注目企業のトップに聞くin北海道 運営する民泊は800室超。不動産プロデュース事業で、人と人とをつなぐ。【株式会社MASSIVE SAPPORO】

2025年8月25日 公開

北海道初のシェアハウスを開業したとして知られ、現在はインバウンド向けの民泊事業や、フロント業務をリモート化した無人ホテル事業を展開している株式会社MASSIVE SAPPORO。その取り組みは北海道のみならず全国的にも注目されている。代表取締役を務める川村健治さんに、起業の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。
代表取締役/川村 健治さん
札幌市出身。1997年大学進学を機に上京し、2000年、休学中にインターネット関連のベンチャー企業に勤める。卒業後は医療機器販売、映像編集の仕事を経て、2004年不動産会社に就職。2009年に上海へ留学、帰国後はシェアハウス生活を経験し、2010年、株式会社MASSIVE SAPPOROを創業。

仲間との出会いが、一生の自信に。

札幌市出身。中学生時代に読んだ「SHOGUN」というマンガの影響で、起業家になりたいという夢を抱くようになった川村さん。主人公が無一文から立身出世していくストーリーに、あこがれていたのだとか。
「優秀な仲間に恵まれて成長していくマンガのキャラクターとは違い、僕はコンプレックスの塊で、人とも深くかかわれずにいました。そのまま高校生になったのですが、ある日道端で中学時代の友人と再会し、それから放課後は毎日彼の家で遊ぶようになったんです。他校の生徒も複数遊びに来ていて、彼らと過ごすその場所が僕の居場所になっていきました」
「仲間ができたことで、ありのままの自分に自信が持てるようになった」という川村さん。この出来事が自己像を形作るための重要な転換点になった。高校卒業後は大学進学のため上京する。
「東京郊外でのんびりと大学生活を送っていた僕は、都心部の学生たちが注目するITバブルの波に乗り遅れ、焦りを感じていました。しかしもう気弱な僕ではありません。情報交換も兼ねて他の大学の学生たちと付き合うようになり、休学して1年間インターネット関連のベンチャー企業に勤めました」
その後、大学復学と卒業を経て2002年、川村さんが就職したのは医療器具販売の会社だった。しかし不景気のあおりを受け入社2年で解雇になり、その後映像編集者に弟子入りするも、あまりの激務に2週間で逃げ出した。つまずきの連続だった当時を振り返り、川村さんは「情けない」と言って笑ったが、同時に「忘れてしまった謙虚さを取り戻すために必要な機会だった」とも語った。

度重なる試練から、留学を機に起業を決意。

川村さんは2004年、気持ちを新たにして不動産会社へ就職する。
「未経験ながらも少しずつ仕事を覚え、周囲との信頼関係を構築するうちに、大きな仕事も任せてもらえるようになりました。体力的にハードな面もありましたが、その分やりがいも大きく、毎日充実していました」
ところがある日、上司との会話の中でささいな行き違いが起こった。そしてそれを機に川村さんはすべてのプロジェクトから除名され、身の置き場もない状況にまで追い込まれてしまった。会社の業績不振も続いていたことから、川村さんは退職を決意。5年間勤めた職場を後にした。
「ちょうど30歳という節目の年でした。とにかく気持ちを切り替えようと、20代でやり残したことを書き出し、中でもずっと経験してみたいと思っていた海外留学に挑戦することを決めたんです。大学時代に中国語を学んだこともあって、行き先は上海にしました」
川村さんは世界各国から訪れた留学生と共に、寮生活を送ることになった。一つ屋根の下で級友と過ごし、時に悩みや喜びを分かち合う経験は、高校時代、友人宅で過ごした日々を思い出させてくれたという。この経験が帰国後、シェアハウス事業を立ち上げるきっかけにもなったのだった。
「もしもずっと一人で暮らしていたら、今世界で一番不幸なのは僕だと思い込んだままだったかもしれません。でも、仲間と共に暮らす中で、つらいのは僕だけじゃないということに気付いたんです。頑張ろうと思えたその瞬間をより多くの人に体感してほしいという思いで、2010年、株式会社MASSIVE SAPPOROを創業し、北海道初のシェアハウス『BUIE宮の森』をオープンしました」

民泊・無人ホテル事業で北海道の魅力を後世へ。

川村さんはシェアハウスをただ貸し出すだけでなく、より快適に過ごせるようにと、コミュニケーションの取り方、共同生活に必要なルールを伝えるなど、入居後のサポートも続けた。パーティーの開き方、割り勘の仕方など、どんな小さなことにもアドバイスを惜しまない川村さんの姿勢は多くの入居者から好評だった。
「自らで事業を始めてからはどんな仕事も大変だと感じることは無く、やりたいことが形になっていく喜びと、これまでの苦労が報われたという思いでいっぱいでした。こうした実体験から従業員にも『悩んだり迷ったりしてこそ輝かしい未来が訪れる』と伝えています」
起業後3年間で川村さんが管理するシェアハウスの軒数は200を上回った。更に空き部屋を旅行者に貸し出す民泊事業を開始。その後、旅館業の法改正に伴って、入退館業務をリモート化した無人ホテルの運営にも携わり、事業は全国にも展開していった。
「人材不足の世の中でも、無人ホテルなら最低限の従業員数で人流を生み出すことができます。今後は都市部だけではなく、地方でも事業を展開していきたいと考えています。民泊事業はインバウンド需要に応えるだけではなく、空き家問題の解決にもつながるでしょう。この仕事を通して僕は、先人が残してくれた北海道や日本の魅力を後世に残していきたいと考えています」

株式会社MASSIVE SAPPORO

2010年、北海道初のシェアハウス事業を担う企業として札幌市で創業。2011年「BUIE宮の森」の開業を皮切りに、札幌市、小樽市などを拠点にシェアハウスをオープン。2015年には民泊運用代行事業「MASSIVE SAPPORO HOST」、2019年には無人ホテル「UCHI」1号店を開業。函館市・旭川市・帯広市など道内各地の他、全国に事業を展開している。
北海道札幌市中央区北5条西17丁目4-8 ノースファインビル
TEL.011‐213‐9830
https://massivesapporo.com/
BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!

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