亡き父と共に描いた夢。北海道発のお好み焼きを世界へ。【風月株式会社】
2025年5月26日 公開
大阪府出身の創業者が札幌市で開店した風月株式会社。以来50年以上にわたり粉もの文化の伝道者として、新鮮な北海道産食材をふんだんに使用したお好み焼きや焼きそばなどを提供、現在札幌市・旭川市を中心に全11店舗を展開している。2代目代表取締役社長を務める二神さんに、入社から社長就任までの経緯や、今後の展望について伺った。
歩み始めた家業への道。「おいしい」がやりがいに。
札幌市出身。お好み焼き・焼きそばの風月の娘として生まれ育った二神さんは、幼いころから家業を継ぐことを考えていたという。
「小学校の卒業アルバムに『将来の夢は風月の6代目になること』と書いたのを覚えています。父・敏郎が創業者だったので、母が2代目として店を継ぎ、3人の兄と姉が順番に後を継いで、ゆくゆくは私が6代目となる。家族みんなでお店を守っていくのが当たり前だと思っていましたね」
中学校卒業後は商業系高校へ進学。店舗経営のために、簿記などの資格取得にも励んでいたと振り返る。
「でもいざ進路決定の時期になると、父の会社に入社することをちゅうちょしてしまって…。一度家業に踏み込めば抜け出せないような気がして、なかなか決断することができませんでした。結局、高校卒業後は語学留学のためにニュージーランドへ渡り、帰国後もアウトドアショップ店員として働いていました」
転機が訪れたのは2006年、二神さんが20歳の時。「3カ月でいいから店を手伝ってくれないか」という父の一言で、事務員として初めて店の手伝いをすることになった。しかし、経験のないデスクワークは想像以上に大変で、毎日退職を考えるほどだったという。
「でもそんなとき、遊び半分で提案したお好み焼きのメニューを父が褒めてくれたんです。実際にお店に並んだメニューもあって、考案したメニューのポスターを自作して掲示したり、実際にそのメニューをお客さまに提供したりもしました。父だけではなくお客さまからも好評だったことがうれしくて、仕事が次々と楽しくなっていったんです」
「小学校の卒業アルバムに『将来の夢は風月の6代目になること』と書いたのを覚えています。父・敏郎が創業者だったので、母が2代目として店を継ぎ、3人の兄と姉が順番に後を継いで、ゆくゆくは私が6代目となる。家族みんなでお店を守っていくのが当たり前だと思っていましたね」
中学校卒業後は商業系高校へ進学。店舗経営のために、簿記などの資格取得にも励んでいたと振り返る。
「でもいざ進路決定の時期になると、父の会社に入社することをちゅうちょしてしまって…。一度家業に踏み込めば抜け出せないような気がして、なかなか決断することができませんでした。結局、高校卒業後は語学留学のためにニュージーランドへ渡り、帰国後もアウトドアショップ店員として働いていました」
転機が訪れたのは2006年、二神さんが20歳の時。「3カ月でいいから店を手伝ってくれないか」という父の一言で、事務員として初めて店の手伝いをすることになった。しかし、経験のないデスクワークは想像以上に大変で、毎日退職を考えるほどだったという。
「でもそんなとき、遊び半分で提案したお好み焼きのメニューを父が褒めてくれたんです。実際にお店に並んだメニューもあって、考案したメニューのポスターを自作して掲示したり、実際にそのメニューをお客さまに提供したりもしました。父だけではなくお客さまからも好評だったことがうれしくて、仕事が次々と楽しくなっていったんです」
突然の父との別れ。2代目代表としての自覚。
二神さん考案のお好み焼きは、栗の甘露煮入りの「マロンレンジャーセット」など、個性的で笑顔を誘うものばかり。そんなメニュー開発に夢中となっているうちに、気付けば契約期限の3カ月は過ぎ、正式入社が決まったという。3年後の2009年には敏郎さんの計らいで、グループ会社である株式会社ひかりが設立された。
「多店舗展開していたお店の内の一店舗を父に任され、株式会社ひかりとして店舗経営に携わっていました。とはいえ当時はまだ23歳です。経営経験もなかったので失敗の連続で、常に気を張っていたように思います。でも父はいつも私の味方でいてくれたので、それが大きな支えになっていました」
2017年には小樽商科大学大学院へ入学。2年間経営学を学んだ後、MBA(経営学修士)も取得した。経験と知識を積み重ねるうち、二神さんは「いずれは父に代わって全店舗を牽引していきたい」と考えるようになっていったという。しかし、そんな二神さんを突然の悲劇が襲う。
「2022年、父が急逝しました。まだまだ先のことだと思っていた後継の話は、突然至上命題になり、正直なところ心の準備ができていませんでした。でも正式に社長に就任し、従業員が『社長』と呼んでくれたことで社長としての自覚が生まれ、『もう父には甘えられない』『自分の足で歩いていかなければいけない』と改めて考えるようになりました」
「多店舗展開していたお店の内の一店舗を父に任され、株式会社ひかりとして店舗経営に携わっていました。とはいえ当時はまだ23歳です。経営経験もなかったので失敗の連続で、常に気を張っていたように思います。でも父はいつも私の味方でいてくれたので、それが大きな支えになっていました」
2017年には小樽商科大学大学院へ入学。2年間経営学を学んだ後、MBA(経営学修士)も取得した。経験と知識を積み重ねるうち、二神さんは「いずれは父に代わって全店舗を牽引していきたい」と考えるようになっていったという。しかし、そんな二神さんを突然の悲劇が襲う。
「2022年、父が急逝しました。まだまだ先のことだと思っていた後継の話は、突然至上命題になり、正直なところ心の準備ができていませんでした。でも正式に社長に就任し、従業員が『社長』と呼んでくれたことで社長としての自覚が生まれ、『もう父には甘えられない』『自分の足で歩いていかなければいけない』と改めて考えるようになりました」
創業時の思いを乗せて、お好み焼きと鉄板文化を届けたい。
後継当初は先代のやり方をなぞるようにして経営を続けていた二神さんだったが、徐々に自分なりの経営方針を打ち出していった。
「お客さまへのサービス内容を改善し、職場の労働環境をDX化するなど、変えられることは変えていこうと方向転換をしました。創業時からの父の思い『北海道のおいしい食材で、本場大阪にも引けを取らないお好み焼きを作りたい』『お好み焼きで多くの人を幸せにしたい』という2つを守り抜けば、あとは時代の変化に合わせて変えていってもいい、そう考えるようになったんです」
「今後は海外進出も視野に入れている」と笑顔で未来の展望を語る二神さん。もはや不安の影すら見えない。
「生前父とアメリカに店を出そうという話はしていたんです。2017年にニューヨークで開催された『粉もんフェスティバル』に参加した際、充分な手応えを感じていました。大勢のアメリカ人が風月のお好み焼きを食べに来てくれただけではなく、投票制の満足度ランキングも堂々の1位だったんですよ」
二神さんは店を通じて商品だけではなく、鉄板を囲んで調理し、だんらんする日本の食文化そのものを世界中に届けたいのだという。
「昔、父に『お前は“つなぎ”だ』って言われたことがあって、当初は『正式な後継者が決まるまでの一時的な存在だ』と言われたのかと思いショックでした。しかし今では、従業員一人ひとりをまとめるリーダーとしての“つなぎ”、次世代へのバトンを渡す前走者としての“つなぎ”、海外への架け橋としての“つなぎ”など、さまざまな役割を担う経営者になれという意味だったと解釈しているんです」
「お客さまへのサービス内容を改善し、職場の労働環境をDX化するなど、変えられることは変えていこうと方向転換をしました。創業時からの父の思い『北海道のおいしい食材で、本場大阪にも引けを取らないお好み焼きを作りたい』『お好み焼きで多くの人を幸せにしたい』という2つを守り抜けば、あとは時代の変化に合わせて変えていってもいい、そう考えるようになったんです」
「今後は海外進出も視野に入れている」と笑顔で未来の展望を語る二神さん。もはや不安の影すら見えない。
「生前父とアメリカに店を出そうという話はしていたんです。2017年にニューヨークで開催された『粉もんフェスティバル』に参加した際、充分な手応えを感じていました。大勢のアメリカ人が風月のお好み焼きを食べに来てくれただけではなく、投票制の満足度ランキングも堂々の1位だったんですよ」
二神さんは店を通じて商品だけではなく、鉄板を囲んで調理し、だんらんする日本の食文化そのものを世界中に届けたいのだという。
「昔、父に『お前は“つなぎ”だ』って言われたことがあって、当初は『正式な後継者が決まるまでの一時的な存在だ』と言われたのかと思いショックでした。しかし今では、従業員一人ひとりをまとめるリーダーとしての“つなぎ”、次世代へのバトンを渡す前走者としての“つなぎ”、海外への架け橋としての“つなぎ”など、さまざまな役割を担う経営者になれという意味だったと解釈しているんです」
風月株式会社
大阪府出身の初代代表・二神敏郎さんが1967年札幌市で創業。「北海道の食材で本場大阪に負けないお好み焼きを作りたい」という思いの下、わずか3坪の1号店をオープン。現在は札幌市に10店舗、旭川市に1店舗と多店舗展開。このうちココノススキノ店はたこ焼き専門店として出店。

BOSS TALK
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時15分〜放送中!
- ジョブキタで配信中の
- 前のページへ
- 次のページへ
注目企業のトップに聞くin北海道
最新記事5件
亡き父と共に描いた夢。北海道発のお好み焼きを世界へ。【風月株式会社】
2025年5月26日 公開
2代目代表取締役社長を務める二神さんに、入社から社長就任までの経緯や、今後の展望について伺った。
経営コンサルティングと人材育成の両輪で支える北海道の未来。【右腕カンパニー株式会社】
2025年5月19日 公開
代表を務める大湊さんに、起業の経緯や今後の展望などを伺った。
中途の営業マンからトップに。地域の産業・生活を支える企業基盤で100年先の北海道を照らす。【エア・ウォーター北海道株式会社】
2025年5月12日 公開
高校卒業後、2回の転職経験を経て入社し、中途から社長を任されるまでになった庫元さんに、これまでの経緯や今後の展望などを伺った。
全国の仲間と共に最高の結婚式と最高の職場を。【COCOSTYLE株式会社】
2025年5月12日 公開
代表を務める荒井さんに、設立の経緯や今後の展望について伺った。
室蘭だからこそ、大きな「夢」を動かせると地域に伝え続けたい。【株式会社 電材重機】
2025年4月21日 公開
代表取締役社長の上村正人さんに、成長の契機となった出来事や、地元・室蘭への地域貢献活動について話を伺った。