ヒントは北海道のソウルフード!未利用魚カジカのだしで標津町の地域振興を。【株式会社しゃけを】
2025年10月27日 公開
道東の標津町を拠点に、北海道の地域振興を目指す株式会社しゃけを。未利用魚であるカジカを使った「しゃけをのTHE北海道だし」をはじめ、地元の産業を支えるための商品開発で注目を浴びている。代表取締役の椙田圭輔さんに、起業の経緯や今後の展望について伺った。
包装資材メーカーを経て、
地域振興事業の糸口をつかむ。
標津町出身。幼少期から釣りが好きで、自然あふれる環境で育ったという椙田さん。博物館学芸員であった両親の影響で、地元の歴史や文化などに触れる機会も多かったと振り返る。
「父や母に手を引かれ野鳥や植物の調査のために山に出掛けたり、遺跡の発掘調査について行ったりすることもありました。さまざまな場所を巡り歩いたので、標津町はもちろん北海道への郷土愛は自然に芽生えていったように思います」
中学卒業後は標津町を離れて江別市の立命館慶祥高等学校に入学し、その後は立命館大学政策科学部(京都。のち大阪に移転)に進学。アメリカンフットボール選手として活躍する傍ら、地域づくりや環境政策、社会課題の分析と解決方法について広く学んだ。卒業後は自然環境の保持・保全にかかわる仕事を志望するもかなわず、包装資材メーカーの営業として就職。思い描いた進路ではなかったものの、椙田さんは目の前の仕事に真摯に向き合い営業成績は好調だったという。
「既存のものを売り込むだけではなく、企画・デザイン段階から携わりこれまでになかったパッケージやラベルの提案をすることで新規顧客を獲得していきました。菓子メーカーとの取引が多かったことから、次第に食品業界に引かれて転職を考えるようになったのは入社3年目のことです」
たまたま取引先の観光菓子メーカー・寿スピリッツ株式会社(鳥取県)に声を掛けられたことで、椙田さんは2007年に転職を果たす。その後の足掛かりとなったのが、関連会社で取り組んでいた徳島県産タデ藍を使った食品開発事業だった。
「藍っていうと誰もが染料をイメージしますよね。その藍を食品として売り出そうという事業だったんです。『藍チーズラングドシャ』をはじめ、青い色を付けたお菓子やお茶、青汁など6アイテムを開発して発売したのですが、商品と共に『藍って食べられるんだ』という認識が広まることで、藍に新たな価値が生まれ、徳島県での藍の生産量も増えていったんです」
「父や母に手を引かれ野鳥や植物の調査のために山に出掛けたり、遺跡の発掘調査について行ったりすることもありました。さまざまな場所を巡り歩いたので、標津町はもちろん北海道への郷土愛は自然に芽生えていったように思います」
中学卒業後は標津町を離れて江別市の立命館慶祥高等学校に入学し、その後は立命館大学政策科学部(京都。のち大阪に移転)に進学。アメリカンフットボール選手として活躍する傍ら、地域づくりや環境政策、社会課題の分析と解決方法について広く学んだ。卒業後は自然環境の保持・保全にかかわる仕事を志望するもかなわず、包装資材メーカーの営業として就職。思い描いた進路ではなかったものの、椙田さんは目の前の仕事に真摯に向き合い営業成績は好調だったという。
「既存のものを売り込むだけではなく、企画・デザイン段階から携わりこれまでになかったパッケージやラベルの提案をすることで新規顧客を獲得していきました。菓子メーカーとの取引が多かったことから、次第に食品業界に引かれて転職を考えるようになったのは入社3年目のことです」
たまたま取引先の観光菓子メーカー・寿スピリッツ株式会社(鳥取県)に声を掛けられたことで、椙田さんは2007年に転職を果たす。その後の足掛かりとなったのが、関連会社で取り組んでいた徳島県産タデ藍を使った食品開発事業だった。
「藍っていうと誰もが染料をイメージしますよね。その藍を食品として売り出そうという事業だったんです。『藍チーズラングドシャ』をはじめ、青い色を付けたお菓子やお茶、青汁など6アイテムを開発して発売したのですが、商品と共に『藍って食べられるんだ』という認識が広まることで、藍に新たな価値が生まれ、徳島県での藍の生産量も増えていったんです」
愛郷の標津町へUターン
未利用魚を“魅了魚”に。
藍を利用した食品開発を通じて「その土地の素材を新たな価値のある商品として生み出すことができれば、地域活性化につながる」と体感した椙田さん。2022年、地域振興事業を立ち上げようと帰郷を決意。事業立ち上げにあたり、自身が一番力を注ぎこめる場所として真っ先に思い浮かんだのは、やはり愛郷の標津町だった。
「まずは市場で値段が付かず、未利用魚として捨てられていたカジカを使い『しゃけをのTHE北海道だし』を開発しました。アイデアのきっかけになったのは、北海道のソウルフードである『カジカ汁』と、九州のある会社がパックだしで全国展開していたことです。九州と同じく豊かな原料に恵まれた北海道だからこその、新たな商品開発ができると構想していたんです」
白身魚の中でもうまみ成分が特に豊富なカジカは内臓を取り除き、骨ごとプレスしたあとに粉砕。鮭節や粉末状の昆布、椎茸を加えることにより、栄養価が高いだけではなく、うまみの相乗効果でより味に深みが出るように開発されている。
「カジカを骨ごとプレスするというのは、寿スピリッツのグループ会社で豆をプレスして商品にしていたことを基に思い付きました。ジッパー付きのパッケージに封入したのも、持ち運びや配送がしやすいように…という元包装資材メーカー社員としてのこだわりからです。また地元漁師集団、波心会(はっしんかい)の協力も欠かせませんでした。彼らの『海の豊かさ、魚の命を後世に繋ぐ』という思いにも共感して、加工段階でも協力をいただいたんです。これまでの経験や人脈を総動員して今の事業に取り組んでいます」
「まずは市場で値段が付かず、未利用魚として捨てられていたカジカを使い『しゃけをのTHE北海道だし』を開発しました。アイデアのきっかけになったのは、北海道のソウルフードである『カジカ汁』と、九州のある会社がパックだしで全国展開していたことです。九州と同じく豊かな原料に恵まれた北海道だからこその、新たな商品開発ができると構想していたんです」
白身魚の中でもうまみ成分が特に豊富なカジカは内臓を取り除き、骨ごとプレスしたあとに粉砕。鮭節や粉末状の昆布、椎茸を加えることにより、栄養価が高いだけではなく、うまみの相乗効果でより味に深みが出るように開発されている。
「カジカを骨ごとプレスするというのは、寿スピリッツのグループ会社で豆をプレスして商品にしていたことを基に思い付きました。ジッパー付きのパッケージに封入したのも、持ち運びや配送がしやすいように…という元包装資材メーカー社員としてのこだわりからです。また地元漁師集団、波心会(はっしんかい)の協力も欠かせませんでした。彼らの『海の豊かさ、魚の命を後世に繋ぐ』という思いにも共感して、加工段階でも協力をいただいたんです。これまでの経験や人脈を総動員して今の事業に取り組んでいます」
目指すは“ローカルゼブラ”
標津町を挑戦し続ける町に。
2024年には「流氷グミ」、2025年にはだしを利用した「しゃけをかき」や北海道をかたどった「北海道グミ」を次々に発売した。中でもミルクソフトクリーム味の「北海道グミ」は、その年の北海道お土産グランプリにも輝き、国内外の観光客に好評だったという。
「標津町とグミに何の関係があるんだと思われるかもしれませんが、北海道を活性化させたいという思いで開発したという点では、だし商品と変わりはありません。だしとは違う、若者向けの商品開発にも注力していきたいので、今後も『北海道グミ』はシリーズ化して色々な味の商品を展開していきたいと考えています」
椙田さんがこれから目指していくのは“ローカルゼブラ企業”だ。
「地域課題をビジネスで解決しながら、社会的な変革と収益性の両立を目指す企業モデルです。地域住民や事業者、行政などの協力も得ながら、特に町を挙げた六次産業化や観光事業に注力し、労働人口の受け皿にもなり得る企業として成長していきたいですね。実は、僕が新たな事業を始めたことが刺激になったのか、町民からも新規事業立ち上げに関する相談を受けたこともあります。標津町は小さな町ですが、新たなチャレンジの場が次々と生まれる町になるといいなと、大きな希望を抱いています」
「標津町とグミに何の関係があるんだと思われるかもしれませんが、北海道を活性化させたいという思いで開発したという点では、だし商品と変わりはありません。だしとは違う、若者向けの商品開発にも注力していきたいので、今後も『北海道グミ』はシリーズ化して色々な味の商品を展開していきたいと考えています」
椙田さんがこれから目指していくのは“ローカルゼブラ企業”だ。
「地域課題をビジネスで解決しながら、社会的な変革と収益性の両立を目指す企業モデルです。地域住民や事業者、行政などの協力も得ながら、特に町を挙げた六次産業化や観光事業に注力し、労働人口の受け皿にもなり得る企業として成長していきたいですね。実は、僕が新たな事業を始めたことが刺激になったのか、町民からも新規事業立ち上げに関する相談を受けたこともあります。標津町は小さな町ですが、新たなチャレンジの場が次々と生まれる町になるといいなと、大きな希望を抱いています」
株式会社しゃけを
2022年に標津町で創業。標津沿岸で捕れる未利用魚・カジカを使用した「しゃけをのTHE北海道だし」を皮切りに、「流氷グミ」「しゃけをかき」「北海道グミ」などの商品を次々に発売。六次産業化や観光事業を通して地域活性化を目指す。お土産グランプリに輝いた「北海道グミミルクソフトクリーム味」に続き「北海道グミメロンソフトクリーム味」が新発売。
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