ピックアップ情報 相談員不足で「北海道いのちの電話」がつながりにくくなっている現状とは

2022年7月18日 公開

生きることに迷いを感じてしまった人の相談相手として、24時間365日の体制で電話を受け付けている『北海道いのちの電話』。近年は相談員不足により電話がつながらない場合が多く、その充足が緊急の課題となっています。相談員の活動について、事務局長の杉本さんと、30年以上相談員を務める山田さん(仮名)にお話を伺いました。

生きる力は誰もが平等に持っている。私たちはその力を相談者から教わっているのです。

社会福祉法人 北海道いのちの電話 事務局長/杉本明さん

当法人は1979年(昭和54年)に国内6番目の『いのちの電話』として立ち上げられました。ピーク時は200名ほどいた相談員も、現在活動しているのは170名ほど。平均年齢68歳と、高齢化も問題となっています。ここでは常時3台の電話で対応していますが、相談員が1人や2人で対応せざるを得ない時間帯もあり、電話がつながる確率はたったの5%しかありません。相談員は仕事ではなく、無報酬のボランティアという形で活動しています。
相談員になるには約1年半の研修を受け、認定審査を受ける必要があります。研修で教わることは3つ。1つ目が傾聴に徹する姿勢。2つ目がどんな価値観も尊重し受けとめる心。3つ目が「共感的理解」、相手の立場に立って理解しようとすることです。

かつては私も電話を受けていました。私たちは相談者に対して、絶対に意見してはなりませんし、「でも」と口を挟んではいけません。人には百人百色の価値観がありますが、私たちはその善しあしを判断する立場にはないのです。ただ一つ例外として口を挟むのは、自死を止める時です。
カウンセリングの父と呼ばれるカール・ロ ジャーズという心理学者は「生きる力は誰もが平等に持っている」という考えの持ち主でした。相談者は「死にたい」と口走りながらも、ここに電話をしてきた時点で、心の底では生きたいと願っています。相談に耳を傾け続けていると、そうした願いを言葉の端々に感じることがあります。

相談員になった人たちは、初めは皆「誰かの役に立ちたい」と話しますが、やがてそれが奢りだったと気付かされます。私たちは相談者から、人の生きる力、生きる強さを教わっているのです。
現在、全道の小中学校・高等学校で『こころのライブ授業』という企画を行っています。私の講演と、ロックバンド『ナイトdeライト』によるライブの出張授業です。私が講演で必ず伝えているのは、身近に話せる人を作って欲しいということと、どうかその人の相談相手になって欲しいという2つ。誰もが身近な人に相談できる社会になった時、いのちの電話の役割が終わるでしょう。当会の相談員の募集だけでなく、皆さまが身近な誰かの相談者となることも願っています。

人生を語り合える仲間との出会いが、私の30年を支えてくれました。

相談員/山田里子(仮名)さん

若いころからさまざまなボランティアに取り組み、『北海道いのちの電話』にたどり着いたのは約30年前。子どもが成長して大きくなり、自分一人で誰かの役に立ちたいと願ったのがきっかけでした。
相談者は、私の想像を超えるさまざまな人生を歩んでいます。言い方が正しいかは分かりませんが、私にとっての相談員のやりがいは、多様な価値観を持つ相談者の方々と出会えることにあるんです。

私はいつも、すべての人の価値観や思いを肯定的に受け止め、否定しないことを心掛けています。また、疑問に思った時は聞き流さずに「どういう意味ですか?」とその真意を確認するのも大切です。つい最近も仕事がつらいとお電話されてきた方がいましたが、しばらく耳を傾けていると、「終わりにしたい」と言い出しました。私は「終わりとはどういう意味ですか」と聞くと、そこで初めて「自殺です」と相談者が口にしました。すると、それが恐ろしいことだと気付いたのでしょう、その言葉を皮切りに次々と身の上を明かし始めました。このように心の整理を促すのも私たちの役割です。
私が唯一否定するのは「あなたのお陰で元気になれました」と言われた時だけです。なぜならすべては相談者本人が生み出した答えだから。「私ではなく、あなたの力ですよ」。そう伝えることで、相談者が今後を生きるための自信にもつながるのです。

相談員を辞めたいと思ったことは一度もありません。その理由は、いつも仲間に支えられているからです。相談員には毎月研修があり、そこでさまざまな仲間や、人生の師とも呼べる素晴らしい方と出会えるんです。『いのちの電話』相談員という特殊な役割だからこそ、本音で語り合える関係を築き、一生の友とも呼べる人々と多くの時間を過ごすことができました。そして今でも生きるとは何かを、学び続けています。
私は心理学やカウンセリングの専門家でも何でもない、ごく普通の主婦です。ただすべての人に、温かな気持ちで接するようにしているだけです。相談員になるには、その心だけで充分。少しでもいい、私たちの活動に力を貸してくれる方を待っています。

社会福祉法人 北海道いのちの電話 事務局

相談員になるには資格や年齢は不問です。『いのちの電話』の活動主旨に賛同し、これらを支える相談員として養成研修及びその活動に積極的に参加してくださる方を募集しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。
TEL.011-251-6464
FAX.011-221-9095
https://www.inochi-tel.com

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