北海道発!商品誕生エピソード 北海道発!商品誕生エピソード【大正9年創業の老舗が道産素材に魂を吹き込んだブルース納豆/南平塚食品株式会社(登別市)】

2019年7月29日 公開

大正9年(1920年)に創業し、来年で百周年を迎える道南平塚食品。同社の納豆は北海道洞爺湖サミットの朝食にも採用され、全国の北海道物産展でも大好評。素材選びにも製法にも、驚くほどの「こだわり」が詰まった納豆作りについて、4代目社長となる平塚正雄さんにお話を伺いました。

品質とブランド力の探求で「選ばれる商品」を目指す。

社長/平塚正雄さん

登別市幌別町の中心部をやや外れた道道沿いに、小さいけれども不思議なほど存在感を放つお店があります。豆腐店として創業し、昭和10年から納豆を作り続けて80年以上、道南平塚食品の工場に併設された直売所です。
出迎えてくれた平塚さんは、子どものころから家業の納豆作りを見て育ちました。
「昔の納豆には特に商品ごとの差別化はなく、スーパーに並んでいるものの中から少しでも安いものを買うという感覚が一般的でした。ところが、私が父の跡を継いだ頃、本州から『水戸納豆』という高級納豆が進出してきたんですよ。もうびっくりしましてね。高い品質とブランド力があれば、値段に関係なく物が売れるんだということを教えられました」
それを機に、自分も北海道ならではの納豆ブランドを確立しようと考えた平塚さん。有機農法について学び、土壌にもこだわった大豆栽培を手掛けるなど〝最高に美味しい納豆作り〟を始めました。もともと探求心旺盛な職人気質だったこともあり、倶多楽山系の伏流水をさらに活性化させた水を使ったり、蔵内に清浄な空気を対流させ、熟成中はヒーリングサウンドを流すなど、あらゆる側面からの研究を重ねます。

当時の常識を打ち破る高級納豆で得た全国的評価。

そうして誕生したのが「豆の文志郎」シリーズ。渋みやにおいがなくまろやかなおいしさで、2007年の発売当時で1パック500円という値段にもかかわらず、口コミによる評判は全国に…。翌年に開かれた北海道洞爺湖サミットの朝食に採用されたほか、数々の賞を受けるなど高く評価されています。
その後も平塚さんの研究はやむことなく、数年前からは納豆菌も自作するように。
「あまり知られていませんが、多くの納豆メーカーは、本州の納豆菌専門会社から菌を買って使います。うちも以前はそうでした。とはいえ、菌は生き物であり、納豆作りにおいて非常に重要な存在です。自分で育てるべきだと考えるようになり、茨城工業試験場の先生の協力を得て、自家培養に踏み切りました」
北海道の気候風土に合った菌でこそ、健康に育ち元気に力を発揮できるはずと、道産の稲わらから天然の納豆菌を採取して培養をしているそうです。

ゆったりした気持ちで納豆菌と向き合う新商品。

平塚さんの会社では、高級ブランドである「豆の文志郎」以外にも、毎日気軽に食べられる価格帯の「くま納豆」などを手掛けていますが、昨年9月に新たにお目見えしたのが「ブルース納豆」。
「これまでは、主に素材やその産地を全面に押し出したネーミングにしてきましたが、今回は作っている時の『気持ち』を前に出してみようかなと思ったんですよ」と平塚さんは笑います。納豆菌は生き物。作り手がイライラした気持ちで扱えば、それは必ず菌にも伝わってしまうというのが平塚さんの考えです。ブルースを聞いている時のようにゆったりした気持ちで菌に向き合うことを意識して作るのが、このブルース納豆なのだとか。
「それに加えて、原料が青大豆だというシャレもあるんですけれどね。青大豆、つまりブルーの大豆というわけです」
そんな遊び心を生かしてパッケージも実にユニークなブルース納豆。大粒の青大豆は雑味がなく、かむほどにほんのりした甘さと豊かな豆の風味があふれ出ます。
「医食は同源。納豆には血液をサラサラにし、腸内細菌も整えてくれる効果もあると言われています。美味しく食べて健康になる幸せを、たくさんの方に知ってほしいですね」

ここがこだわり!開発のポイント

自然に逆らわない吸水で芯までふっくら柔らかく
豆の吸水工程では水温調節はせず、自然のままの水温で。低ければ時間を長く、高ければ短く調整し、豆に負担をかけません。
国立公園内の伏流水にさらに磨きをかけて
浸す、蒸す、発酵とすべての工程で関わる〝水〟。国立公園内に水源を持つ倶多楽山系の良質な水を活水器で磨いて使います。
大粒の十勝産青大豆「大袖振」を使用
原料の大豆は、ほんのりとした甘みを持つ「大袖振(おおそでふり)」。情熱ある農家が愛情込めて育てたものです。

道南平塚食品株式会社

大正9年に室蘭で豆腐店として創業し、昭和10年から納豆製造を開始。大量生産はせず、手作業中心で「小さな工房型」の納豆作りを貫いている。
登別市幌別町4-12-1
TEL.0143-85-2167
https://nattou.co.jp/

北海道発!商品誕生エピソード

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