未経験から福祉業界で社長に。福祉をより豊かにするために海外にも挑戦していきたい。【株式会社W’s】
2025年6月9日 公開
2018年、工務店の障がい者福祉事業を基盤に設立された株式会社W’s(わっず)。業界未経験者である代表の中野恵美佳さんが、柔軟な視点でさまざまなサービスを事業化し、就労支援事業所やグループホームなどを複数運営してきた。そんな中野さんに、福祉の道に進んだ経緯や代表になったいきさつ、今後の展望について伺った。
大学卒業後も進路を模索。偶然から福祉の道へ。
東京都出身。学生時代、勉強は好きではなかったものの、数学だけは得意だったという中野さん。高校卒業後、当時は数学の試験だけで受験可能だった日本大学理工学部へ進学した。
「入学してから進路について考え始めました。漠然と“困っている人を助けたい”という思いはあったので、学業に励む傍ら不動産の相続コンサルティング会社でアルバイトをしていたのですが、結局他にやりたいことが見つからず、卒業後もそのままアルバイト先で働くことになりました」
不動産相続コンサルティング会社には3年勤め、その後は信託銀行や司法書士事務所で事務の仕事も経験した。社会に出た後も、中野さんは自らのやりたいことや進むべき道を模索し続けていたと振り返る。そんな中野さんに、思いがけず移住の話が浮上する。
「当時お付き合いしていた人がたまたま札幌へ転勤になったんです。もののはずみで転職活動を始めたところ、株式会社リクルート札幌支社への就職が決まり、あっという間に移住することになりました」
縁もゆかりもない北の大地で、中野さんは不動産情報誌の広告営業職に従事。提案先として数多くの住宅メーカーに足を運ぶうち、一軒の工務店に心引かれていったという。それが天然木の家づくりを提案する株式会社渡部製作所だった。
「丁寧に施工された木の家と、代表・渡部の情に厚い人柄に強く魅了され、2018年に私は再び転職を決意しました。しかし入社後の配属先は意外にも福祉事業部との兼務という働き方でした。新たに障がい者グループホームの運営事業部を立ち上げるということで、未経験の仕事に取り組むことになったのです」
「入学してから進路について考え始めました。漠然と“困っている人を助けたい”という思いはあったので、学業に励む傍ら不動産の相続コンサルティング会社でアルバイトをしていたのですが、結局他にやりたいことが見つからず、卒業後もそのままアルバイト先で働くことになりました」
不動産相続コンサルティング会社には3年勤め、その後は信託銀行や司法書士事務所で事務の仕事も経験した。社会に出た後も、中野さんは自らのやりたいことや進むべき道を模索し続けていたと振り返る。そんな中野さんに、思いがけず移住の話が浮上する。
「当時お付き合いしていた人がたまたま札幌へ転勤になったんです。もののはずみで転職活動を始めたところ、株式会社リクルート札幌支社への就職が決まり、あっという間に移住することになりました」
縁もゆかりもない北の大地で、中野さんは不動産情報誌の広告営業職に従事。提案先として数多くの住宅メーカーに足を運ぶうち、一軒の工務店に心引かれていったという。それが天然木の家づくりを提案する株式会社渡部製作所だった。
「丁寧に施工された木の家と、代表・渡部の情に厚い人柄に強く魅了され、2018年に私は再び転職を決意しました。しかし入社後の配属先は意外にも福祉事業部との兼務という働き方でした。新たに障がい者グループホームの運営事業部を立ち上げるということで、未経験の仕事に取り組むことになったのです」
決め手は“誰と働くか”。福祉の仕事が天職に。
初めてのことばかりで勉強の日々だったというが、同時にこれまでに経験したことがないほど仕事に面白みを感じていたと振り返る中野さん。
「かかわる人が皆温かみにあふれる方ばかりで、何を仕事にするかだけでなく『誰と仕事をするか』も私にとってはとても重要だと気が付きました。居心地の良い職場環境が、働くことの面白さを感じられるまでの心の余裕を生んだのだと思います」
ようやく進むべき道が見つかった。そう実感した矢先、新設されてわずか3カ月後に福祉事業部は株式会社W’sとして独立が決定。同社の代表取締役に任命されたのが中野さんだった。突然の辞令に初めは驚いたというが、中野さんを成長させたいという渡部さんの親心を感じ、手探りながらもおくすることなく事業を展開していった。
「まず、障がい者就労継続支援B型事業所とモデルハウスを兼ねた飲食店『W’s cafe』をオープンしました。より多くの方に来店してもらいたいと、南3条には札幌初の夜間就労型の飲食店を運営しました」
夜型就労支援事業は札幌市の中でも前例がない初の試みだったという。生活サイクルや服薬・治療の関係でどうしても日中の就労が難しいという利用者の声から生まれたそうだ。利用者とのコミュニケーションを重視してきた中野さんならではのアイデアだった。
「その他、農作業での就労支援を目的とした『わっずファーム』、エステやネイルを行う『わっずサロン』なども運営してきました。障がいのある方の就労を受け入れている企業はまだまだ少ないですし、カフェに行ったりネイルをしたりという娯楽の選択肢もとても少ないんです。その事に驚き、受けられるサービスをもっと増やしたいという思いでさまざまな事業を立ち上げました」
「かかわる人が皆温かみにあふれる方ばかりで、何を仕事にするかだけでなく『誰と仕事をするか』も私にとってはとても重要だと気が付きました。居心地の良い職場環境が、働くことの面白さを感じられるまでの心の余裕を生んだのだと思います」
ようやく進むべき道が見つかった。そう実感した矢先、新設されてわずか3カ月後に福祉事業部は株式会社W’sとして独立が決定。同社の代表取締役に任命されたのが中野さんだった。突然の辞令に初めは驚いたというが、中野さんを成長させたいという渡部さんの親心を感じ、手探りながらもおくすることなく事業を展開していった。
「まず、障がい者就労継続支援B型事業所とモデルハウスを兼ねた飲食店『W’s cafe』をオープンしました。より多くの方に来店してもらいたいと、南3条には札幌初の夜間就労型の飲食店を運営しました」
夜型就労支援事業は札幌市の中でも前例がない初の試みだったという。生活サイクルや服薬・治療の関係でどうしても日中の就労が難しいという利用者の声から生まれたそうだ。利用者とのコミュニケーションを重視してきた中野さんならではのアイデアだった。
「その他、農作業での就労支援を目的とした『わっずファーム』、エステやネイルを行う『わっずサロン』なども運営してきました。障がいのある方の就労を受け入れている企業はまだまだ少ないですし、カフェに行ったりネイルをしたりという娯楽の選択肢もとても少ないんです。その事に驚き、受けられるサービスをもっと増やしたいという思いでさまざまな事業を立ち上げました」
支援者側の心も豊かに。国境を越えた新事業構築へ。
コロナ禍で人手が不足した時期も、中野さんは斬新な発想でその困難を乗り越えた。なんと夜の飲食店で働く女性を採用し、利用者さんの支援をお願いしたのだという。
「彼女たちは接客のプロなだけあって、利用者さんとの接し方や距離の取り方がとても上手です。逆に『利用者さんから元気や勇気をもらった』『福祉業界という新たな道を発見した』と言って、今も継続して働いている方が何人もいます」
中野さんご自身も、働いてみて気が付いたことがたくさんあるのだという。
「『障がい者』という言葉に対して距離を置く人もいるかもしれませんが、実際に接してみると、皆『障がい者』である前に同じ人間なんですよね。私は彼らと過ごす中で、日々心が豊かになっていくように感じています。この仕事は想像以上に面白い。そしてアイデア次第でもっともっと面白くなっていくだろうと考えています」
自身を成長させてくれた福祉業界に恩を返す意味でも、更なる福祉業界の成長に貢献していきたいという中野さん。現在は海外視察にも注力している。
「2024年以降、自社の福祉事業を株式会社ウェルサポに引き継ぐことを決めました。W’sとしては今後も福祉事業を充実させていくため、他国の福祉制度や施設を視察し、海外での事業展開も検討していきたいです。世界には福祉事業における新たなフィールドや可能性、ヒントがたくさんあるのではないかと、今からワクワクしています」
「彼女たちは接客のプロなだけあって、利用者さんとの接し方や距離の取り方がとても上手です。逆に『利用者さんから元気や勇気をもらった』『福祉業界という新たな道を発見した』と言って、今も継続して働いている方が何人もいます」
中野さんご自身も、働いてみて気が付いたことがたくさんあるのだという。
「『障がい者』という言葉に対して距離を置く人もいるかもしれませんが、実際に接してみると、皆『障がい者』である前に同じ人間なんですよね。私は彼らと過ごす中で、日々心が豊かになっていくように感じています。この仕事は想像以上に面白い。そしてアイデア次第でもっともっと面白くなっていくだろうと考えています」
自身を成長させてくれた福祉業界に恩を返す意味でも、更なる福祉業界の成長に貢献していきたいという中野さん。現在は海外視察にも注力している。
「2024年以降、自社の福祉事業を株式会社ウェルサポに引き継ぐことを決めました。W’sとしては今後も福祉事業を充実させていくため、他国の福祉制度や施設を視察し、海外での事業展開も検討していきたいです。世界には福祉事業における新たなフィールドや可能性、ヒントがたくさんあるのではないかと、今からワクワクしています」
株式会社W’s
2018年、障がい者福祉事業を担う企業として札幌市に設立。就労継続支援B型事業所と建築会社のモデルハウスを兼ねた飲食店「W’s cafe」や、グループホーム「ファミリーユ」「はっぴーらいふ」の運営の他、訪問看護事業、自立援助ホーム事業などを展開。現在はそれらを株式会社ウェルサポに引継ぎ、新たな福祉の可能性を探るべく海外視察に注力している。
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