障がいの有無を越えて、 共に店をつくる 「MUN'S DOUGHNUT」
2026年4月13日 公開

きっかけとなったのは
「守るべき」という固定観念。
西さんのご出身は札幌。元々福祉とはかかわりがあったわけではなく、学生時代は法律を専攻していたとか。
「『働く』を考えるのが好きで、将来は社会保険労務士を目指して勉強をしたり、法律事務所でアルバイトをしていたんですけど、国家試験に落ちてしまって…。これからどうしようかな、という時に縁あって紹介を受けたのが、障がいを持つ方々のケアやサポートに取り組む病院での事務職の仕事でした。見学に訪れてみると、働くみなさんは温かくて『誰と働くか』で職場を選ぶならこの場所だと思ったんです」
福祉の世界に飛び込んで気付いたのが、社会が「障がい」という言葉に掛けていた「可愛そう」「守るべき」というフィルターでした。それを痛感したのが2021年に開催した、障がいのある人の生活を描いた写真展での出来事です。
「たくさんの方にご来場をいただいてうれしい反面、皆さんが障がいのある方を『社会が守っていくべき存在』ととらえていることに違和感を抱きました。ドライに聞こえるかもしれませんが、日ごろ接している私としては、障がいを持つ人はもっと普通に働けるはずですし、彼ら自身も世の中に貢献することを望んでいると感じていたからです。私たち健常者が抱く『保護されるべき』というイメージのせいで、むしろ彼らの可能性を狭めているのではないか…そんな考えから、彼らが病院や施設の場を飛び出して、私が目指す店で、一人のスタッフとして一緒に働けたらと思ったんです」
「福祉」や「支援」は
あえて掲げない。
「でも一番の理由は、ドーナツが日常的な食べ物であることです。私たちのスタイルを体現する場所は、高級なケーキ屋さんのような特別な日に行く場所じゃなくて、隣のおばあちゃんがふらっと立ち寄れるような日常的なお店でなければ意味がないと考えていました。」
2022年から病院の敷地で営業を開始した「ムンズドーナツ」。次第にイベントやポップアップでの出展も増えていき、翌年には職場の同僚と共に「株式会社TSUKAM」を起業。2025年9月には手稲区に念願の実店舗をオープンしました。
「『支援』や『福祉』という言葉は、イベント出展時もお店にもあえてお客様に見える形で掲げず、スタッフから説明もしていません。私たちが目指すのは、シンプルにおいしいドーナツ屋であって、就労の場づくりでも福祉でもないからです。『誰も排除しない店をつくる』というコンセプトをあえて大々的に掲げていないのも、お店がまちにとって当たり前の存在でありたいという考えからです」
札幌10区すべてに
おいしいドーナツ屋として。
「初めこそ『障害のある方が頑張っている』という目線の方もいたかもしれませんが、今は私が目指していた理想の通り、誰に対してもフラットに接してくれる方が増えたと感じています。またスタッフもそれぞれの役割を担いながら、生き生きと、何よりみんな元気に働いているのがうれしいです。私自身、これまで色んなドーナツ屋さんを回っていましたが、ウチほどスタッフが元気なお店はないと思います」
現在、店舗で働くスタッフ8人のうち障がいを持つスタッフは4名ほど。「どんな病気ですか?」との質問には「実はみんなの病名をはっきりと知らないんです」と西さんは苦笑します。
「もちろん、どんな配慮が必要かは、ご家族や本人と話し合って決めます。ただ、働く上で大切なのは彼らがごく当たり前に自分の持つ力でお客様に価値を与えることだと考えているからです」
最後にこれからの目標を伺うと、こう答えてくれました。
「私たちが根源に掲げる『誰も排除されない店づくり』を社会へと広げるためには、まず札幌の10区すべてに『おいしいドーナツ屋さん』としてお店を展開することが必要だと考えています」
MUN'S DOUGHNUT 手稲店
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