医大生が開発した「世界一やさしいチョコレート」andew(アンジュ)【株式会社SpinLife】
2024年10月7日 公開
薬学部、医学部編入を経て北海道で知った難病
その後、同大の研究内容を調べている中で出合ったのが「表皮水疱症」。患者は先天的に皮膚を保つためのタンパク質が欠損しているため、ほんの少しの刺激や摩擦で皮膚がはがれてしまうという難病です。口腔内も同じく「ポテトチップスを食べると、針を食べているような痛みが走る」という患者の声も聞いたそう。食事そのものに困難を抱えているため、低体重や低身長の患者も少なくありません。
「名前はあまり知られていない病気ですが、初めて患者さんの姿を見た時、あまりの痛々しさに衝撃を受けました。当時の自分はまだ学生ですので医療行為はできませんが、それでも患者さんたちのために何かできないかと考えたんです」
そこで発案したのが、患者のための「食」を提供すること。
「患者さんの食事は液状の栄養剤がほとんどです。栄養摂取はできますが、決しておいしいと言えるものではありません。僕も患者さんの気持ちを理解しようと1週間それだけで生活を試みましたが、3日で心が折れてしまいました。口腔内や消化器官を傷つけることなく充分な栄養補給ができるおいしいものを開発しようと思い立ったんです」
栄養豊富な素材とショコラティエの手で完成
「栄養に関しては薬学の知識も生かしながら素材を検討しましたが、チョコレート作りは素人です。初めは素材のざらざらとした舌触りや臭さが残ってしまったり、すぐに溶けてしまったりと、とにかく困難続きでした」
そんな折り、出合ったのが札幌発のチョコレート・ブランド「SATURDAYS CHOCOLATE」。カカオの生豆から作る手法「ビーン・トゥ・バー」にこだわり、国内外で高い評価を受けているブランドです。中村さんはすぐに同社の代表に直談判したところ、開発に協力してくれることになりました。「やはりプロの技術力や知識は圧倒的でした」と中村さんは笑います。
完成したチョコレートは、カカオ、アーモンド、チアシード、きなこ、ココナツ、ケシの実、昆布、抹茶などを加え、29種類の栄養素を摂取可能。ネーミングには「優しさの輪が広がってほしい」という願いを込め、「and you(あなたと一緒に食べたい)」から「andew(アンジュ)」と名付けました。
更に、工房設立に必要な資金をクラウドファンディングで呼び掛けたところ、目標金額の倍である約200万円の支援を受けることに成功。こうして2020年5月「andew」が発売されました。
患者の将来のために「優しい気持ち」を社会へ
また最近では余市町の果樹園で余ったリンゴを使った「アップルショコラタルト」を開発するなど、商品展開も拡大中。しかし「まだまだ目標には達していません」と、中村さんは真剣な表情で話します。
「チョコレートを通じて患者さんに栄養補給をしてもらうのはあくまで副次的なものですし、売れてほしいのは活動を維持するためです。目標は表皮水疱症という病気を世の中に広め、理解してもらうことにあります。患者たちは日常生活だけでなく、将来の就職や進学にも困難を抱えてしまう場合がほとんどです。今、病を抱える子どもたちが10年後に就職を迎えた時、面接官がこの病気を理解してくれていたら、状況は大きく異なるでしょう。僕の使命は、チョコレートを通じて優しい気持ちを広めることにあるんです」
ここがこだわり!開発のポイント
株式会社SpinLife
https://spinlife.jp
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