注目企業のトップに聞くin北海道 タクシーのイメージを刷新!ハートのあんどんで照らす業界の未来。【互信ホールディングス株式会社】

2026年5月18日 公開

旧態依然としたタクシー業界のイメージを変えたい。そんな思いを胸に、3代目として家業の「ハートタクシー」を継いだ平島誉久さんは、これまで幾多の逆境を乗り越えながら改革を続けてきた。現在は次世代のドライバーが主役となる職場「タクシーネクスト」を立ち上げ、自らも協会会長に就任して改革を先導するなど、業界に新しい風を吹かせている。
代表取締役社長/平島 誉久さん
1980年札幌生まれ。神奈川大学卒業後、大手家電メーカーの関連会社で営業職を経験。2005年にUターンし、前身となる互信交運事業協同組合に就職。2012年、父の後を継ぎ32歳で代表就任。2020年、高品質なサービスと若い世代が主役となる職場環境を掲げて「タクシーネクスト」を設立。2024年からは札幌ハイヤー協会会長、北海道ハイヤー協会会長にも就任し、業界全体の改革にも取り組む。

あんどんへのあこがれを胸に、
商社を経て家業へ。

祖父が創業したタクシー会社「日の丸交通」の3代目として生まれた平島さん。子ども時代は街を走るタクシーのあんどんが気になって仕方がなかったという。
「だるまのマーク、星型のマーク、北海道のマーク……特徴的なあんどんを出している会社が格好良くて、近くで見るのが好きでした。母には『他の会社のタクシーに乗りたがらないで、ウチのにしなさいよ』と言われて乗せられていたのを覚えています(笑)」
家には大勢の社員が集まることも多かったが、家業への意識はほとんどなかった。神奈川県の大学を卒業後は大手家電メーカーの関連商社へ営業として入社。関東圏での卸売りや販売を中心にキャリアを積んでいった。
転機は父からの突然の「帰ってきてほしい」という要請だった。当初は断ったというが、1年ほどがたった2005年、祖父の体調が悪化していることを知り、心が揺れ動く。
「祖父が大好きだったので、少しでも近くにいたいという気持ちが強くなり帰郷を決意しました。わずか3カ月後に祖父は旅立ってしまいましたが、短い時間でも最後にそばにいられたことは、今も心の支えになっています」
家業に参画してからは企画営業を担当しながら、ブランド戦略の刷新にも着手した。
「タクシーは必要に迫られて乗るものです。だからこそ、まず選んでもらえる存在になるために、覚えてもらうことが大事だと思い、あんどんのハートを鮮明な形に、名称も覚えやすい『ハートタクシー無線センター』に変えました。子どものころにあんどんを見て格好良いと思っていた気持ちが、ここでつながった気がしています」

32歳で社長に就任し、
幾多の逆境を乗り越える。

ブランド戦略を進めながら家業に貢献し始めた平島さんだったが、父の急逝により32歳で代表に就任することになる。当時の会社を取り巻く状況は厳しかった。リーマンショックや東日本大震災の影響、競争の激化などが折り重なり、毎年赤字を計上する状態が続いていたのだ。
「規制緩和の影響で新規参入が相次ぎ、市場の車両台数が2倍近くに膨らんでいた時期で、乗務員一人当たりの稼ぎが低くなっていたんです。私は父からの事業承継の準備も整わないままの就任で、最初にやった仕事が不採算部門の清算や人員削減…ご迷惑をお掛けした方々もたくさんいらっしゃいます。私の社長人生のスタートは、リストラや事業再編から始まったんです」
業績がようやく上向き始めた矢先にコロナ禍が直撃する。緊急事態宣言で街から人が消え、ひと月で約1億円の赤字を計上するほどの危機に陥った。しかし、すぐに飲食店向けの宅配サービスを立ち上げ、乗務員が昼間に料理や食材を届ける事業を始める。更に保健所や病院と連携し、感染の疑いがある人を専用車両で検査会場まで搬送する業務にも参入した。
「不安は当然ありました。でも、感染の可能性があるお客様を無防備で運ぶより、防護服を着て対策を徹底した車両で対応するほうが、むしろ安全だと判断したんです。荒波の中で仕事に応じてくれた乗務員たちには感謝しかありません。うれしいことに、コロナに感染した乗務員は最終的に一人も出ませんでした」

「タクシーネクスト」で
業界の景色を変えていく。

コロナ禍で生まれた時間を使い、平島さんは以前から温めていた構想を形にした。2020年8月、新たなブランド「タクシーネクスト」を立ち上げたのだ。
「かねてからタクシーはお客様にある種許されている部分があると感じていました。車内のにおい、言葉遣い、運転の荒さ…そういうことがお客様にとって『しょうがないか』となってしまっている現状は良くないと思ったんです。同じ志を持った若者を1から育てることで、根本から変えたいという思いでした」
タクシーネクストの社員の平均年齢は約30歳。お客様との約束として67項目のルールを定め、身だしなみ、言葉遣い、経路確認といったサービスの基準を全員で共有する。船出はたった8名でのスタートで、赤字が続く厳しい時期も長く続いた。しかし今では若い乗務員が活躍するタクシーとして少しずつ認知が広まり、配車アプリ上でも高評価が続いているという。
「アプリの登場によって、ベテランも若い乗務員も同じくらい稼ぎやすくなりました。若者を採用しやすくなったのは、アプリの本当に良い面だと思っています」
一方で、アプリの普及によって「どのタクシー会社でもいい」という空気が広がりつつあるのは懸念点だ。
「アプリの配車は、基本的に近くにいる車が割り当てられる仕組みです。そうなると、どれだけマナー研修を積んでも、お客様から見れば『今日は当たりが悪かった』で終わってしまいかねません。だからこそ、アプリに頼り切るのではなく、街で手を挙げてもらう時に『あの会社の車に乗りたい』と思ってもらえる存在を目指すこと。その積み重ねが本当の信頼につながりますし、『選ばれるタクシー』になることが、業界全体のイメージ向上にもつながると考えています」
あんどんへのあこがれを胸に育った少年は今、自分たちのあんどんの輝きで業界全体を照らし始めている。

互信ホールディングス株式会社

1959年「日の丸交通」として創業。現在は明星自動車株式会社、札幌日交タクシー株式会社を合わせた統一ブランド「ハートタクシー」として札幌市内を中心に稼働している。2020年には高品質なサービスと若い世代が主役となる職場環境を掲げた「タクシーネクスト」を設立。業界全体のマナー向上への取り組みも積極的に推進している。
札幌市南区南34条西11丁目7-1
TEL.011-582-5811

https://www.goshin-group.co.jp/
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。

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