注目企業のトップに聞くin北海道 注目企業のトップに聞くin北海道【株式会社トリプルワン】

2021年5月10日 公開

「面白いことしかやりません」をスローガンに、タレントマネジメントや映像制作、広告代理業などを手掛ける株式会社トリプルワン。最近ではコロナ禍の中、飲食業への応援プロジェクトとして、「未来のお食事券」を発行するクラウドファンディングをいち早く立ち上げたことでも話題です。代表の伊藤翔太さんがユニークなビジネスの先に描く未来とは。

100年後の北海道をより良い土地にするために、何を「遺せる」だろう。

代表取締役社長/伊藤翔太さん
北海道栗山町出身。前職の音楽レーベルではプロダクトマネージャーとして、東京で著名ミュージシャンを多数プロデュース。北海道に戻り、タレントマネジメントや映像制作、広告代理業、その他プロデュース業などを営む「株式会社トリプルワン 」を2017年に設立。

病に倒れたことで、故郷への思いが強く。

伊藤さんは大の音楽好き。札幌で大手音楽レーベルの新人発掘業務を委託で請け負っていたところ、目の付け所の鋭さと先見の明を瞬く間に発揮し、その手腕を買われて社員として迎え入れられました。ほどなく、活躍の場は東京へ。
「音楽を仕事にできる日々は本当に充実していた反面、好きが高じるあまりガムシャラに働き過ぎたのだと思います。32歳の11月1日…実は僕の誕生日なのですが、脳腫瘍を患って倒れてしまったんです」
幸いにも後遺症も残ることなく手術は無事に成功。入院生活の中で、伊藤さんは自分自身を振り返り、これまでの人生を見つめ直す時間が増えたといいます。
「脳裏に浮かんでくるのは、故郷の情景ばかりです。地元で出会った多くの友人や輝いている人々の姿が頭から離れなくなりました。退院後に職場復帰を果たしましたが、北海道に戻って、北の大地を盛り上げたいという気持ちが抑えられなくなったんです」
伊藤さんは北海道にUターンすると2017年に株式会社トリプルワンを設立。「面白いことだけ」で北海道を盛り上げるという目標を掲げ、歩みをスタートさせました。

コロナ禍でも地元を盛り上げるプロジェクト。

伊藤さんは音楽業界時代の友人や思いを同じくする仲間といくつか仕事を始めました。当初はタレントマネジメントや映像制作、広告代理業を柱にするとは決めていなかったものの、数々の事業を請け負った結果、徐々に今のスタイルになっていったそうです。
「例えば、テレビCMを制作する時、映像は外部のクリエイターに外注していました。けれど、内部にスタッフがいると連携はよりスムーズになると考えたんです。同様に自社で広告代理業ができ、タレントを抱えることで、すべてがワンストップで提供できるという強みになります」
ちなみに、同社のタレントはジョブキタのCMソングでおなじみの金子智也やお笑いコンビのしろっぷなど、「北海道で輝いているのに、なかなか活躍の場がなかった、いわば原石」と伊藤さんは笑います。
「北海道を盛り上げるという意味では、当社のHAMBURGER BOYS(ハンバーガーボーイズ)の活動が分かりやすいと思います。道内の市町村と特産品などをテーマにした個性的なラップソングを作り、歌を使った新しいPRの形を生み出しました」
このコロナ禍では札幌市内の中小飲食店を支援するため、昨年3月に「札幌市飲食店未来応援プロジェクト」を組織し、購入型クラウドファンディングを活用。約8億5千万円を集めたことでも、飲食業界を力強く支えました。
「今年、札幌市の成人式はコロナ禍で中止でした。けれど、新しい成人式の形を模索した結果、『サッポロオンライン成人式』を開催することにしたんです。著名人からのお祝いメッセージや企業からの豪華なプレゼント抽選会、2000発の花火の生配信は非常に喜んでもらえました」
いずれも収益性よりも、地元を盛り上げたいという心意気からプロジェクトを立ち上げたと振り返ります。

未来の北海道に、良いものを「遺す」活動を。

ここ最近で、伊藤さんが参画したプロジェクトが「食の北海道遺産」。銘店の味を未来に遺したいという思いを形にすべく、ドラッグストア運営企業「サツドラ」、食品製造企業「アイビック食品」と手を携えました。
「外食の味は作り手がいなくなると金輪際食べられないですよね。けれど、それは実にもったいない。北海道の魅力であり観光資源でもある食を守り、未来に受け継ぎたいという思いに賛同した3社でこのプロジェクトを運営しています。第一弾として販売したのは銘店のカレーとハンバーグ、そしてザンギカレー炒飯の素です」
伊藤さんは商品のパッケージや売り出し方といったプロデュース面で活躍。クラウドファンディングで先行販売を行い、店頭に並ぶ前に話題を巻き起こすという手法がヒットし、発売後は4日で売り切れたというからさすがの一言です。
「実は脳腫瘍を患った時、もう一つ考えたことがあります。死を間近に感じたことで、自分のいない世界を想像しました。そこで湧き上がってきたのは、100年後の北海道に自分は何を『遺せる』のだろうかという強い思いです。未来の北海道がより良い土地になるために、良いものを遺すための活動をする… これが会社としての使命だと考えています」

株式会社トリプルワン

HAMBURGER BOYSや金子智也など北海道を代表するタレントが所属。テレビ、ラジオCMの代行、映像制作、ビジョン、WEB広告から商品開発まで行う総合代理店としての事業の他、北海道を盛り上げるための多彩なビジネスや活動を展開。
北海道札幌市中央区南1条西8丁目13-2 札幌第2スカイビル8F
TEL.011-839-5642
http://tripleone.cc/

注目企業のトップに聞くin北海道

最新記事5件

Uターン起業でホテルを再建。宿泊・観光・飲食業で、十勝エリアの魅力を引き出す。【十勝シティデザイン株式会社】 2025年8月4日 公開

代表取締役を務める坂口琴美さんに、起業の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。

厚沢部町発・保育園留学事業。子ども主体の暮らし体験を、地域活性化の契機に。【株式会社キッチハイク】 2025年7月28日 公開

代表取締役CEO・山本雅也さんに、起業の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。

「北海道を繁盛させたい」亡き父と歩んだ日々を胸に、建築事業を超えた地域貢献を。【ストアプロジェクト株式会社】 2025年7月21日 公開

代表取締役の間宮なつきさんに、後継の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。

北海道は、観光資源の宝島。アドベンチャートラベルで地域活性化を目指す。【株式会社北海道宝島旅行社】 2025年7月14日 公開

代表取締役社長を務める鈴木宏一郎さんに、起業の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。

経営危機から一転。数の子メーカーが取り組む、岩内町活性化事業。【株式会社井出商店】 2025年7月7日 公開

代表取締役社長を務める井出敬也さんに、起業の経緯や今後の展望について伺った。

ページトップへ戻る