Smart AI City SAPPORO「SAPPORO×IT」 株式会社インフィニットループ/株式会社バーチャルキャスト 代表取締役 松井 健太郎

2020年3月1日 公開

「遊び心」を大切に、世界に通じるコンテンツを

スマホゲームの開発を中心に、ここ最近はVRやAIにも事業を広げるインフィニットループ。
遊び心と高い技術力から生まれた、先進的なサービスに定評がある。
【interview-8】
株式会社インフィニットループ/株式会社バーチャルキャスト 代表取締役 松井 健太郎

まつい・けんたろう
北広島市出身。北海道東海大学電子情報工学科卒業。フリーランスのITエンジニアとして活動後、2007年6月に「株式会社インフィニットループ」を設立。現在は株式会社ドワンゴと共同で立ち上げたVR事業会社「株式会社バーチャルキャスト」の代表も兼務。


―インフィニットループを立ち上げたきっかけを教えてください。
私は小さなころからゲームが大好き。ソースコードからどんなモノでも作り上げるプログラマーに憧れ、IT業界に進もうと決心しました。
ところが、大学4年生の就職活動の時期は折しも「氷河期」。優秀な同期は半数以上が仕事の場を求めて東京へと出ていきました。誤解を恐れずに言えば、当時の札幌はITが今ひとつ盛り上がりに欠けていたことも要因だったと思います。このままでは、業界が廃れてしまう… そんな危惧を抱き、いつの日か地元の人にとって面白いと感じてもらえるようなIT企業を作ろうという青写真を描いたんです。

AI事業に乗り出したきっかけはさっぽろイノベーションラボ

―会社はどのように成長してきましたか?
インフィニットループを立ち上げたのは2007年。当初は私を含めて2〜3人でホームページやWebシステムを制作していました。転機は数年後のこと。SNS内やWeb上のゲームを東京の企業と共同で作る仕事を請け負ったところ、時のブームの勢いも手伝って一気に依頼が舞い込むようになりました。
札幌は情報技術系の学校教育やIT企業同士の横のつながりが盛んで、かつてのサッポロバレーのエンジニアもそれぞれ活動していることから、技術者の素養が高い土地だと思います。おかげでハイレベルなスキルを持った社員も増え、それが新たな仕事を呼び込んだことも大きかったです。今はグループ企業も含めるとスタッフは200名以上。当初の雇用の受け皿となりたいという思いが、少しは達成できたのではないかと自負しています。

―AI事業に乗り出したのはいつごろですか?
当社は「電子工作部」や「オフィスパーティ部」など、部活動が盛んです。勉強のためならIT技術の書籍を会社が負担して購入する制度もあります。その理由は好きなことを自ら進んで学び、自発性を高めてもらいたいからです。
AIブームが巻き起こった3年ほど前、その勉強会を開こうという気運が高まり、社内でも少しずつ技術を習得しようとする人が増えていきました。時を同じくして、産学官と連携して事業を進める「さっぽろイノベーションラボ」が、ある大学の研究室と私をつないでくれました。医療用画像から病気を判断するAIサービスについて相談を受け、今は開発を進めているところです。
具体的にはコンピューターに肺のCTスキャン画像を何千枚と読み込ませ、健康な状態か病気かを学習させるんです。私たちの役割は医療の特殊な画像形式をAIが読み込めるデータに変換するプログラムを書くこと。まだ病院での実用化に至っていませんが、それでも90%を超える確率で病気の判断ができます。とはいえ、当社もAIサービスを事業として広げていくのはまだまだこれからのことですね。

「遊び心」から生まれた、VRサービスのビジネス

―では、VR事業を始めたきっかけは?
もともとは社内の遊びだったんです(笑)。当社は社員がIT系の機材の購入を希望することが多く、VRのゴーグルも面白そうだからと3年ほど前に取り入れてみました。すると、仕事が終わった後に有志がVRに対応したプログラムを組み始め、私にプロトタイプを見せてくれたんです。ゴーグルを被ると、女の子のキャラクターになって踊れるバーチャル空間が広がりました。コレはビジネスの可能性があると直感が働き、すぐにVR事業の部署を立ち上げたんです。
私が大切にしているのはそんな遊び心。360度を一度で撮影できるカメラも社員のリクエストから導入し、最初のうちは皆で使って楽しむ程度でした。そこから、お客様が手軽にVRパノラマツアーを作成できる「Groon(グルーン)」というサービスを開発。最近はクルマの中の撮影が一度に済むという理由から、中古車販売店のニーズが高まっています。私たちは、中古車販売店の撮影した写真をシームレスにWebサイトへと登録できるサービスを手掛け、業務効率化に貢献しているんです。

札幌から世界へ飛び出す、IT人材の輩出を見据えて

―「Virtual Cast(バーチャルキャスト)」が人気ですね。
開発当時の3年ほど前は、2D・3Dのアバターを使って動画投稿や配信活動を行う「Vtuber(ブイチューバー)」という言葉もなく、時代を先取りし過ぎたかもしれません。まったく売れる気配のない時期が続きました。それでも全国でデモンストレーションを行うことで評判がじわりじわりと広がり、Vtuberブームの到来とともにようやく火が付いたんです。
2018年には株式会社ドワンゴと共同で、バーチャルキャラクターになってVR空間のスタジオをリアルタイムで配信し、コミュニケーションできるVRライブ・コミュニケーションサービス「Virtual Cast」をリリースしました。その年の7月にはVR事業を切り離し、「株式会社バーチャルキャスト」を株式会社ドワンゴと共同で立ち上げたんです。
在籍エンジニアには日本で指折りの技術を持つスタッフもいるので、VRの先進的なサービスを手掛ける自信があります。先日も、日本でVirtual Castを利用する人の映像をアメリカでリアルタイムに合成し、海外メディアの取材を受けるという試みを行いました。こうした技術は世界でも私たちしか作れないと思います。
私自身は札幌で起業家支援の活動を行っていますし、当社のメンバーは子ども向けのプログラミング教育にも力を入れています。こうした取り組みを通し、やがて札幌から世界へ飛び出していけるIT人材を生み出すことにも貢献できたらうれしいですね。

株式会社インフィニットループ

札幌市中央区北1条東4丁目1-1
サッポロファクトリー1条館 3階
TEL 011-271-1118
https://www.infiniteloop.co.jp/

Smart AI City SAPPORO「SAPPORO×IT」

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