北海道でSDGsの目標達成に貢献する企業・団体 北海道でSDGsの目標達成に貢献する【有限会社大塚農場】(当別町)

2023年6月19日 公開

札幌中心部から車で北に小一時間走って当別町に入ると、石狩平野に広大な農村地帯が広がっています。石狩川が運んだ豊富な栄養が蓄積され、肥沃な土壌に恵まれたそのエリアに、今回紹介する有限会社大塚農場があります。「おぼろづき・ゆめぴりか・ななつぼし・大地の星・はくちょうもち」の5種類のお米や「男爵・メークイン・インカのめざめ・北海こがね・とうや・きたあかり」の6種類のジャガイモ、そしてトマト・きゅうり・ブロッコリー南瓜・にんじんなど多品種の野菜に加え、各種加工品も手掛ける、当別町エリアでも有数の大規模農場です。代表取締役の大塚慎太郎さんは3代目。耕作面積は広がり続けて現在66haと、先代が目標としていた100haに近づきつつあります。大塚さんに人材に関する相談を受けて農場の概要を伺っている時、その端々にSDGsに対する意識、つまり持続可能な社会と農業のあり方の関係への意識を感じたのです。そんな大塚さんのベースにあるSDGsについての考え方を伺いました。

農業という営みとSDGsの関係を再確認。

大塚さんがSDGsに関して深く関心を持つようになったのは、地域のJC(日本青年会議所)での勉強会がきっかけだそうです。「2018年から2020年まで勉強しました。SDGsの17の目標をじっくりチェックしていったら、うちでずっと前からやり続けていることがたくさんあることがわかったんです」。そしてまずは「大塚農場が昔から大切にしている、環境に配慮するということと、畑を元気な状態に保つということは、SDGsという側面からも重要なんだと再確認しました」

それは大塚さんが常に意識している「科学性を前提にした永続的な農業」ということ。最適な肥料を適正量使う土づくりで、多品種を輪作して土の力を保ち、畑は常に最高のパフォーマンスを発揮して、美味しい作物をたくさん作る。さらに残渣(ざんさ)も有効活用する環境配慮・循環型の農業。そういった持続可能な農業を目指している大塚さん。その農業の意義をSDGsの目標2<飢餓をゼロに>や目標 12<つくる責任つかう責任>という側面からも理解して、さらに推し進めているということなのです。元々先代が無農薬だったり有機だったり、環境配慮型の農業を指向していた時期もあったことがベースにはあると言います。

目標 12<つくる責任つかう責任>という視点でもうひとつ、大塚農場では「フードロス対応」も積極的に推し進めています。出荷規格を通常の市場ルールとは変えて、少々曲がっていたりで不揃いでも理解してもらって出すようにしているのです。「普通だったら6割ぐらいの正品率を8割ぐらいで出荷できています。きっかけはそういった意識の高い取引先があったことで、とてもいいことだなと思って続けています。にんじんは洗わず土付きで出してます。その方が日持ちがいいんです。それに栄養価も高いといわれています。とにかく手をかけて作った農作物をしっかり販売しようと心がけてるんです」

大塚農場の農業を営む基本姿勢自体が、SDGs各目標への積極的な取り組みともいえるのです。

大塚農場の「社会的責任」を考える。

大塚さんが意識しているSDGsの目標には、農業をどう営むかというだけではなく、農業という営みが持つ社会的責任という視点が含まれています。

まずは多数雇用する「従業員」に対する視点です。「目標5の<ジェンダー平等>というテーマは、かなり前から意識していたことです。うちの中で男だからとか女だからとかはなくて、トラクター作業を希望する女性には乗ってもらいます。性別に関係なく能力で評価して、無理な仕事はさせないというのが基本です」。そこには多くの従業員に支えられてこその大塚農場であり、多様な人たちと一緒に働ける環境を作りたいという思いがあるのです。

もうひとつは、「農地」への視点。「遊休農地を出さないという思いが強いです」。それは代々受け継いできた肥沃で広大な農地を、しっかりすべて使い続けていくこと。さらには近隣の離農農家の農地を、苦労を覚悟の上で引き取り、遊休農地とせずに作物を作り続けているのだそう。それは会社としての経営拡大をめざずということだけではなく、農地は社会の財産だから、自分たちが暮らす地域としても遊休農地を出したくないということなのです。そこには地域をいい形で守って行こうという決意のようなものが感じられます。

こういった社会との関係に対する視点を大塚さんが持っている背景には、先代が作った「農場理念」の存在があるようです。現在も事務所に掲示されてもいるその「農場理念」には、「社会経済との調和」や「地域社会との調和」というテーマが大きく掲げられていて、先代がすでに、農業を営みつつ社会的責任を果たしていこうと宣言していたわけなのです。

最後に取り組みの対外的な発信が控えめなことについてについて伺うと、「ちょうどJCでの勉強会が終わった頃に、SDGsの概念がかなり広まってきて、ちょっとブーム的な空気も感じられて、なんとなくその言葉で語ることが「SDGsウオッシュ 」(=やってるフリをする見せかけ)に思われそうで嫌だったんです」。ただ、現在改めて検討中の「新・農場理念」には、もう少しSDGsに絡んだニュアンスが多く入るでしょうとのことでした。

持続可能な社会との関係を意識しながら農業のあり方を考え続ける大塚農場は、まさにSDGs的な農場と言えると感じました。

有限会社大塚農場

北海道石狩郡当別町字東裏3122
TEL.0133-22-3138
https://www.oh-farm.co.jp/

北海道でSDGsの目標達成に貢献する企業・団体

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