北海道発!商品誕生エピソード 親子三代で引き継がれる、汗と涙の結晶。焼カシュー【池田食品株式会社】

2023年10月30日 公開

豆菓子の老舗メーカーとして、札幌市民におなじみの池田食品株式会社。数ある商品ラインアップの中でも、1980年の発売から40年以上続くロングセラー商品が「焼カシュー」です。誕生の秘密を、同社三代目であり取締役の池田晃子さんに伺いました。
「焼カシュー」は日本人になじみやすい醤油で味付け。同じシリーズには黒糖やカレー、一味や山椒など、期間限定品も含めて常時10種類以上の商品があります。1つの味を開発するのに3、4年ほどかかることもあるそうです。

苦難の時代に逆転の発想から誕生!

取締役 執行役員/池田 晃子さん

同社のルーツは創業者である故・池田泰一さんが1948年(昭和23年)に開業した乾物問屋。当初は落花生や椎茸などの卸売をしていましたが、翌年には落花生をバターで味付けた「バターピーナッツ」を作りはじめ、製造業にシフトしました。問屋や飲食店を対象に製造を続け、工場を新設するなど順当に事業を拡大。しかし、それから約三十年後、大きな危機が訪れます。
「時代と共に中国産の落花生が輸入されるようになり、更に流通や保存技術が向上した影響で安価なバターピーナッツそのものが大量に日本へとやって来るようになりました。大規模農場と巨大な工場を構える中国と、弊社のような北海道の小さな工場では生産力も価格の安さもけた違い。たちまち価格競争に陥ってしまい、自社製品の売上が急落してしまったんです」

追い打ちをかけるように、泰一さんの大病が発覚。その知らせを聞いて帰郷してきたのが、二代目・池田光司さん(現・代表取締役)でした。
「父は大阪や東京で修行を積み、豆菓子の可能性を追求していました。彼が注目したのは、当時高級品だったカシューナッツです。今でこそコンビニで簡単に買える豆ですが、当時は入手そのものが難しい品でした。しかし当社は乾物屋を営んでいた経緯から、流通ルートの確保ができていたんです」

困難続きの商品開発。口コミで看板商品へ。

形勢逆転をねらい、カシューナッツを使った独自の商品開発に乗り出した光司さん。カシューナッツは落花生やアーモンドと違い、勾玉(まがたま)のような形状のため、均等に味付けをするのは困難を極めたそう。しかし光司さんは「だからこそまねされない商品がつくれる」という発想で、幾度となく試行錯誤を続けていきます。
「父は豆そのものではなく、周囲に衣をまとわせることで味を付ける、粉巻(こまき)という手法で、ナッツ本来の食感や風味を生かしつつ均等に仕上げることに成功しました。その後、それまでの主力商品であったバターピーナッツの設備をすべて焼カシューなど豆菓子の製造ラインに作り替えたんです。まさに会社の命運を懸けた挑戦でした」

一方すぐに大ヒットというわけではなく、人気が出るには時間がかかったのだそう。
「当時は商品を問屋や飲食店へ卸す『B to B』がメインだったため、焼カシューが安価で出回ってしまい、商品へのこだわりや思いをお客様に伝えることができていませんでした。そこで直販店を構え『B to C』に移行し、自社で製造から販売までを行う形にシフトしたことで、自社ブランドを確立し、その結果、口コミで人気が広がっていきました」

地位が変わっても変わらない地元への思い。

ここからは三代目である晃子さんのお話に移ります。晃子さんが入社したのは2017年。池田食品は百貨店にも店を置くなど、豆菓子ブランドとして唯一無二の地位を築いていました。
「焼カシューも当社の看板商品としてさまざまな味付けの商品が誕生していました。しかし、周囲から『作るのは得意だけど、売るのは苦手』と言われることが多く、販売促進やブランドの認知拡大が課題となっていました」

そこで晃子さんが取り組んだのが、パッケージや会社のロゴを含めた自社のリブランディング。すべての商品パッケージを濃紺色に統一し、ロゴも創業当時の乾物屋の看板に描かれていた文字を元に、老舗の威風を感じさせるものへと変更しました。「当社の商品はお酒の供として人気が高いこともあり、男性も手に取りやすいデザインにしたのもポイントです」と晃子さん。

リブランディングの効果は2019年、大丸札幌店への出店という目に見える形となりました。
「札幌駅隣接というロケーションは売上として大きいのはもちろん、道外や海外のお客様が増えるきっかけとなりました」

現在はお土産としての人気も高まり、道外のファンも次々と獲得しているという焼カシュー。一方で「どんなに時代や社会が変わっても、一番大切なことは変わりません」と晃子さんは言葉を継ぎます。
「それは地元、北海道で愛されることです。北海道に誇れる菓子メーカーという目標は、祖父の時代から変わらず持ち続けています。こう言うとインタビュー向きのせりふではないかもしれませんが、今後もシンプルにおいしさを追求し続ける、それが私たちの使命なんです」

池田食品株式会社

1948年(昭和23年)創業。豆菓子の他、かりんとうやたまごボーロも製造・販売。近年は北海道の豆農家との協業にも力を注いでいる。
北海道札幌市白石区中央1条3丁目32
TEL.011-811-2211
https://ikeda-c.co.jp

北海道発!商品誕生エピソード

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