北海道ビジネスニュース【株式会社ブエングスト】
2021年5月24日 公開
コロナ禍で苦境の生産者を救う、ゼロ円通販「北海道旬得便」。
生産者の現状を聞き、ECサイトのノウハウを活用。

大学での講師や企業顧問としても活躍している川口さん。「『北海道旬得便』が、弊社がメインで取り扱ってきた物販、物流といったビジネスからの転換にもつながるのではと期待しています」
「元々、仕事でのつながりから道内の観光協会や飲食店経営者達と交流がありました。そうした方々から、余った食材を利用した商品開発や、食材そのもののネット販売ができないかと相談を受けたのがきっかけです」
新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた観光業や飲食業。それに連なるように農業、漁業などの一次産業も卸売先が減少したことで苦境に陥っているというのが相談の理由でした。更に、大量の食材が倉庫や冷蔵庫に眠っていたり、最悪の場合は捨てられていたりするというのです。
インターネットオークションでの販売代行やリサイクルショップの運営を行なっていたこともあり「もったいない」という意識は強かったという川口さん。加えて、IT化が遅れている産業へのサポートも行いたいと考えていたそう。そこで、ECサイトのノウハウを生かして、まずは農業を支援する方法を模索します。
「多くの業態がテイクアウトやインターネット販売といった非接触での販売方法にシフトする中、農家の大半は卸売や対面販売など従来型が主流で、ECサイトの運営ノウハウといったITリテラシーを持つ生産者は多くありません。また、受発注や発送まで手を回す時間も人員もないというのが現実でした」
リスクを負ってでも、北海道の産業を救いたい。
そして、無料で野菜を引き取っても支援にはつながりにくいことから、生産者から直接、野菜を買い上げる事を決断します。しかし、それでは採算が取れないのでは…。
「他の事業で補っているのが現状ですが、リスクを負ってでも一刻も早く支援をしようと決意を固めました。北海道は農業と観光業への依存度が非常に高く、とりわけ農業の出荷額は全国1位で、2位の鹿児島県との差は2倍以上と圧倒的な産業規模を誇ります。農業がダメージを受けることは北海道全体の衰退につながってしまうのです」
更に、野菜は規格外品や訳あり品ではなく、飲食店や観光施設に卸していた高品質な食材。購入したその日に発送しているため、収穫したての新鮮な味わいが楽しめるのだとか。
「全国の皆さんにおいしい野菜を味わっていただき、北海道のファンを広げること、注目度を上げることが、将来の支援にもつながると思うのです」
新たなビジネスを見据えて、ネットワークを広げる。
「特に大阪や東京といった大都市にお住まいの方、若い女性や小さなお子様のいる世帯からのご注文が多いですね。このサービスがコロナで収入が減ってしまった方、ひとり親世帯の方の支援にもつながるのではと期待しています」
今後は、農家とのネットワークを更に増加。漁業や食品製造業へと支援を拡大し、取り扱う商品も北海道のギフトやスイーツなど幅を広げたいそうです。そして同じく苦境に立たされている全国の飲食店に届けることで、食にまつわる産業全体のサポートへとつなげていきたいと話します。そうして本業では得られないつながりを得ることで、食品の流通・販売といった新たな事業の展開も考えているのだとか。
「今は利益を追求せずにショップの運営を続け、社会貢献のための循環型プラットフォームへと成長させたいです。将来的にはSDGs(持続可能な開発目標)で掲げられている食品ロス削減の啓発や、災害時のネットワーク構築、情報格差の解消につながるでしょう。また、弊社もそうした課題解決に向けたコンサルティングなどを行なうことが可能となります。それが会社にとっても、世の中にとっても、メリットとなると期待を抱いています」
株式会社ブエングスト
北海道札幌市豊平区美園3条1丁目2-1
TEL.011-788-5056
https://buen-gusto.co.jp/
https://h-shuntokubin.com
現在出品されているのはタマネギやジャガイモがメイン。お米など一部は有料ですが、大幅に値引きした金額での購入が可能です(2021年5月現在)
https://www.instagram.com/shuntokubin/
SNSを通じたプレゼントキャンペーンを行ったところ、インスタグラムで野菜を使用した料理写真が次々とアップ。認知度向上につながりました。
北海道ビジネスニュース
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