注目企業のトップに聞くin北海道 介護・福祉にまつわる情報のプラットホームを確立し、質の高い相談支援につなげる【介護福祉サーベイジャパン株式会社】

2022年4月25日 公開

道内約1600カ所の老人ホーム・介護施設の情報を掲載し、年1回発行している雑誌「すむところ」。施設探しをしている入居希望者やその家族、相談員などが効率的に施設を見つけられるよう手助けしています。発刊元である介護福祉サーベイジャパン株式会社の代表取締役、齋藤厚さんにお話を伺いました。
代表取締役・社会福祉士/齋藤 厚さん
1973年生まれ、美幌町出身。Webサイト制作事業を経て、介護福祉に特化した情報提供による支援を推進。一般市民を対象にした無料相談事業では、高齢者の抱える悩みに直接寄り添う。

入居施設の情報を効率的に提供し、終の住処探しを支援したい。

「すむところ」の紹介をお願いします。
2017年に旭川市とその近隣を中心に発刊しました。特別養護老人ホームからサービス付き高齢者住宅まで多様な入居系施設をカタログのようにまとめています。現在発売中の2021年度版では、4地域に分けて道内全エリアをカバーしました。施設の掲載数は約1600カ所に及び、道内にある施設の6割以上を網羅しています。

なぜこうした事業を始めたんですか?
当社はもともと介護福祉施設のWebサイト制作が主軸事業でした。道内では7、8年前に老人ホームの新設が相次ぎ、それに伴ってサイトの制作依頼も急増し、施設のオーナーさんとのお話から、入居希望者の「施設探し」が想像していた以上に難しいことを知りました。特に糖尿病や人工透析、床ずれなどの病気を抱えていると、看護師の有無や医療行為の適用範囲が合う場所を探さないといけない。しかし、当時は情報が整備されておらず、ケアマネージャーや病院の担当者が選んだ数件の施設の中から選択するしかありませんでした。大半の人にとって介護福祉施設は“終の住処”となる場所です。人生の終わりを迎える場所を決めるには、選択肢があまりに少ない。施設探しをする人にもっと力になれることはないか、そんな気持ちがすべての始まりでした。

数百件を超える相談実績で、高齢者に寄り添う。

創刊時の苦労は?
旭川市内の施設を一軒一軒回って情報を集めました。200カ所程訪ねて、掲載してくれた施設は約50カ所。当初は誌面ではなくWebサイトに掲載し、入居希望者と施設の仲介なども行っていました。すぐに入居希望者からの問い合わせが殺到し、施設探しのニーズの高さを実感したため、事業の本格化を決意しました。また今と違って施設内にネット環境がない事業所が多かったこともあり、誰もが閲覧できて施設を比較しやすい紙媒体に移行させたんです。加えて、介護福祉を専門に学んだことがなかったので、創刊を機に働きながら通信制の専門学校に通い、社会福祉士の資格も取得しました。

他にどのような事業を手掛けていますか?
旭川で常設の無料相談窓口を設置したり、各地で予約制の無料相談会も開催したりと、高齢者から数えきれないほど多くのお悩みを耳にしてきました。施設探し以前に、銀行や買い物に行けないといった相談を受ける事も多く、その悩みは底が見えません。こうした不安を解消するために、来月から行政書士事務所と連携した窓口を設置します。保険や相続など法律的な問題、また死後の事務処理についてもアプローチしていけたらと準備を進めているところです。

Webを生かした情報提供で、現場の後方支援へ。

「すむところ」が目指していることは何ですか?
相談員さんたちの後方支援になることです。例えば病院の場合、相談員が施設入居の手続きに割く時間は平均で1日2時間という統計があります。相談を受ける人たちが雑事に追われていては、ケアの質が低くなるのは必然です。もし必要な情報が整備されていれば、手続きにかかる時間を大幅に短縮でき、利用者はもっと質の高い相談支援を受けられるでしょう。また、現在「すむところ」は雑誌を中心に情報を更新していますが、Web版が主軸となるよう移行を進めています。現在の年1回の刊行ペースでは、施設情報の追加や更新にタイムラグが生じてしまいますが、今改良を進めているWeb版ではリアルタイムで編集・発信ができます。更に施設のパンフレットをアップロードできる仕組みも搭載予定なので、施設の方が個別に資料を郵送する手間も省けます。

今後どのような問題に取り組みたいですか?
2040年の高齢者増加ピークに向けて、特に老々介護や孤立の問題に対してアプローチしていく必要があると考えています。例えば高齢者の相談窓口となる地域包括支援センターでは、障がい者や老々介護の問題への重層的な支援を既に始めています。こうした取り組みの好例は各自治体にありますが、全国的に共有がされておらず、問題の当事者になったときに参考にするのが難しいです。また、財源確保についても業界全体が同じ問題を抱え、日夜解決に向け取り組んでおり、こうした前例を他の地域で応用する事で解決できる事例もあるんです。今後は効率的な事例を共有するための情報発信の場が必要になります。高齢者にまつわる問題は一つひとつの課題がすべて違うので、これだという特効薬はありません。まずは業界全体をつなぐ情報発信のためのプラットフォームの整備を進め、現場でプロの人々が業務に集中できるよう、公と民のすき間を埋めるような後方支援を形にしていきたいです。
札幌・道央、旭川・道北、道東、道南の4地域に分けて全道をカバーしている雑誌「すむところ」。入居時の費用はもちろん医療介護体制や食事、健康管理サービスに関する情報などを網羅しています。

介護福祉サーベイジャパン株式会社

2016年設立。老人ホーム・介護施設を紹介する雑誌「すむところ」を出版。介護・医療・福祉施設のWebサイト制作や、無料の福祉総合窓口事業なども展開している。
北海道札幌市中央区大通西4丁目1道銀ビル7F
TEL.011-261-0025
https://caresurvey.co.jp

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