北海道発!商品誕生エピソード 北海道発!商品誕生エピソード【どさんこボブジテン/株式会社ClaGla(札幌市)】

2021年11月22日 公開

「辛くてご飯にかけて食べる札幌名物の汁物ってなーんだ」。
答えは「スープカレー」。カタカナの単語をカタカナを使わずに説明するクイズゲーム「ボブジテン」。その北海道版を監修したのが、道内で数少ないアナログゲームメーカー、株式会社クラグラです。同社代表のこだまじゅんじろうさんにお話を伺いました。

北海道愛あふれる、お手軽アナログゲーム。

ルールはシンプル。出題者側は1枚のカードを引き、カードの単語に振られた番号と山札に書かれた数字を照らし合わせる。該当する単語をカタカナを使わずに説明する。回答側は正解となるカタカナ語を当てれば勝ち。

海外滞在で得たゲーム作りの原点。

実はこだまさん、札幌のクリエイター業界では20年近く前からその名が知られる人物。札幌の観光専門学校を卒業後、観光業界を経てキャラクターデザインや映像関連の仕事を経験。映像作家として頭角を現し、2008年には「札幌国際短編映画祭」で最優秀道内作品賞を受賞したセンスの持ち主です。
この10年程は観光業で培った渡航経験を生かし、カメラを手に世界中を飛び回ったり、海外の監督が北海道で撮影を行う際にはコーディネートを手掛けたりするなど、一見華やかな仕事ぶりでしたが…
「プライベートでは離婚を経験しまして…。新しく生まれ変わるつもりで、再び勉強をはじめることにしました」
こだまさんは2013年、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院へ社会人学生として入学します。同年、JICA(国際協力機構)への協力事業として、エチオピアに2カ月間滞在する事になりました。行き先は、同国のシミエン国立公園。地域住民たちの生活によって自然破壊が進み、当時は世界遺産のレッドリストに登録されていました。JICAでは観光の力で問題解決に取り組んでいたそうです。
「国際的な支援の結果もあり、現在はレッドリストから脱却しました。しかし僕個人としてはシミエンの貧しさとそこに潜む社会的な問題に衝撃を受け、自分なら何ができるかという事をひたすらに考えた日々だったんです」
そこで、こだまさんの頭に浮かんだのが、小さなころから好きだったゲーム。現地の子どもが学べるものや、地域や環境保護の啓発につながるものなど、次々とアイデアが浮かんだそうです。
「僕がエチオピアで見たのは、答えのない世界。答えがない事って、ゲームに向いているんです。ゲームって、プレイヤーに選択肢を広げ、たくさんの結末を用意する事ができますよね。『いつかゲームで地域問題の解決をしたい』、それが僕の新たな原点となりました」

撮影でのトラブルが一転、創業のきっかけに。

帰国後、当時はゲーム仲間であった現在のスタッフが立ち上げた団体に参加し、2018年に同社を創業します。そのきっかけも、これまたユニーク。
「ある時、北海道で撮影される海外ドラマの仕事をしていたんです。いざ明日撮影という段階で監督が急に撮影場所を変更。現場にものすごい迷惑をかけ、僕は事態の収拾に追われました。そんな様子を見ていた知人の投資家が、僕の対応を評価してくれて、 投資のお話を持ちかけてくれたんです」
開業後間もなく、東京で開催された国内最大のアナログゲーム即売会「ゲームマーケット」に参加。初作品「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。」を販売したところ、あっという間に完売し、更に優秀作品賞にも選ばれる快挙を達成しました。SNS上でも「腹筋が壊れるほど笑える」と話題となり、一躍ゲームメーカーとして名が知られる存在になりました。

ゲーム作りから感じた自身の「どさんこ愛」。

昨年、以前から親交があった「ボブジテン」の企画開発者であるユニット・TUKAPONから、「ちきゅうのボブジテン」「どさんこボブジテン」の監修をして欲しいと依頼がかかります。海外経験が豊富なこだまさんならではの仕事。早速、カタカナ語を用意して「ちきゅうのボブジテン」を完成させました。ところが、「どさんこボブジテン」は1年近くかけても、ゲームに必要な216のカタカナ語がそろわず、一度は断念するほど難航したそうです。
「カタカナかつ、日本にしか存在せず、誰もが知っている単語というのが条件なんです。例えば『ジンギスカン』は漢字で『成吉思汗』と書けるからNG。アイヌ語もマイナーすぎると使えないんです」
そこで、商品名や社名など、固有名詞のカタカナ語を使うというアイデアを思い付きます。道内企業や団体へ協力をお願いしたところ、35もの企業・団体から快く協力を得られました。今年8月の発売開始以来、数々のメディアで話題になり、既に多くの反響が届いているそうです。
「あくまで監修なので、弊社オリジナルではありません。しかし僕の原点である『ゲームで地域問題を解決』という夢、そして北海道への愛を思い起こさせてくれる大きなきっかけとなりました。この商品を機に、観光や地域振興の問題解決になるゲームをもっと作っていきたい。手に取りやすいゲームというメディアだからこそできる可能性が、まだまだ広がっているんです」。

ここがこだわり!開発のポイント。

北海道愛が試されるワードをチョイス
道外の人には分からないが、生まれ育ちが北海道の“どさんこ”にはギリギリわかるといった言葉をチョイス。こだまさんいわく「北海道愛が試されるゲーム」に仕上がっています。
35の道内企業・団体が一丸となってPR
商品名や企業名も数多く収録した事で、観光客には知られていない商品や企業のPRにもつながっています。ちなみに道外の方からは「さっぱり分からないけど面白い」と好評だとか。
環境問題の啓発にもつながる
「ラムサール」「ジオパーク」といった、北海道が取り組む自然保護に関する単語も収録。出題者側も解答者側も、北海道の事をより深く理解できる仕組みです。

株式会社ClaGla

2018年創業。こだまじゅんじろうさんを中心に、デザイナーやクリエイターなど6人で運営。アナログゲーム開発の他、体験型謎解きゲームのプロデュース、ゲームカフェ「Sapporo Game Space」の運営、自治体とコラボしたイベントなどの事業も手掛ける。
北海道札幌市豊平区豊平4条13丁目1-7
https://clagla.jp

北海道発!商品誕生エピソード

最新記事5件

恐竜から鳥へ、生命の歴史が潜む。作ろう!フライドチキンの骨格標本【いしかり砂丘の風資料館】 2024年2月26日 公開

フライドチキンから生命の進化の歴史をたどるというユニークな講座を企画・指導している同館学芸員・志賀健司さんにお話を伺いました。

親子三代で引き継がれる、汗と涙の結晶。焼カシュー【池田食品株式会社】 2023年10月30日 公開

「焼カシュー」誕生の秘密を、同社三代目であり取締役の池田晃子さんに伺いました。

老舗菓子店の銘菓がリブランディング「生ノースマン」【千秋庵製菓株式会社】 2023年2月27日 公開

連日完売を続ける新商品誕生の裏側を探るべく、製造元である千秋庵製菓本社を訪ねました。

アイヌ伝統の薬草と北海道素材で作るのど飴「MINAMINA」/株式会社The St Monica[札幌市] 2022年4月18日 公開

開発を手掛けた株式会社セントモニカの代表、七戸千絵さんにお話を伺いました。