北海道ルーツの企業が開発したスーパーフード金のアマニ【株式会社ニップン】
2025年9月29日 公開
1873年(明治6年)北海道に設立された官営札幌製粉所をルーツとする株式会社ニップン。製粉業界のパイオニアである同社が近年取り組んでいるのが北海道産アマニ(亜麻仁)の普及です。一昨年に誕生した「金のアマニ」の誕生エピソードや将来像について、同社の有川由紀子さんにお話を伺いました。
北海道の産業史に
名を残した亜麻とニップン
「金のアマニ」は亜麻の種子をローストした商品で、パンやお米、サラダやスープまで何に掛けてもおいしく、香ばしい風味をプラスしてくれます。注目すべきは、その豊富な栄養素。血液をサラサラにする効果があるオメガ3脂肪酸の他、筋肉の維持に役立つたんぱく質、腸内環境を整える食物繊維、更には女性ホルモンと似た働きをする栄養素「アマニリグナン」を豊富に含有する、まさにスーパーフードと呼ぶにふさわしい食材です。
ニップンでは2000年代初頭から健康食材としての亜麻の可能性に着目し、2003年に販売開始した「アマニ油」や「ローストアマニ粒」はロングセラーを記録。しかし、原材料である亜麻はすべて海外産に頼っているため、近年は世界情勢不安による価格高騰や安定供給の課題に直面していました。そんな時注目したのが、北海道・道北の亜麻栽培。というのも、品質の良いアマニは朝晩の寒暖差が激しい地域で取ることができ、歴史をひもとけば日本が栽培発祥の地でもあったのだそうです。
「亜麻はかつて茎を利用した繊維(リネン)の製造が軍需産業として発展し、北海道各地で栽培されていたそうです。しかし戦後は化学繊維の急速な普及により衰退し、亜麻畑も姿を消してしまいました。北海道に刻まれた亜麻の歴史を『食』として復活させ、再び全国へ普及させたい…北海道にルーツを持つニップンだからこそ、事業を通じて北海道に恩返しをしたいと考えたんです」
ニップンでは2000年代初頭から健康食材としての亜麻の可能性に着目し、2003年に販売開始した「アマニ油」や「ローストアマニ粒」はロングセラーを記録。しかし、原材料である亜麻はすべて海外産に頼っているため、近年は世界情勢不安による価格高騰や安定供給の課題に直面していました。そんな時注目したのが、北海道・道北の亜麻栽培。というのも、品質の良いアマニは朝晩の寒暖差が激しい地域で取ることができ、歴史をひもとけば日本が栽培発祥の地でもあったのだそうです。
「亜麻はかつて茎を利用した繊維(リネン)の製造が軍需産業として発展し、北海道各地で栽培されていたそうです。しかし戦後は化学繊維の急速な普及により衰退し、亜麻畑も姿を消してしまいました。北海道に刻まれた亜麻の歴史を『食』として復活させ、再び全国へ普及させたい…北海道にルーツを持つニップンだからこそ、事業を通じて北海道に恩返しをしたいと考えたんです」
数々の困難を乗り越え
誕生した「黄金の種」
「金のアマニ」の開発は困難の連続でした。まず直面したのが品種の問題。世界の亜麻生産の9割以上を占めるのはブラウン種と呼ばれる茶色の粒ですが、主に工業用、飼料用として使用されるため、トレーサビリティの取得が不可だったのです。一方、世界でわずか10%程度しか栽培されていない医薬、食用に開発された「ゴールデン種」であれば確実にトレーサビリティの取得が可能。実際、ニップンではこれまでの海外産もすべて「ゴールデン種」のみを使用してきました。
「日本の『ゴールデン種』の栽培地は道北のみに限られ、無事に生育が進んでも製品になる歩留まりは全体の5割から7割程度しかありません。更に、収穫した種がニップンの規格に合う品質か、オメガ3脂肪酸含有量が適切かなど、さまざまな検査に合格する必要があり、その産地探しは難航するとみられていました。しかし幸いなことに、士別市や剣淵町のアマニはすべて規格内に収まりました」
次に立ちはだかったのが、生アマニに含まれる有毒物質「シアン化合物」の除去です。
「これまで使用してきた海外産は通常、焙煎により日本の基準値まで下げた後に輸入されています。国産については基準値が設けられていませんでしたが、ニップンは子どもからお年寄りまで安心して召し上がっていただくために、海外産同様の処理を行うことにしたんです。しかし道内にその処理施設が存在せず、一度本州まで運ぶ必要がありました」
「日本の『ゴールデン種』の栽培地は道北のみに限られ、無事に生育が進んでも製品になる歩留まりは全体の5割から7割程度しかありません。更に、収穫した種がニップンの規格に合う品質か、オメガ3脂肪酸含有量が適切かなど、さまざまな検査に合格する必要があり、その産地探しは難航するとみられていました。しかし幸いなことに、士別市や剣淵町のアマニはすべて規格内に収まりました」
次に立ちはだかったのが、生アマニに含まれる有毒物質「シアン化合物」の除去です。
「これまで使用してきた海外産は通常、焙煎により日本の基準値まで下げた後に輸入されています。国産については基準値が設けられていませんでしたが、ニップンは子どもからお年寄りまで安心して召し上がっていただくために、海外産同様の処理を行うことにしたんです。しかし道内にその処理施設が存在せず、一度本州まで運ぶ必要がありました」
ローカルからグローバルへ
目指すは世界の「AMANI」
長い道のりを経て、2023年11月に「金のアマニ」は誕生しました。以後、単なる商品販売にとどまらず、普及活動にも精力的に取り組んでいます。さまざまな観光スポットやベーカリー、レストランで「金のアマニ」を使ったコラボ商品を展開する他、士別市、旭川市とは包括連携協定を締結。地方創生の面からも地域貢献を目指していると有川さんは言います。
「例えば士別市と剣淵町では毎年、亜麻の花の見学ツアーを開催しています。亜麻の花や士別市の見どころなど、あまり知られていない地域の観光促進を通じて、少しでも地域発展につながればと考えているんです」
目指すゴールは日本でローストアマニが日常食となり、国民が食生活から健康になること。有川さんはそんな将来に向け、これからの意気込みを語ってくれました。
「北海道は耕作放棄地の増加といった農業課題があり、アマニ栽培がその解決の一助になることも目指しています。海外輸出にも挑戦し、『KIN NO AMANI』として世界共通の言葉になり、やがて北海道を代表するグローバルブランドに成長する。そんな将来像も夢見ているところです」
「例えば士別市と剣淵町では毎年、亜麻の花の見学ツアーを開催しています。亜麻の花や士別市の見どころなど、あまり知られていない地域の観光促進を通じて、少しでも地域発展につながればと考えているんです」
目指すゴールは日本でローストアマニが日常食となり、国民が食生活から健康になること。有川さんはそんな将来に向け、これからの意気込みを語ってくれました。
「北海道は耕作放棄地の増加といった農業課題があり、アマニ栽培がその解決の一助になることも目指しています。海外輸出にも挑戦し、『KIN NO AMANI』として世界共通の言葉になり、やがて北海道を代表するグローバルブランドに成長する。そんな将来像も夢見ているところです」
ここがこだわり! 開発のポイント
株式会社ニップン

1873年(明治6年)北海道に設立された官営札幌製粉所をルーツとする製粉業界のパイオニア企業。工場の民営化、合併などを経て1896年(明治29年)、日本製粉株式会社として創立。パスタや小麦粉の製造・販売を行う他、食育や健康増進への取り組みにも尽力している。
東京都千代田区麹町4丁目8番地
https://nippn-info.com/amani1/
https://nippn-info.com/amani1/
- 前のページへ
- 次のページへ
北海道発!商品誕生エピソード
最新記事5件
北海道ルーツの企業が開発したスーパーフード金のアマニ【株式会社ニップン】
2025年9月29日 公開
一昨年に誕生した「金のアマニ」の誕生エピソードや将来像について、同社の有川由紀子さんにお話を伺いました。
若手農家たちと老舗メーカーが生んだ新スイーツ「ナッツペーストシェイク」【池田食品株式会社】
2025年4月28日 公開
商品の誕生の経緯について、同社代表取締役の池田浩輔さんにお話を伺いました。
愛犬と一緒に食べられる、ヴィーガン&グルテンフリーケーキ【CHaT VEGAN AND GLUTEN FREE for dog & human】
2025年3月31日 公開
商品開発の経緯や、お菓子作りへの思いを代表の柴田愛里沙さんに伺いました。
初心者でも簡単、あっという間に自宅で本格カレーが作れるスパイスカレーキット【sug spice】
2025年1月13日 公開
スパイスマニアでありながら、中学生のお子さんを育てるお母さんでもある小杉さんに、商品への熱い思いを伺いました。
医大生が開発した「世界一やさしいチョコレート」andew(アンジュ)【株式会社SpinLife】
2024年10月7日 公開
固形物を食べることもままならない患者のために開発したチョコレートが「andew(アンジュ)」について、開発者の中村さんにお話を伺いました。