注目企業のトップに聞くin北海道 室蘭だからこそ、大きな「夢」を動かせると地域に伝え続けたい。【株式会社 電材重機】

2025年4月21日 公開

室蘭市で「世界企業」とも言うべき存在感を放つ企業がある。1972年(昭和47年)創業のクレーン会社、株式会社電材重機だ。国内28拠点、海外拠点は15拠点、連結従業員数は1200人以上に及ぶDENZAIグループの中核として、国内はおろかアジア最大級の規模へと成長を続けている。同社代表取締役社長の上村正人さんに、成長の契機となった出来事や、地元・室蘭への地域貢献活動について話を伺った。
代表取締役/上村正人さん
1980年生まれ。苫小牧工業高校卒業後、2019年に電材重機に入社し営業職で実績を積む。副社長を経て2021年に代表取締役社長に就任。ホールディングスであるDENZAI株式会社の会長職の他、地域貢献を目的に立ち上げられた「一般社団法人MANTEN PROJECT」の代表を務める。

急成長の鍵は風力発電とM&A。

電材重機は1972年(昭和47年)、電柱運搬を事業として立ち上げられた企業。クレーンを導入して以降は室蘭市内の製鉄所やプラント構内での資材運搬や公共建設事業で実績を積み上げ事業を拡大していった。長らく地場の中小企業であった同社に、転機が訪れたのは15年前のこと。
「陸上風力発電の建設に用いる全長190メートル、1200トン級の超大型クレーンを購入したことが大きな転機になりました。15億円以上という非常に高額な設備投資ではあったものの、当時は世界最大クラスで日本国内でまだ導入されていなかった機材のため、需要を見越して意を決して投資しました。これが呼び水となり、当社に多くの仕事を運んできてくれたんです」
更に同社を「世界企業」まで押し上げるほどの契機となったのが積極的なM&Aだ。クレーン業界は中小規模の会社が全国に点在しているという特性があるため、M&Aは買い手にとって拠点と設備を同時にそろえられる合理的な選択肢となる。また売り手側は高齢化や人材不足、後継不足といった課題を抱えているケースが多いため、双方にメリットが生じるのだという。同社は国内にとどまらず、海外においても積極的なM&Aを拡げ、グループ化していった。
「2017年にODA(政府開発援助)への参画としてバングラデシュへと赴き、翌年同国に拠点を設立したことを皮切りに、台湾、シンガポール、韓国、グアム…と拡大していきました。脱炭素化の推進により世界各地で風力発電設備が建てられており、この先々も大きな需要を見据えています」

地域貢献も欠かさず「満天花火」を主導。

「世界のDENZAI」として着実な歩みを進める一方、上村社長は地元・室蘭への貢献も欠かさず行っている。中でも過去最大級のイベントとなるのが、今年9月6日に開催予定の「室蘭満天花火 2025」だ。花火の打ち上げ本数は国内最大級の約3万発。人気アーティストやお笑い芸人を呼んだライブを開催する他、地元グルメも一堂に集う大規模なイベントを予定している。
「2年ほど前に社外取締役を務める室蘭民報社で、同紙の80周年イベントを企画したのがきっかけです。せっかくやるなら道内最大級、いや日本でも最大級の花火大会にしようと話を膨らませ、経済団体で交流のあった地元企業の経営者たちへ次々と声を掛けていきました」
今年1月には実行委員会を「一般社団法人MANTEN PROJECT」として法人化し、上村さん自らが代表に就任。2021年から道内各地で開催しているフェス「FEELD GOOD FES北海道」をはじめとする数々のイベントに携わってきた圓子勅将(まるこ・ときまさ)さんも巻き込み、チケット販売や協賛金の募集に自らも奔走している。
「地元企業の社長たちに声を掛けると『待ってました』とばかりに良い反応をいただき、想定していた以上に多くの協賛金をいただいています。『室蘭に貢献したいけど、何をして良いのか分からなかった』という方が多いようです。日本企業の内部留保は国家予算を超える数百兆円以上と言われていますが、蓄えた資金の使い道に悩んでいる企業も多いはず。私たちの行動を通じて、せっかく使うなら地元に、というムーブメントが全国で起きることを期待しています」

「室蘭だからこそ」をドーンと示したい。

「MANTEN PROJECT」は花火大会だけにとどまらず、将来もさまざまな地域貢献活動を見越しているという。既にプロジェクトの第二段として、地域の全小学生に通学用のヘルメットをプレゼントするためのクラウドファンディングも実施中だ。
「2024年に登別市の小学生が横断歩道で事故に遭い、大けがを負ったという出来事があり、大きな衝撃を受けました。北海道は車社会である一方、ヘルメットを被る文化が普及していない地域です。子どもたちの命を守るためにヘルメット着用を常識化し、地域全体に交通安全の意識を持ってもらいたいと企画を実施することにしました」
上村さんはプロジェクトの目的について「あくまで花火は始まりに過ぎません」と強調する。伝えたいのは、愛する地域への誇りと夢だ。
「当グループはこの地域だからこそ成長してきた企業ですから、地域貢献は会社としての責務に他なりません。全国の地方と同じく、室蘭も深刻な過疎化や高齢化が進んでいます。『ここには何もない』と諦め、都会へ行く若者も少なくありません。しかし、私たちDENZAIグループがこれほど大きな会社に成長できたのと同じように、すべては自らの行動次第で変革を起こすことが可能なはずです。『むしろ室蘭だからこそできることがある』と、地元を誇りに思ってほしいんです。その希望を、まずは満天の夜空にドーンと打ち上げたいと考えています」

株式会社電材重機

1972年(昭和47年)、室蘭市にて設立。電柱運搬の事業に端を発し、クレーンのリース事業を開始。近年は積極的な設備投資やM&Aで経営を急拡大。国内28拠点、海外拠点は15拠点、連結従業員数は1200人以上に及び、アジア最大級のクレーン企業グループ「DENZAIグループ」の中核を担っている。
北海道室蘭市大沢町1丁目2番8号
TEL.0143-44-5174
https://www.denzai.group/

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