「北海道を繁盛させたい」亡き父と歩んだ日々を胸に、建築事業を超えた地域貢献を。【ストアプロジェクト株式会社】
2025年7月21日 公開
商業施設をはじめ、公共施設、ホテル、オフィスなどの企画開発から設計・施工・運営までを手掛けるストアプロジェクト株式会社。同社が2016年に造った商業施設「EBRI」には、地域の素材や地元の職人技が光る商品・店舗が並び、日々にぎわいを見せている。地域貢献企業としての顔も併せ持つ同社の代表取締役、間宮なつきさんに、後継の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。
幼少期から芸術に親しみ建築デザインの道へ。
ご出身は札幌市。ストアプロジェクト株式会社の創業者・明雄さんのもとに、3姉妹の3女として生まれたなつきさん。幼少期にはクラシックバレエやピアノを習っていたというが、2人の姉たちとは別のことに挑戦したいと始めた陶芸が人生を切り開くきっかけになったと振り返る。
「陶芸で賞をもらったことを機に、物作りに興味を持つようになり、高校卒業後は多摩美術大学に進学して建築やデザインについて学びました。家具や庭園についての講義もあり、建物そのものだけでなく外部の環境まで総合的に学ぶことができました」
2005年、大学を卒業したなつきさんは東京の設計事務所に就職。次第に大型商業施設や美術館、デザイン性にこだわった住宅などさまざまな建物の設計・建築現場を統括する立場に。10年以上かけて複数社で経験するうちに、家業を継ぐのではなく、自らで事務所を立ち上げたいと考えるようになっていったという。
「ゆくゆくは会社を継いでほしいと言っていた父に、勘当を覚悟の上で恐る恐る意志を伝えました。すると返ってきたのは『ストアプロジェクトにも入社して、2社を兼業したらどうだ』という言葉です。私はその斬新な提案に驚きつつも、承諾することにしました」
そうして2014年、ストアプロジェクトに入社し、翌2015年には東京都に株式会社NOOMを新設。北海道では誰もが知る商業施設やスーパーマーケット、飲食店などジャンル・規模を問わずさまざまな建物の設計・建築に携わりながら、東京でも多くの建築物を手掛けていった。2週間おきに東京と札幌を行き来する多忙な日々は約4年間にわたって続いたが、それを楽しめるだけのバイタリティがあったという。
「陶芸で賞をもらったことを機に、物作りに興味を持つようになり、高校卒業後は多摩美術大学に進学して建築やデザインについて学びました。家具や庭園についての講義もあり、建物そのものだけでなく外部の環境まで総合的に学ぶことができました」
2005年、大学を卒業したなつきさんは東京の設計事務所に就職。次第に大型商業施設や美術館、デザイン性にこだわった住宅などさまざまな建物の設計・建築現場を統括する立場に。10年以上かけて複数社で経験するうちに、家業を継ぐのではなく、自らで事務所を立ち上げたいと考えるようになっていったという。
「ゆくゆくは会社を継いでほしいと言っていた父に、勘当を覚悟の上で恐る恐る意志を伝えました。すると返ってきたのは『ストアプロジェクトにも入社して、2社を兼業したらどうだ』という言葉です。私はその斬新な提案に驚きつつも、承諾することにしました」
そうして2014年、ストアプロジェクトに入社し、翌2015年には東京都に株式会社NOOMを新設。北海道では誰もが知る商業施設やスーパーマーケット、飲食店などジャンル・規模を問わずさまざまな建物の設計・建築に携わりながら、東京でも多くの建築物を手掛けていった。2週間おきに東京と札幌を行き来する多忙な日々は約4年間にわたって続いたが、それを楽しめるだけのバイタリティがあったという。
建築会社から地域貢献へ。父との日々を胸に経営に挑む。
元々「繁盛店をつくる」をミッションとして掲げていた同社だが、なつきさんの入社以後は建築の枠組みを超え、まちのにぎわいを生み出す地域貢献企業へと進化を遂げていった。2016年には江別市のレンガ工場跡地に自社商業施設「EBRI」を開業。地元の素材や職人の技を生かした商品や空間作りが話題になり、飲食店や雑貨店、イベントスペースは多くの人でにぎわった。しかし、そんな矢先で父・明雄さんにがんが見つかったという。
「私は先のことを考えてNOOMの子会社化とストアプロジェクトの承継を行い、北海道を拠点とすることに決めました。こうして2020年、正式に代表取締役として就任したのですが、引継ぎを終えないうちに父の容体が悪化してしまったんです」
当時は経営者の道を歩むことへの戸惑いやプレッシャーでいっぱいになるあまり、病床の明雄さんに「私でいいの?」と不安をこぼしたというなつきさん。その時、最期の力を振り絞るようにして明雄さんが発した「お前がやれ」という言葉が、今でも大きな支えになっているという。
「父は通りすがりの建物を見ては突然『この建物を建て替えるとしたらどうする?企画を考えろ』と言い出すような人でした。もちろん実際の仕事にはならないのですが、私は言われる度に企画書を提出していたんです。今思えば父がそれを褒めてくれたからこそ自信が付いたし、目に付いた建物や土地を見ては活用方法を考える癖も付きました。父が亡くなってからは、共に仕事に打ち込んできた日々を思い返しています」
「私は先のことを考えてNOOMの子会社化とストアプロジェクトの承継を行い、北海道を拠点とすることに決めました。こうして2020年、正式に代表取締役として就任したのですが、引継ぎを終えないうちに父の容体が悪化してしまったんです」
当時は経営者の道を歩むことへの戸惑いやプレッシャーでいっぱいになるあまり、病床の明雄さんに「私でいいの?」と不安をこぼしたというなつきさん。その時、最期の力を振り絞るようにして明雄さんが発した「お前がやれ」という言葉が、今でも大きな支えになっているという。
「父は通りすがりの建物を見ては突然『この建物を建て替えるとしたらどうする?企画を考えろ』と言い出すような人でした。もちろん実際の仕事にはならないのですが、私は言われる度に企画書を提出していたんです。今思えば父がそれを褒めてくれたからこそ自信が付いたし、目に付いた建物や土地を見ては活用方法を考える癖も付きました。父が亡くなってからは、共に仕事に打ち込んできた日々を思い返しています」
「EBRI」の実績を自信に商業建築を超えた事業展開を。
2023年、ストアプロジェクトはEBRI内に新たなコンセプトストア「EBRI STORE」をオープン。地元のレンガ工場や、デザイナー・農家の方々にも協力を得て、同社が開発から携わった商品を販売している。
「商品の代わりにレンガをレジに持っていき、会計をするというユニークな仕組みを導入しているところも特徴です。江別市の土で作ったレンガを直接手に取ってもらうことで、『レンガのまち江別』をもっと知ってもらいたいというのが狙いで始めた試みです」
EBRI STOREには江別市の酒造好適米「彗星」を使用した日本酒「瑞穂のしずく」の酒かすを練り込んだパウンドケーキや、オリジナルブレンドコーヒー、グラノーラなどさまざまな商品が所狭しと並ぶ。なつきさんは今後も建築事業にとどまらず、新たな成長市場を開拓し、「北海道の誰かの繁盛につながる事業」を展開していきたいという。
「一つひとつの事業に妥協せず携わっていきたいと思う一方で、経営者としては寛大な心を持ち続けていたいですね。従業員一人ひとりを信頼して仕事を任せたい。万が一何かアクシデントが起こったとしても、心に余裕を持って冷静に対応したい。建築デザインと同様に、『余白』を生み出すことが統率者としてとても重要なことだと考えています」
「商品の代わりにレンガをレジに持っていき、会計をするというユニークな仕組みを導入しているところも特徴です。江別市の土で作ったレンガを直接手に取ってもらうことで、『レンガのまち江別』をもっと知ってもらいたいというのが狙いで始めた試みです」
EBRI STOREには江別市の酒造好適米「彗星」を使用した日本酒「瑞穂のしずく」の酒かすを練り込んだパウンドケーキや、オリジナルブレンドコーヒー、グラノーラなどさまざまな商品が所狭しと並ぶ。なつきさんは今後も建築事業にとどまらず、新たな成長市場を開拓し、「北海道の誰かの繁盛につながる事業」を展開していきたいという。
「一つひとつの事業に妥協せず携わっていきたいと思う一方で、経営者としては寛大な心を持ち続けていたいですね。従業員一人ひとりを信頼して仕事を任せたい。万が一何かアクシデントが起こったとしても、心に余裕を持って冷静に対応したい。建築デザインと同様に、『余白』を生み出すことが統率者としてとても重要なことだと考えています」
ストアプロジェクト株式会社
1977年札幌市で創業。「繁盛店をつくる」を使命として、土地開発から企画・設計・施行・運営と商業空間をワンストップでプロデュースしてきた。近年は公共施設やホテル、オフィスの建設やまちの再開発にも携わる。2016年に自社商業施設として建設した江別市「EBRI」は2024年グッドデザイン賞を受賞。

BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
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