昆虫食を売る「自販機ランド」。誰もやらないアイデアで〝ムシできない〟問題の解決を。
2022年5月30日 公開
安売りではなく、付加価値に活路を見いだす。
氷室さんの父親は、お土産の企画や卸売を行う会社の経営者。主に観光地向けのオルゴールやガラス細工を手掛け、80年代にはヒット商品も生み出した人物です。氷室さんはそんな父親の背中を追い、更なる事業拡大をめざして高校卒業後に中国へ2年間留学。帰国後は通訳や輸入担当として経験を積んできたと言います。
「父は薄利多売が得意で、徹底したコストダウンで事業を拡大してきました。一方、僕は安売りで商品が余るのはもったいないと常々思い、更に価格競争が進むと事業が続かないのではという懸念からも、別なやり方を模索してきたんです」
そうした思いから2005年、30歳のころに独立。当初は父親と同じくガラス細工やオルゴールを販売していましたが、その戦略は親子で真逆だったと振り返ります。
「ガラス製品に名入れのサービスをしたり、オルゴールは曲を選べるようにしたりと付加価値を高め、当時流行し始めたECサイトで5000円から1万円で販売したんです。この事業が軌道に乗り、時には月100万円以上もの売上を記録するほど成長しました」
誰もやろうとしないユニークなアイデアを実践。
「誰もやったことがないアイデアを実現したくて、鍋やカレー、ドレッシングなど色んな食べ物を青くしてみました。でも9割は失敗、ヒットしたのは1割もありません。今思えば僕の仕事は『誰もやったことがない』じゃなくて『誰もやろうと思わない』ことばかりなんですよね(笑)」
2019年、氷室さんは主力であるオルゴール販売事業からの撤退を決断。10年という節目を迎えた一方、取引先の倒産が引き金となりました。次のビジネスを探している時に飛び込んできたのが、昆虫食について書かれた記事だったといいます。
「正直、はじめは『ゾンラーメン』に次ぐグロテスクな食材探しの一環だったんです。しかし、近い将来人口増によって世界中が深刻な食糧難に陥ること、豚や牛など家畜の成育が追いつかず、人類がタンパク質不足になってしまうことを知りました。その解決方法が昆虫食、中でもコオロギがあらゆる面で優れていると知り、衝撃を受けたんです」
実はコオロギは雑食のため、人間が廃棄した食物を与えて育てることが可能。更に成虫になるまでの早さも約1、2カ月と短く、生育に必要な温室効果ガスも豚や牛に比べてごくわずか。加えて栄養価も高く、高タンパク低脂肪と、まさに革新的な食材なのだそうです。
「同時期に新型コロナウイルスの流行が始まり、無人販売が注目されていたんです。自販機なら人と接触せず、おまけに誰でも手軽に買えるという面に着目して『自販機ランド』を設立しました。看板商品として昆虫食を売ることに決めたんです」
今は罰ゲームでも、未来のために知ってほしい。
「近年は無印良品が『コオロギせんべい』を販売するなど、昆虫食の認知が徐々に広がってきています。現在は『なぜ地球問題の解決につながるの?』ということを知ってもらう段階にあると思うんです。啓発が拡大すると大手企業も参入して、もっと安価での販売も可能になります。そのために今は手段を選ばず、たとえ〝罰ゲーム〟でも昆虫食について知ってほしいというのが僕の考えです」
現在は市内4カ所に昆虫食の自販機を設置し、その範囲も拡大中。月間1000食を売り上げています。次なる目標は、北海道を昆虫食の生産地にすることなのだとか。既に農家に掛け合い、ビニールハウスでのコオロギ生産を始めているといいます。
「SDGsや環境問題の話って、正直言うとつまらなくなりがちですよね。でも幸い『昆虫食』って言うと良くも悪くもみんなが反応します(笑)。僕の事業をきっかけに、地球環境やSDGsについて少しでも興味を持ってくれたら、きっといい未来が築けると信じているんです」。
有限会社ハシエンダインターナショナル
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