老舗菓子店の銘菓がリブランディング「生ノースマン」【千秋庵製菓株式会社】
2023年2月27日 公開
道産子新社長が挑んだ、老舗銘菓のリブランディング。
「ノースマンは『北の人』を意味するネーミングで、1974(昭和49)年、北海道の大地に生きる人々のたくましい力を表したいとの思いから考案されました。まだ和洋折衷の菓子が珍しかった時代です。半世紀が過ぎ、今回はより若い世代にも愛してもらえるよう、生菓子としてのリブランディングを試みました」
千秋庵製菓が札幌で創業したのは1921(大正10)年。初代から4代目まではすべて創業家が社長を務めてきました。中西さんは創業101年目にして初めて、創業家以外から誕生した社長になります。
中西さんは小樽市生まれ。子どものころには活気があった商店街が次第に勢いを無くし、シャッター街になっていく様子を見て育ったと言います。「いつか地方創生に携わりたい」と考えて北海道大学経済学部に進学し、就職したのは大手商社。転機が訪れたのは2015年のことです。高校の同級生で洋菓子店「きのとや」創業者の息子・長沼真太郎さんが新会社を設立し、「力を貸してほしい」と頼まれ、中西さんは入社を決意。新会社の人事総務の責任者としてスタートアップを支えました。
その後、会社の成長を見届けた中西さんは2017年に帯広市の畜産会社へと転職し、飲食事業の立ち上げをリードしました。そのころ札幌では後継者不在などに悩む千秋庵製菓が、長沼真太郎さんを代表とする「きのとやグループ(現・北海道コンフェクトグループ)」との業務提携へと動き出します。長沼さんの誘いもあり、中西さんが千秋庵製菓の副社長として就任したのは2021年12月のことでした。
長い伝統を生かしつつ、新たな層に向けた訴求。
「101年目の一歩として、次の100年に向けた商品づくりが必要でした。知名度の高いノースマンであれば、若い層へもファンを広げていけると考え、更に生地やフィリングを変えるなど、バリエーションの可能性も秘めていると思いました」
若い世代にも愛されるようにとたっぷりの北海道産生クリームを使い、パイ生地と餡、生クリームのゴールデンバランスを目指した新しいノースマン。開発にあたり一番苦労した点は、パイ生地の改良。と言うのも従来の生地のままでは、パイ生地が生クリームの水分を吸ってすぐにベチャベチャになってしまったのです。
「道産小麦の強力粉を使い、従来のノースマンらしい味わいを残しつつ、クリームを詰めても型崩れしない生地を研究したんです。実に8カ月もの時間を要しました」
生クリームも、バターの風味豊かな生地や餡の味わいに負けないように、ミルキーで濃厚なものを探し求め、道産牛乳を原料とする生クリームにたどり着きました。餡に関しては、今も昔も千秋庵製菓の伝統が詰まった一手間かけた皮むき餡を使用しています。
パッケージにもこだわりが光ります。ノースマンというロゴはこれまでも使ってきた、「北海道デザインの父」とも呼ばれる栗谷川健一さんのデザインを継続して使用。発売初期に使われていた十字の方位マークや北海道開拓の精神を表す七光星、北国文化が感じられる編み物をモチーフとした模様・配色で、懐かしさと北国らしい力強さを表現しています。
次の100年に向かって、まだまだ挑戦はこれから!
「これからの100年に向かって、ノースマンの更なる進化や新商品の開発も考えています」と話す中西さん。自ら白衣を着て製造現場にも立つほか、社員一人ひとりとコミュニケーションを深め、徹底した情報公開・共有、精密なデータに基づくロス削減などにも取り組んでいます。伝統を生かしつつ、新しい発想で未来を目指す千秋庵製菓。次に飛び出してくるのはいったいどんなお菓子でしょうか。
ここがこだわり!開発のポイント
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北海道産生クリームを惜しみなくたっぷりと!
選び抜いた道産牛乳で作る生クリームをたっぷりと使用。餡の量も調整し、無敵のゴールデンバランスを実現。 -
発売時から変わらない伝統の「皮むき餡」
さまざまな餡を試した結果、ノースマン発売時に開発された「皮むき餡」がベスト。渋みがなくパイとも相性抜群。昔ながらの銘菓に生クリームをたっぷり入れた「生ノースマン」は、次の100年に向けた「新しい千秋庵製菓」の象徴。乳製品、小豆、小麦粉などすべての主原料に北海道産を使用し、中西社長の「地域創生」への思いも込められています。 -
500層に折り込んだバター香るパイ生地
バターを練り込み500層に折り込んだ伝統の生地をアップデート。生クリームとの相性を追求し道産小麦を配合しています。
千秋庵製菓株式会社
北海道発!商品誕生エピソード
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