小樽運河のシンボル「旧北海製罐第3倉庫」魅力ある街づくりに向けて新たなスタート
2024年4月8日 公開
道内外はもとより世界各国から観光客が訪れる街、小樽。築100年となる運河沿いの建物「旧北海製罐第3倉庫」は解体の危機を乗り越え小樽の未来を切り拓く新しい存在としての道を歩み始めています。倉庫存続への議論を通じて誕生し利活用に取り組む「NPO法人 OTARU CREATIVE PLUS」理事の白鳥陽子さんにお話を伺いました。
「小樽の原風景」にある築100年の建物に解体の危機
小樽運河の傍らに立ち、運河と共に「小樽の顔」とも言える旧北海製罐第3倉庫(港町4)。小樽市の歴史的建造物に指定され、地元の人々にとっても長年親しんできた大切な建物です。運河完成翌年の1924(大正13年)に建設され、今年で100年を迎えます。
老朽化を理由に、所有者の北海製罐株式会社が解体を決めたのは2020年のこと。相談を受けた小樽市では解体までに一年間の猶予を求め、倉庫の今後についての議論を行うことにしました。市民からは保存を願う多くの声が寄せられましたが、費用や今後の活用方法など、保存のためにはさまざまな問題を乗り越えなければなりません。市の呼び掛けに応じて小樽商工会議所と小樽観光協会が主体となり、建築や文化財の専門家、町づくり団体、小樽市、北海製罐関係者などが参加して、21年1月に立ち上げられたのが「第3倉庫活用ミーティング」。白鳥さんが参加を決めたのは、周辺の事業者と「KITAUNGA PROJECT」を立ち上げたり、運河に面した旧小樽倉庫で地域ブランド「小樽百貨UNGA←(プラス)」のプロデューサーを務めるなどの縁からだったそうです。
「座長の駒木定正さんは建築史家で、小樽運河保存運動に深くかかわり、数多くの歴史的建造物が残る小樽の魅力を誰よりも知っている方。ですが、残したほうが良いという意見に偏らずに幅広い意見を聞き取り、建物の価値や状態、地域の状況、活用上の法規制なども総合的に判断することを大切にされていました」
老朽化を理由に、所有者の北海製罐株式会社が解体を決めたのは2020年のこと。相談を受けた小樽市では解体までに一年間の猶予を求め、倉庫の今後についての議論を行うことにしました。市民からは保存を願う多くの声が寄せられましたが、費用や今後の活用方法など、保存のためにはさまざまな問題を乗り越えなければなりません。市の呼び掛けに応じて小樽商工会議所と小樽観光協会が主体となり、建築や文化財の専門家、町づくり団体、小樽市、北海製罐関係者などが参加して、21年1月に立ち上げられたのが「第3倉庫活用ミーティング」。白鳥さんが参加を決めたのは、周辺の事業者と「KITAUNGA PROJECT」を立ち上げたり、運河に面した旧小樽倉庫で地域ブランド「小樽百貨UNGA←(プラス)」のプロデューサーを務めるなどの縁からだったそうです。
「座長の駒木定正さんは建築史家で、小樽運河保存運動に深くかかわり、数多くの歴史的建造物が残る小樽の魅力を誰よりも知っている方。ですが、残したほうが良いという意見に偏らずに幅広い意見を聞き取り、建物の価値や状態、地域の状況、活用上の法規制なども総合的に判断することを大切にされていました」
単に「残す・使う」ではない未来に向けた街づくり
建物の保存以前に、劣化や耐震性能の検査を行うだけでも多額の費用が必要なのが現実。主に建物検査の費用調達を目的に募ったガバメント・クラウドファンディングでは、短期間で目標の倍以上の寄付金が集まったそう。建物への関心の高さが数字となって表れたこと、同ミーティングがまとめた利活用へのビジョンなどを受けて、市は「倉庫は保存」の方向を決定。21年12月、旧北海製罐第3倉庫は小樽市に無償譲渡されることとなったのです。
こうして「第3倉庫活用ミーティング」をもとに、倉庫利活用を軸にした小樽の街づくり推進を目標に誕生したのが「NPO法人 OTARU CREATIVE PLUS」(以下OCプラス)です。
「私たちが目指す第3倉庫の保全・活用とは、単に建築物を残して使うということではありません。北運河や第3埠頭などの周辺エリアとの調和を図りながら、暮らす人も訪れる人も小樽の魅力を実感できずっと住みたくなるような『小樽の個性が息づく街づくり』を目指しているのです」
OCプラスでは「小樽の原風景、北運河をスローに楽しむ。」をテーマに、かつての運河の面影を色濃く残す北運河エリアを紹介するマップを作成した他、小樽に興味を持つ人なら誰でも参加しアイデアを発表できる「名前はまだない会議(まだ会)」を定期的に開催。小樽をどんな街にして、どんなことをしたいかなどの意見交流を行っています。
こうして「第3倉庫活用ミーティング」をもとに、倉庫利活用を軸にした小樽の街づくり推進を目標に誕生したのが「NPO法人 OTARU CREATIVE PLUS」(以下OCプラス)です。
「私たちが目指す第3倉庫の保全・活用とは、単に建築物を残して使うということではありません。北運河や第3埠頭などの周辺エリアとの調和を図りながら、暮らす人も訪れる人も小樽の魅力を実感できずっと住みたくなるような『小樽の個性が息づく街づくり』を目指しているのです」
OCプラスでは「小樽の原風景、北運河をスローに楽しむ。」をテーマに、かつての運河の面影を色濃く残す北運河エリアを紹介するマップを作成した他、小樽に興味を持つ人なら誰でも参加しアイデアを発表できる「名前はまだない会議(まだ会)」を定期的に開催。小樽をどんな街にして、どんなことをしたいかなどの意見交流を行っています。
魅力ある建物を軸に地域と共に価値を共創
改修工事を始め多くの準備を経て、昨年11月、第3倉庫で「小樽DEPARTMENT」と共催した「マルシェ」は、3日間で4000人以上が来場し大きな話題となりました。ちなみに「小樽DEPARTMENT」とは白鳥さんが発起人の一人となり、過去にはいずれも歴史的建造物である旧小樽商工会議所、旧三井銀行小樽支店を会場に開催されたイベントです。小樽や近郊で物作りに取り組む作家や飲食店などが出店者となり、訪れた人と直接交流しながらたくさんの縁や出会いを紡ぎ出してきました。
「イベント準備で内部に入った時、建物内は予想以上にきれいで北海製罐の皆さんがこの建物を大切に使われてきたことを実感しました。イベント時のアンケートでは建物の中に入れた喜びや建物から運河を見下ろす景観への感動が数多く寄せられ、建物の魅力や吸引力、ポテンシャルの高さを改めて感じました。第3倉庫の利活用を軸に市民の皆さんにも積極的に携わっていただき、今後も小樽にあるさまざまな資源を掘り起こしてつなぎ、新しい価値を創出しながら街づくりを進めたいと思っています。皆さんの『OCプラス』や『まだ会』へご参加も大歓迎。お待ちしています!」
「イベント準備で内部に入った時、建物内は予想以上にきれいで北海製罐の皆さんがこの建物を大切に使われてきたことを実感しました。イベント時のアンケートでは建物の中に入れた喜びや建物から運河を見下ろす景観への感動が数多く寄せられ、建物の魅力や吸引力、ポテンシャルの高さを改めて感じました。第3倉庫の利活用を軸に市民の皆さんにも積極的に携わっていただき、今後も小樽にあるさまざまな資源を掘り起こしてつなぎ、新しい価値を創出しながら街づくりを進めたいと思っています。皆さんの『OCプラス』や『まだ会』へご参加も大歓迎。お待ちしています!」
NPO法人 OTARU CREATIVE PLUS
旧北海製罐第3倉庫の利活用を主目的に2022年に誕生。小樽に眠る資源(ヒト・モノ・コト)をつなぎ混ぜ合わせながら、この街にしかない価値を共創から生み出し「文化と経済の両輪で未来へ進むまちづくり」推進を目指す。
北海道ビジネスニュース
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