エコモット株式会社 代表取締役 入澤 拓也
2020年3月1日 公開
IoTインテグレーションで安全&環境に優しい社会を創造
入澤社長の視線の先にはITで活気づく北海道の未来が広がる。

エコモット株式会社 代表取締役 入澤 拓也
いりさわ・たくや
2002年に米国留学から帰国後、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社入社。07年、同社を退社しエコモット設立。IoT用デバイス、通信インフラ等の業務のワンストップサービスを展開。北海道IT推進協会会長。札幌市出身。
―エコモットの主な事業、強みについて教えてください。
当社はIoT専業のソリューションベンダーとして、IoTをお客様のビジネスに活用するお手伝いをさせていただいております。一番の強みは、開発から営業、運用、管理までを垂直統合的に一気通貫で行える社内体制が整っていることです。AIは人間でいうところの脳です。でも、脳だけでは何もできません。触ったり、見たり、聞いたものが五官から入って脳に伝わるわけですが、当社ではIoT(五官)とAI(脳)の双方をセットで手掛けています。具体的には、不動産業界向けロードヒーティングの遠隔監視、建設現場の安全のためのソリューションなどです。中でも近年伸びているのは車のIoTです。
ドラレコでヒヤリハットを検知し危険運転の抑止に役立てる
通信機能を搭載した高性能ドライブレコーダーを契約法人の車両に取り付け、急加速や急減速などのヒヤリハットを検知した際に自動的に動画を送信します。管理者はリアルタイムで社員の危険運転を把握し、指導に生かします。ハインリッヒの法則をご存じでしょうか。1件の重大事故の背後には29の軽微な事故が隠れていて、さらにその背景には300の異常(ヒヤリハット)が隠れているという法則です。大事故を未然に防ぐにはこうしたヒヤリハットを把握し、的確な対策を講じることが不可欠です。私たちはヒヤリハットの「見える化」を通して安全運転に貢献したいと考えています。
こうしたヒヤリハットのデータをAIに蓄積することで、運転者の運転傾向をパーソナライズし、一人ひとりに応じたアドバイスを行うことも可能となります。また過去の事故発生地点や天候、累積走行データを重ね合わせることで、事故リスクのある地形特性を分析して高事故リスク地点を抽出することもできるようになるでしょう。今後、日本においてもMaaS(Mobility as a Service)の普及が見込まれています。個人がスマホで自動運転の車をチャーターして街中を自由に移動するようになる日も近いかもしれません。そうした中で、ドライブレコーダーで培った私たちの技術が、自動運転の車の監視や、特に安全面で寄与できるのではないかと想定しています。
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札幌市の中心部にあるオフィス。従業員数は108名。東京、仙台、名古屋、大阪等に拠点がある。
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ドライブレコーダーが収集したデータをLTE回線を通じてクラウドサーバーに送信、保存する。
社員ゼロ、資本金は10万円IoTで「社会に役立ちたい!」
私は前職で携帯電話向けコンテンツの企画・開発をしていました。寝食を忘れるほど熱中しましたが、携帯市場に次々と企業が参入して飽和状態になる中で、自分はやりきったなと感じ始めていました。次にやるなら「世のため、人のために仕事がしたい」。そう思って27歳で退職し、資本金10万円でこの会社を立ち上げました。最初に手掛けたのが融雪装置の遠隔制御代行サービスです。これはマンション等の積雪状況をカメラで監視し、ロードヒーティングを遠隔操作するシステムです。最適なボイラー制御が可能なので大幅な燃料費削減につながり、化石燃料の過剰な使用を抑制できます。当時、私の中で環境問題は大きなテーマでした。
環境の次に私が取り組んだテーマは安全でした。きっかけは東日本大震災です。会社を立ち上げて5年目の当時、私たちは建設現場のソリューションを手掛け始めたばかりでした。土木現場で川の水位を測定したり、津波警報の回転灯の開発に携わっていました。そんな時東日本大震災を目の当たりにして、「危険を知らせることが人命救助に貢献する。IoTが救える命ってあるよな」と確信しました。それからは人の命を守るためのIoTを生み出すことが、私たちの使命と考えるようになりました。通信機能を備えたドライブレコーダーの開発の背景にはこうした思いがあったんです。
車の安全ということでいえば、人間が運転する限り事故は避けられません。自動運転には賛否両論ありますが、私は車社会の北海道こそ最初に自動運転に取り組むべき地域だと考えています。たとえば雪によるホワイトアウトはドライバーにとって非常に危険な状況ですが、前が見えなくても座標が取れれば、事故を起こす可能性はグッと低くなります。安全面において非常に大きな効果が期待できるのです。
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東日本大震災の時には救援物資を積み込んだ軽トラで被災地へ。「有事に役立つ企業でありたい」と入澤社長は話す。
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屋外に設置したセンサーやネットワークカメラのデータで建設現場を見える化する「現場ロイド」。
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IoTプラットフォームサービス「FASTIO」がMCPC award 2015 プロバイダー部門でグランプリ受賞。
IT人口を増やし、産業を活性化「食と観光とITの北海道」に
ITで北海道を豊かにする、というのが私のビジョンです。ITで豊かになった国といえばお隣、中国ですよね。アリババ、HUAWEIなど、絶大な影響力を誇る企業が数多くあります。一方で日本はITで世界に後れを取っています。原因はさまざまでしょうが、古くからの慣習や業界の反発で新しいサービスや制度がなかなか実用化できないことが要因の一つに挙げられます。そうであれば、北海道という「5%経済圏」の中で試したらいいと思うんです。自動運転もそうだし、電子政府、遠隔教育、遠隔医療など、ITが力を発揮する分野はまだまだあります。北海道をIT先進地にするための基盤づくり、風土づくりを政策的に推し進める必要があるでしょう。一つは、ITに携わる人を増やすことです。北海道の現在のIT人口は約2万人といわれています。それを4万人にすれば単純に考えて売上が倍になります。現在は4500億円ぐらいの規模ですが、これが1兆円規模の産業になったらいいですよね。そういう意味では教育に期待しています。これから小学校や中学校でプログラミング教育が必修化されます。これにより、ITに興味を持ち、プログラミングの下地のある学生が増えていくでしょう。彼らが積極的にIT業界に進み、ゆくゆくは北海道に集まるようになったらいい。イメージはアメリカ西海岸の最北に位置するワシントン州、シアトルです。このまちにはMicrosoftやAmazonがあり、IT人材が世界中から集まってきます。北海道もこうでありたい。ベトナムを始めアジア圏の優秀な人材が、アメリカではなく北海道を選ぶ。そのためにはIT産業の発展もさることながら、まちそのものの魅力を高めることも不可欠です。せっかくなら憧れのまちで働きたいじゃないですか。人を集めるためにはまちがエキサイティングじゃないといけません。
北海道がITで一番進んだまちになる。その北海道で、私たちエコモットがナンバーワンになる。それが目標です。
エコモット株式会社

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