北海道発!商品誕生エピソード【豆乳パンケーキで作るマリトッツォ/株式会社菊田食品 菊の家(江別市)】
2021年10月25日 公開
老舗メーカーが手掛けた、江別産の豆腐スイーツ。

不幸な価格競争よりも、幸せな付加価値こそ使命。

株式会社菊田食品
代表取締役社長
郷 和樹さん
しかしこの10年、豆腐メーカは味や品質を追求するだけではなく、更なる転換を迫られていると郷さんは話します。
「近年、豆腐は50円を下回る価格で売る店もあるほど相場が下落しています。一方で大豆や油といった原材料は高騰を続け、大規模な生産力を持つメーカーしか生き残れない時代となりました。しかし弊社が右に倣えで安売りするには、長年お世話になっている生産者や仕入れ業者に泣いてもらうしか選択肢がありません。これまで築き上げて来た取引先との関係を壊せば、弊社の社員も疲弊するでしょう。そんな商売では、誰も幸せになりません」
そして、現状を打破するためにも付加価値のある商品開発が必要だったと話を続けます。
「私達は70年に渡り、地域と共に商いをしてきたメーカーとして、この江別で豆腐づくりにかかわる人すべてを幸せにし、その幸せをお客様に還元するという義務があります。そのためには値下げではなく、新たな商品を開発するのが急務だったんです」
食べ歩きから着想を得て、江別同士のコラボを実現。
「実は私、豆腐と同じぐらい甘い物に目がないんです(笑)。『研究』と称して日々、豆乳を使ったスイーツを食べ歩いてましたが、豆乳が強く出過ぎた味が多く、どうにもしっくり来ませんでした。そんな時『ベイクド・アルル』さんのソフトクリームを食べてあまりの濃厚さに衝撃を受け、『このミルクなら豆乳と合うはず!』と確信を得ました」
ベイクド・アルルは、北海道産生クリームを使った冷凍スイーツを主力に、江別から全国や海外へと展開している洋菓子メーカー。代表の香川さんと郷さんは同い年でもあり、以前からよく交流があったそうで、早速連絡を取り熱意を伝えたところ、二つ返事で了承をもらったのだとか。そして昨年春、自家製ソフトクリームの「ミックス」から開発が始まりました。
「豆腐屋としてはついつい、大豆の味を立たせようとしてしまいますが、バランス良く仕上げるのがとても難しいんです。試しに生大豆粉を加えた時なんて、口に入れた瞬間にウッとなるほどの生臭さでしたよ(笑)」
豆腐だけにこだわらず、次代をつくる商品開発を。

「豆乳パンケーキで作るマリトッツォ 豆乳ミルク」(400円、税込)。「菊の家」各店(本店、サンピアザ店、札幌東急百貨店、丸井今井店)で購入可能。
中でも「豆乳パンケーキで作るマリトッツォ」は、発売以後好調な売れ行きを記録し、健康志向の強い若い女性や単身の男性など、新たな顧客獲得にも成功しているそうです。更に、冷凍輸送も可能な事から全国はもちろん、8月には念願の海外、香港での販売も実現しました。
実はこのマリトッツォ、元々は江別産小麦と豆乳を使用したパンケーキ単体での開発を目指していたそうですが、ブームを受けて発想を転換。既に開発していたミックスを使って、クリームをたっぷり味わえるスイーツへと姿を変えました。バリエーションも次々と増やし続け、現在では8種類のラインアップが並んでいます。こうした柔軟性も同社の強みだと郷さんは話します。
「一過性のブームで終わりとならないよう、新たな商品開発を継続して行く事を重要視しています。弊社のスローガンは70年変わらず『おいしい豆腐でお客様に健康と笑顔をお届けする』ですが、豆腐の概念を越えた開発こそ、次代に必要な変化であると、三代目の私は解釈しています」
ここがこだわり!開発のポイント

クリームは北海道産の純生クリーム、江別産大豆の豆乳を使用。更に「菊の家」自慢の絹ごし豆腐をメレンゲのように泡立てて混ぜる事で、空気や油分が混ざり合い、優しい甘さやふわっとした食感に仕上がります。
クリームを包み込むパンケーキ生地は、江別製粉の菓子用粉「ドルチェ」を使用。牛乳に代わり豆乳を使用し、ふっくらとした食感に焼き上げています。
手寄せ豆腐と同じく、少数・小規模の「菊の家本店」ですべての商品を製造。増産には向きませんが、職人の手作りによる繊細な技術で一つひとつのスイーツを仕上げています。
株式会社菊田食品

北海道発!商品誕生エピソード
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