更なる転機が訪れる。クールな表情でカウンターにたたずむ姿が芸能関係者の眼に留まったのだ。呼び出された会場は、芸能人の登竜門として知られる「ホリプロスカウトキャラバン」。澤さんは最終審査まで残ったことで上京し、東京のモデル事務所に所属した。
「華やかな世界。でも、思った以上に仕事のオファーが来なかったんです。だからオンリーワンを目指してひたすら体を鍛え上げました」
努力の甲斐あって海外の事務所からのオファーを受けた澤さんはイタリアへと渡り、ミラノコレクションやパリコレクションに出演した。特に人生に大きな影響を与えたと話すのがイタリアでの生活だ。
「ある友人と一緒に歩いていた時のことでした。偶然目が合った女の子の2人組を合わせた4人で出掛けたんです。訪れたお店はごく普通のカフェで、初めはお茶を手に4人で談笑していました。ところが日が沈むと共に音楽がかかり、お酒を手にみんなが踊り出したんです。今で言う『カフェバル』と呼ばれる存在を知り、同じように時間によって業態が変わる空間が日本にあっても良いのではないかと考えました」
自分の役割は「一騎当千」の人材を育てること。
「盛り上がるのは自分が店に立っている時だけで、不在時にはガラガラだったんです。このままでは店舗数を増やしビジネスとして成長できないと気付きました。それからは自分の代わりになる『一騎当千』の人材を見つけ、育てることこそが自分の仕事だとシフトチェンジをしたんです」
それからは自らが表に出ず、裏方に徹するようになったという澤さん。人材募集には自身が出会った人を直接スカウトすることも多いという。
「業界の経験や知識は、全く必要ありませんし、短所もプラスに考えています。たとえば場の空気を壊すような人でも『目立つ』という長所があれば必ずどこかで生かせるでしょう。何かしら魅力のある面白い人なら何をやってもうまくやれる、その才能を生かしてあげるというのが僕の持論なんです」
目指すのは年齢を超え、昼も楽しめるススキノ。
「まさに日本中が暗いムードでした。でも店を訪れたお客様を見ると、とても明るい笑顔を放っていたんです。その時『自分たちは必要とされている。心を豊かにすることができる存在なのだ』とエンターテインメントの大切さを改めて認識しました」
澤さんにとって店の存在は「町」。ナイトカルチャーの多くは大人がメインターゲットだが、これからは子どもも大人もみんなが自由に集まり居場所を持てる、そんな存在を目指しているのだという。例えば昨年秋にオープンした「スーパースナック」では昼の時間帯に家族で楽しめるイベントにも力を入れている。今後は昼間から営業をしている店舗と力を合わせてマップを作るなど、昼のススキノを楽しむ文化を作りたいのだとか。
「周囲からは『そんなことは無理だ』とも言われましたが、誰もやっていないからこそ『だからやるんだ』と逆に燃えるんですよ。何より、挑戦していくほうが格好良いでしょ?」
有限会社アートライフ
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