北海道は、観光資源の宝島。アドベンチャートラベルで地域活性化を目指す。【株式会社北海道宝島旅行社】
2025年7月14日 公開
オーダーメイドの北海道旅行を企画・提案する株式会社北海道宝島旅行社。インバウンド需要が加速する昨今、北海道の暮らしやアクティビティを味わうことのできる世界でたった一つのオーダーメイドの旅行プランは、多くの外国人観光客から好評を得ている。代表取締役社長を務める鈴木宏一郎さんに、起業の経緯や現在の取り組み、今後の展望について伺った。
大学時代のツーリングで芽生えた北海道愛
福岡県出身。ボーイスカウト活動に打ち込んだことを除けばこれといった趣味もなく、移り気な性格がコンプレックスだったという鈴木さん。そんな鈴木さんが唯一、長年あこがれを抱き続けてきたのが北海道だ。大学時代にバイクで北海道を周遊したことが発端だったという。
「えりもの漁師さんや十勝の農家さんがとても優しくしてくださって、一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりしました。安宿に泊まりながらの貧乏旅行だったので、昆布干しや小豆拾いのアルバイトなんかもさせてもらったりして…大自然が広がる風景はもちろん、そこで体験するすべてのことが新鮮で、まるで言葉の通じる外国に来たようだと感じたのを覚えています」
いつかは北海道に移住したいと思うほどだった鈴木さんだが、大学卒業後は株式会社リクルートに就職。仙台・東京で求人情報誌の広告提案営業に携わっていた。ところが入社4年が経過した1993年、希望がかなって北海道支社への異動辞令が出る。
「異動して数年後、バブル崩壊の影響を受けて企業向けのサービスが停滞しました。とにかく仕事を生み出そうと、行政を巻き込んで移住促進を絡めた求人広告を提案したり、東京でIターン・Uターン就職フェアを開催したりと、地域を奔走する日々を送っていました。そんな中、明らかに過疎化の進んだ市町村と、それをどうにかして元気にしようとする地域の人々の姿を目の当たりにするうちに、自分も北海道のために仕事をしたいという思いが募っていきました」
「えりもの漁師さんや十勝の農家さんがとても優しくしてくださって、一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりしました。安宿に泊まりながらの貧乏旅行だったので、昆布干しや小豆拾いのアルバイトなんかもさせてもらったりして…大自然が広がる風景はもちろん、そこで体験するすべてのことが新鮮で、まるで言葉の通じる外国に来たようだと感じたのを覚えています」
いつかは北海道に移住したいと思うほどだった鈴木さんだが、大学卒業後は株式会社リクルートに就職。仙台・東京で求人情報誌の広告提案営業に携わっていた。ところが入社4年が経過した1993年、希望がかなって北海道支社への異動辞令が出る。
「異動して数年後、バブル崩壊の影響を受けて企業向けのサービスが停滞しました。とにかく仕事を生み出そうと、行政を巻き込んで移住促進を絡めた求人広告を提案したり、東京でIターン・Uターン就職フェアを開催したりと、地域を奔走する日々を送っていました。そんな中、明らかに過疎化の進んだ市町村と、それをどうにかして元気にしようとする地域の人々の姿を目の当たりにするうちに、自分も北海道のために仕事をしたいという思いが募っていきました」
39歳で移住を決意。苦労を重ねた3年間
再び異動で内地へ戻ることになった鈴木さんだが、北海道に貢献したいという意志は固かった。その後2005年、39歳で早期退職を決意。2年後の2007年に「北海道で外貨を稼ぐ」をミッションとして掲げ、観光事業を展開する株式会社北海道宝島旅行社を設立した。
「真っ先に思い浮かんだのは、アウトドアガイドと呼ばれる、北海道の屋外アクティビティをサポートする案内人の方々でした。アウトドアに特化したガイドがこれだけ多い地域は他にありません。きっと国内外から多くの需要があるだろうと思い、彼らと観光客とをつなぐための体験観光予約サイト『北海道体験』を立ち上げました」
当初は申し込みが殺到すると見込んでいたが、期待とは裏腹に閲覧者すら思うように増えない日々が続いた。少しでも集客を増やそうと電話での問い合わせ窓口を開設し、年中無休で対応したが結果にはつながらなかった。日中は全道のアウトドアガイドを訪ねて取材をし、夜はそれを記事にしてサイトに掲載。なかなか業績が上向かない日々が約3年もの間続いていたと振り返る。
「資金も底を尽きるころに転機になったのは、2010年に政府が打ち出した訪日外国人旅行促進キャンペーンです。北海道の自然や文化に興味がある外国人が想像以上に多いということを知るきっかけになり、『丁寧なヒアリングを基に、インバウンド向けにオーダーメイド北海道旅行を提供する』という現在のビジネススタイルが誕生しました。その後口コミでお客さまが増え、経営も少しずつ改善されていきました」
「真っ先に思い浮かんだのは、アウトドアガイドと呼ばれる、北海道の屋外アクティビティをサポートする案内人の方々でした。アウトドアに特化したガイドがこれだけ多い地域は他にありません。きっと国内外から多くの需要があるだろうと思い、彼らと観光客とをつなぐための体験観光予約サイト『北海道体験』を立ち上げました」
当初は申し込みが殺到すると見込んでいたが、期待とは裏腹に閲覧者すら思うように増えない日々が続いた。少しでも集客を増やそうと電話での問い合わせ窓口を開設し、年中無休で対応したが結果にはつながらなかった。日中は全道のアウトドアガイドを訪ねて取材をし、夜はそれを記事にしてサイトに掲載。なかなか業績が上向かない日々が約3年もの間続いていたと振り返る。
「資金も底を尽きるころに転機になったのは、2010年に政府が打ち出した訪日外国人旅行促進キャンペーンです。北海道の自然や文化に興味がある外国人が想像以上に多いということを知るきっかけになり、『丁寧なヒアリングを基に、インバウンド向けにオーダーメイド北海道旅行を提供する』という現在のビジネススタイルが誕生しました。その後口コミでお客さまが増え、経営も少しずつ改善されていきました」
アドベンチャートラベルで地域住民に活気と郷土愛を
同社の旅行プランは多彩で、個性的なものばかりだ。北海道の火山やアイヌ文化を紹介しながら山道をガイドして、下山後は地元の人との食事の場を提供したり、同年代の日本人との交流を楽しみたいという顧客を北海道大学の大学祭にお連れしたりと、自分で計画することはできない、世界にたった一つのオーダーメイドの旅行プランを企画しているという。
起業当初から一貫して提案しているのは、アクティビティを通じて体験者の内面に変化がもたらされるような旅のスタイル、現在では「アドベンチャートラベル」と呼ばれているものだ。こうした企画は観光する側のみならず、地域にも活気を生むという。
「観光客を受け入れると、漁村や農村の子どもたちが目を輝かせるんです。外国人観光客と交流する大人たちの姿や、地域の魅力を再発見することで、親の仕事をリスペクトする気持ちが芽生えるのだと思います。後継者不足問題などに少しでも良い影響を生み出せればと考えています」
近年は円安の影響もあり、北海道を訪れる旅行者は増加傾向だ。北海道宝島旅行社ではその対応のために英語版の体験予約サイト「AII Hokkaido」も新設。1dayツアーなどの小旅行を提案する機会を増やしていくという。
「北海道には、ガイドブックや旅行サイトには載っていない、地域に住む人でなければアクセスできない、そういう素晴らしい場所がたくさんある。まさに『宝の山』とも言えるその魅力を世界中の人々に伝えていきたいです。また、北海道経済を活性化させ、観光業に従事する人々が経済的に充足した暮らしができるよう、業界の地位向上に貢献する企業でありたいと思います」
起業当初から一貫して提案しているのは、アクティビティを通じて体験者の内面に変化がもたらされるような旅のスタイル、現在では「アドベンチャートラベル」と呼ばれているものだ。こうした企画は観光する側のみならず、地域にも活気を生むという。
「観光客を受け入れると、漁村や農村の子どもたちが目を輝かせるんです。外国人観光客と交流する大人たちの姿や、地域の魅力を再発見することで、親の仕事をリスペクトする気持ちが芽生えるのだと思います。後継者不足問題などに少しでも良い影響を生み出せればと考えています」
近年は円安の影響もあり、北海道を訪れる旅行者は増加傾向だ。北海道宝島旅行社ではその対応のために英語版の体験予約サイト「AII Hokkaido」も新設。1dayツアーなどの小旅行を提案する機会を増やしていくという。
「北海道には、ガイドブックや旅行サイトには載っていない、地域に住む人でなければアクセスできない、そういう素晴らしい場所がたくさんある。まさに『宝の山』とも言えるその魅力を世界中の人々に伝えていきたいです。また、北海道経済を活性化させ、観光業に従事する人々が経済的に充足した暮らしができるよう、業界の地位向上に貢献する企業でありたいと思います」
株式会社北海道宝島旅行社
地域支援を取り入れた観光業で北海道経済を豊かにしたいと、2007年札幌市で設立。北海道の自然環境や暮らしを生かしたオーダーメイド旅行の企画・提案の他、自治体向けの外国人観光客受け入れ支援事業などを展開。体験型観光プログラムの検索・予約サイト「北海道体験」「AII Hokkaido」も運営している。

BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
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