北海道ビジネスニュース 北海道ビジネスニュース【晴好雨喜(せいこううき)】

2021年10月18日 公開

札幌市内中心部から車を走らせる事、約40分。「定山渓ダム」の手前にある小道を進むと見えてきたのは、色とりどりのテント。看板はありませんが、ここが今年8月、夫婦2人でオープンしたという噂のキャンプ場「晴好雨喜」。取材班をにっこりと出迎えてくれた吉田優一朗さん、菜緒子さんご夫婦にお話を伺いました。

夫婦2人で山を開拓しオープン。晴れの日も雨の日も美しい、未完のキャンプ場「晴好雨喜」

取材中も息ぴったりの吉田優一朗さん(41歳)と菜緒子さん(34歳)ご夫婦。しかしキャンプ場作りではお互いこだわりが強く、作業が進まない時もあるのだとか。「夫が不在の時は、『今がチャンス!』と作業を進めています」と笑う菜緒子さん。

「山に住みたい」から見つかった北海道開拓時代の土地。

入口には手作りのカウンター、中央には広場のようなテントサイト。一見、小じんまりとしたキャンプ場だと思いきや、奥へ奥へと道が続き、森の中でプライベートキャンプが楽しめるエリアや、白樺が立ち並ぶ空間が広がります。「これでもまだ、全体の5分の1程度しか開拓が進んでいないんです。『完成しないキャンプ場』というのも、コンセプトなんですけどね」
この広い土地はまだまだ進化の過程。そう話すのは、夫の優一朗さん。釧路市のご出身で美容専門学校を卒業後、東京で美容師として働き、ファッション雑誌の表紙ヘアメイクやモデル、芸能人のカットも担当するなど、第一線で活躍。しかし北海道の自然が恋しくなり7年前に帰郷し、先輩が経営する美容室の新店舗で店長として働き始めました。
そこにお客様として通っていたのが、札幌出身の菜緒子さん。お互いにキャンプ好きという理由からすぐに意気投合し、4年前に結婚。現在は3人のお子さんがいます。
かねてから「老後は山で暮らしたい」と語っていた優一朗さん。そんな夢を後押ししようと、昨年春に菜緒子さんが見つけたのが、後にこのキャンプ場となる7500坪(札幌ドーム1.7個分)の土地付き中古住宅でした。
「北海道の山林は大半が国有林なのに、どうしてこんなに広い土地があるのか疑問でした。取り寄せた資料に古い地形図が載っていたので、不動産屋さんに問い合わせたんです。すると、この土地は前オーナーのご先祖様が北海道開拓時代の初期に切り拓き、代々受け継いできた土地だと知りました」と菜緒子さん。
優一朗さんは「言わば『終の住処』と考えていた夢だったのですが、これだけの広さがあるのですから、せっかくなら理想のキャンプ場を造ろうと、2人で決意を固めました」と振り返ります。

家族と共に開拓も…寝ずに迎えたオープン日。

昨年10月に土地を購入し、今年8月にはオープンしようと決めていたご夫婦。しかし雪解けが終わった5月下旬に姿を現したのは、高さ2メートルにも及ぶ笹やぶ。更に所々にある陥没や池、ぬかるみに行く手を阻まれます。さすがに人力での開拓は無理だと悟った2人は重機や芝刈り機などを購入し、その使い方を動画配信サイトで学びながら作業をしたそうです。思わぬ出費が続いたため、キャンプ場造りに足りない費用をクラウドファンディングで募ったところ、なんと123名から合計約130万円もの支援を得ることができました。
しかし、札幌市内で美容師としても働く優一朗さんはなかなか山へ来る事ができず、菜緒子さんも3人の子育てで大忙し。オープン1カ月前にようやく整地が終わり、ボランティアや地域の方、時にはお子さんの力も借りながら急ピッチで作業を進めたそうですが、オープン直前までは連日の徹夜続き。どうにか迎えた開業初日は、お互い疲労困憊な状態でした。それでも「作業はひたすら楽しかった」と2人は笑います。

絶え間なく変化を続ける自然本来の魅力を味わう場に。

キャンプ場の名前「晴好雨喜」とは、この地を見た菜緒子さんが「晴天でも雨天でも素晴らしい景色」を表す中国由来の四字熟語「晴好雨奇」をアレンジして名付けました。
「このネーミングのおかげか、雨が降ってもキャンセルするお客様がとても少ないんです。それから、完成しないキャンプ場というコンセプトも理解してくれているので、多少不便な点があっても『いいよいいよ!』って、受け入れてくれるお客様が多いのもうれしいですね」と菜緒子さん。
ところで、個人経営のキャンプ場はビジネスとして成立するのでしょうか?再び菜緒子さんに伺いました。
「確かに全国的にも例が少なく、ビジネスとしては不透明です。しかし『土地を貸す』という意味では、不動産やホテル、もっとラフな形で例えると民泊に近いかもしれないですね。規模やサービス次第では充分に成立するのではないでしょうか。実は固定資産税などの経費も、山奥なので抑えられているんです」
取材終盤、パラパラと雨が降りだしてきました。そんな様子を見た優一朗さんは「いやぁ、気持ちいい」と一言。
「季節や天候で移ろい行く姿、変わり続ける姿こそ、自然本来の魅力だと感じます。最近のグランピングとは対極にある価値かもしれないですね。これから僕たち夫婦が生涯をかけて、この場所に理想郷を作り上げていきますよ。その時はまた、取材に来てくださいね」。
現在、案内可能な人数は15組まで。今期の営業は10月末までですが、週末は予約でいっぱいの状態で、平日も残り数組という日がほとんどだそうです。これからはドッグランやサウナテントの設置に加えて、場内の池に蛍が来るよう整備する計画もしているのだとか。

晴好雨喜 -SEICOUKI-

2021年8月にオープン。料金は大人800円、子ども400円に加え、エリアはフリーサイトから森に囲まれたプライベートサイト、車を横付けできるオートサイトなど、4箇所から選べる(500〜2,000円)。予約はウェブサイトのみから受付。年内の営業は10月末まで。
北海道札幌市南区定山渓937
https://www.seicouki.com

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