ショコラで多くの人を笑顔に。曽祖父から代々受け継がれる、洋菓子作りに懸ける思い。【株式会社マサール】
2025年6月16日 公開
北海道の代表的なチョコレート専門店・ショコラティエマサールを運営する株式会社マサール。2013年発売の「ショコラブラウニー」、2021年復刻の「フルヤのウインターキヤラメル」は人気商品でありながら、同社の転換期を支えてきた基幹商品だという。二代目代表取締役を務める古谷健さんに、洋菓子業界を志した経緯、社長就任のきっかけや今後の展望について伺った。
一生の仕事を求めて、広告業界から洋菓子の道へ。
古谷健さんは札幌市出身。古谷製菓株式会社の創業者である曽祖父・古谷辰四郎さん、株式会社マサールの創業者である父・勝さんと、洋菓子製造に携わる事業家ぞろいの家庭に生まれた。幼少期は甘いお菓子がいつでも食べられる環境で育ったという。
「古谷製菓が二代目である祖父の代で倒産し、お菓子作りを承継したいという思いで父が開いたのが、チョコレート専門店『ショコラティエマサール』です。“勝”の店だから“マサール”というのが当時小学校高学年だった僕にとってはとても恥ずかしくて、普段は極力店の前を通らないように気を付けていたのを覚えています(笑)」
その後、後継の道を意識することなく大学に進学した健さん。卒業後は大手広告代理店に就職。衛星放送の番組制作業務に携わっていた。
「会社員として勤めて10年がたつころ、自分自身の将来について改めて考えるようになりました。そんな中60歳を超えてもなおやりたいことに挑戦し、生き生きと仕事をしている父の姿がやけに輝いて見えたんです。自分も父親のような生き方をしていきたいと思い、2011年、勤めていた広告代理店を退職することを決意しました」
その後、健さんは洋菓子製造を一から学ぶため、一年間の武者修行に出た。フランス・パリを皮切りに、国内外問わず、名店と呼ばれる店を巡って多くの知識と経験を得たのだという。
「パリに拠点を置く『パティスリー・サダハル・アオキ・パリ』では2カ月間、製造工場でマカロンを作りながらその工程や作り手の思いについて学びました。帰国後は兵庫県の『パティシエ エス コヤマ』でも2カ月間、その後福岡の『フランス菓子16区』で3カ月間、朝から晩まで厨房に立ち、目の前で職人技に触れるなど、名パティスリーで数々の貴重な経験をさせていただきました」
「古谷製菓が二代目である祖父の代で倒産し、お菓子作りを承継したいという思いで父が開いたのが、チョコレート専門店『ショコラティエマサール』です。“勝”の店だから“マサール”というのが当時小学校高学年だった僕にとってはとても恥ずかしくて、普段は極力店の前を通らないように気を付けていたのを覚えています(笑)」
その後、後継の道を意識することなく大学に進学した健さん。卒業後は大手広告代理店に就職。衛星放送の番組制作業務に携わっていた。
「会社員として勤めて10年がたつころ、自分自身の将来について改めて考えるようになりました。そんな中60歳を超えてもなおやりたいことに挑戦し、生き生きと仕事をしている父の姿がやけに輝いて見えたんです。自分も父親のような生き方をしていきたいと思い、2011年、勤めていた広告代理店を退職することを決意しました」
その後、健さんは洋菓子製造を一から学ぶため、一年間の武者修行に出た。フランス・パリを皮切りに、国内外問わず、名店と呼ばれる店を巡って多くの知識と経験を得たのだという。
「パリに拠点を置く『パティスリー・サダハル・アオキ・パリ』では2カ月間、製造工場でマカロンを作りながらその工程や作り手の思いについて学びました。帰国後は兵庫県の『パティシエ エス コヤマ』でも2カ月間、その後福岡の『フランス菓子16区』で3カ月間、朝から晩まで厨房に立ち、目の前で職人技に触れるなど、名パティスリーで数々の貴重な経験をさせていただきました」
「ショコラブラウニー」が、赤字脱却の起爆剤に。
修行を経た健さんは2012年、満を持してマサールに入社する。しかし、そこにあったのは経営難で傾きかけた会社と、奔走する父の姿。かつて羨望したものとは懸け離れた世界が広がっていた。
「どうにかして会社を立て直そうと、まずは外部に委託していた製造を自社で行うことを決意しました。『北海道の素材と世界から選りすぐったカカオで、最高のショコラを作る』という創業時の思いに立ち返り、自分たちの手で商品を作ることから始めようと思ったんです」
試行錯誤の末2013年に発売されたのが、今や看板商品の「ショコラブラウニー」。これが赤字経営脱却の起爆剤にもなったのだという。
「経費削減に目を光らせていた僕は、ブラウニーの製造過程で出る切れ端を有効活用できないかと考えたんです。あえてブラウニーとは異なる食感を出そうと2時間半かけて二度焼きし、“カリッ”、“サクッ”とした食感に。更にフランス・ヴァローナ社と共に3年半かけて開発した、オリジナルチョコレートでコーティングしました」
中にはクルミがたっぷり。一口サイズのショコラブラウニーは、軽やかな歯触りととろけるようなチョコレート、季節ごとに変わる可愛らしいプリントも話題を呼び、たちまち人気商品となった。しかし業績の回復に歓喜する間もなく、またもや健さんに試練が襲う。
「どうにかして会社を立て直そうと、まずは外部に委託していた製造を自社で行うことを決意しました。『北海道の素材と世界から選りすぐったカカオで、最高のショコラを作る』という創業時の思いに立ち返り、自分たちの手で商品を作ることから始めようと思ったんです」
試行錯誤の末2013年に発売されたのが、今や看板商品の「ショコラブラウニー」。これが赤字経営脱却の起爆剤にもなったのだという。
「経費削減に目を光らせていた僕は、ブラウニーの製造過程で出る切れ端を有効活用できないかと考えたんです。あえてブラウニーとは異なる食感を出そうと2時間半かけて二度焼きし、“カリッ”、“サクッ”とした食感に。更にフランス・ヴァローナ社と共に3年半かけて開発した、オリジナルチョコレートでコーティングしました」
中にはクルミがたっぷり。一口サイズのショコラブラウニーは、軽やかな歯触りととろけるようなチョコレート、季節ごとに変わる可愛らしいプリントも話題を呼び、たちまち人気商品となった。しかし業績の回復に歓喜する間もなく、またもや健さんに試練が襲う。
ウインターキヤラメルを原点に、仏と北海道をつなぐ洋菓子店へ。
「2015年、これまで荒波を共に乗り越えてきた父が急逝しました。これを機に会社を後継する運びとなりましたが、突然のことで心の準備ができておらず、大きなプレッシャーも感じていました。そんな時、ふと『甘いものは人を笑顔にする』という、曽祖父の代から受け継がれてきた言葉を思い出したんです。“僕も父からのバトンを次につないでいかなければならない”。そんな使命感が、僕を経営者として奮い立たせてくれました」
2021年、健さんはかつて古谷製菓が製造していた「フルヤのウインターキヤラメル」を復刻させることを決めた。古谷家の原点であるキャラメルを、マサールのシンボルとして商品化したいという一心だった。販売当時の製造委託先は既になく、材料が書かれた程度のレシピを基に自分たちで作るしか方法がなかったというが、幸い古谷製菓OBメンバーの協力の下、どうにか発売にこぎつけた。
「多くの反響をいただいた中で、あるお客さまの声に胸が熱くなったのを覚えています。それは『スキーに行く時、いつも母がフルヤのウインターキヤラメルをポケットに入れてくれました。懐かしくて仏壇に供えています』という内容でした。甘いものは人を笑顔にするだけではなく、大切な人との思い出を呼び起こす力さえもあるのだと感じた瞬間でした」
今後は経営理念である「フランス菓子の伝統と北海道の風土の理想的なマリアージュを目指す」を目標に、道産素材にこだわったお菓子やパンを届けたいと語る健さん。
「会社として道内の農家さんや乳製品を加工する工場などへの視察を定期的に行っています。北海道で今一番おいしいものを、自らの足で探しに行くのが我々のやり方です。『ショコラブラウニー』同様、多くの方々に愛される商品作りと、高い品格を誇る洋菓子店になることを目指して、今後も成長を続けていきたいと考えています」
2021年、健さんはかつて古谷製菓が製造していた「フルヤのウインターキヤラメル」を復刻させることを決めた。古谷家の原点であるキャラメルを、マサールのシンボルとして商品化したいという一心だった。販売当時の製造委託先は既になく、材料が書かれた程度のレシピを基に自分たちで作るしか方法がなかったというが、幸い古谷製菓OBメンバーの協力の下、どうにか発売にこぎつけた。
「多くの反響をいただいた中で、あるお客さまの声に胸が熱くなったのを覚えています。それは『スキーに行く時、いつも母がフルヤのウインターキヤラメルをポケットに入れてくれました。懐かしくて仏壇に供えています』という内容でした。甘いものは人を笑顔にするだけではなく、大切な人との思い出を呼び起こす力さえもあるのだと感じた瞬間でした」
今後は経営理念である「フランス菓子の伝統と北海道の風土の理想的なマリアージュを目指す」を目標に、道産素材にこだわったお菓子やパンを届けたいと語る健さん。
「会社として道内の農家さんや乳製品を加工する工場などへの視察を定期的に行っています。北海道で今一番おいしいものを、自らの足で探しに行くのが我々のやり方です。『ショコラブラウニー』同様、多くの方々に愛される商品作りと、高い品格を誇る洋菓子店になることを目指して、今後も成長を続けていきたいと考えています」
株式会社マサール
1988年札幌市で創業し、チョコレート専門店「ショコラティエマサール」を運営。本店の他札幌三越店、大丸札幌店、COCONO SUSUKINO店、新千歳空港内2店舗を展開。看板商品である「ショコラブラウニー」は、2017年、全国菓子大博覧会最高賞・名誉総裁賞を受賞。

BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
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