ピックアップ情報 ジョブキタ北八劇場シリアスシリーズ「〜納谷版〜藪の中」出演者インタビュー

2025年11月17日 公開

2025年3月、ジョブキタ北八劇場で朗読劇として上演され好評を博した「藪の中」を、劇作家・納谷真大が大胆なアレンジを加えて舞台化。“納谷版”と銘打って今月末から公演を行う。朗読劇にも出演した3人に作品の見どころや本作への意気込みを聞いた。

「それぞれの視点と記憶が交錯するミステリー」

左から小林エレキさん、五十嵐みのりさん、坂口紅羽さん

同じ場面を見ているのに、
人によって全然“見え方”が
違うことってありますよね。

─朗読劇から舞台化が決まった際の印象はいかがでしたか?
五十嵐 作品の持つ力がすごいなというのを朗読劇をやった時に感じたんです。読み解いていくと、言っていることがずれていたり、つじつまが合っていなかったり、いろんな人の視点から事件に対して証言していくところが面白いです。それを納谷さんが現代版にアレンジして舞台にするというのは、すごく興味深いと思いました。
坂口 原作は100年以上前の作品なので、文章が硬かったり、言葉が難しかったり、朗読だけで面白さを伝えられるかは、正直、不安でした。でも今回は言葉だけではなく、舞台上でシーンとして再現され、現代に置き換えることでぐっと身近になり、藪の中という作品の面白さがどんな方にも伝わるんじゃないかと思っています。
小林 原作はすべて一人称で進行していきますが、この舞台では誰かの記憶を手掛かりに物語が進んでいきます。本来出てこない検非違使(けびいし)も、坂口さんのホステス役で舞台上に現れ、謎に迫っていく。更に物語には「あれ?」って思う瞬間がたくさん散りばめられていて、それが説明されることもない。まさに藪の中を進むように、いろんな引っ掛かりを感じながら楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。
─同じシーンが何度も繰り返されるような構成だとか?
五十嵐 物語は私の回想から始まって、他の人から見た同じ場面が何回も繰り返されていきます。その中で「最初はあの人、ああいう発言してなかったよな」とか「さっきの時はこういう動きじゃなかったのに」とかいろんな違和感を覚えるはず。日常生活でも、同じことを話しているのに人によって見え方が違うことってありますよね? そんな感覚になるんじゃないかと思います。
坂口 ありますよね、そういうの。だからもし私が演じるホステスが、小林さん演じる城島のことをめちゃくちゃ嫌っているとしたら、過去の話をする時もすごく嫌な感じで言うでしょうし、逆に五十嵐さんのことをめちゃくちゃ好きだったら、すごく良い人として話すはず。見ているお客さんも「これは誰の視点だ?」って感覚になる気がします。

中身が濃い納谷作品。
観終わった時の
満足感は大きいはず。

─今回の演出で特徴的なことはありますか?
五十嵐 普段の舞台だと、台本に書かれているテキストと、書かれていないけど心の中で思っているサブテキストがあって…。
小林 例えばセリフでは「大嫌い」と言ってるけど、本心では大好きとか…ね。
五十嵐 そうそう。役者としてはそういうサブテキストをどう表現するかが本来、すごく重要なんです。でも今回、納谷さんは「サブテキストはいらない」と、稽古中もよく言っていて。誰かの視点を通して描かれる役をそのまま演じるというのは新鮮でしたね。
坂口 今回に限らずですが、納谷さんは常にパッションにあふれる人なので、演出する作品はどれも濃いんです。本当なら3〜4時間ぐらいかかるような作品をテンポと勢いでぎゅっと2時間に詰め込む。今回はコメディではなくシリアスなストーリーですが、いつも通り中身は濃く、舞台を観た方は、すごく満足して帰れると思いますよ。
─ありがとうございます。最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
小林 いつもは笑いのイメージが多い納谷さんの作品ですが、がらっと変わってとても見応えのある作品になっています。年末の忙しい時期ではありますが、劇場に来ていただけたら損はさせません!
坂口 芥川作品というと難しそうとか、理解できるのかって思われるかもしれませんが、それを分かりやすく現代版に置き換えて、小説とは一味違う、視覚的にも分かりやすいものになっています。納谷演出らしい「クスッ」とできる瞬間もしっかり散りばめられています。
五十嵐 初めて演劇を観る方でも予備知識無しで楽しめるのが納谷さんの作品です。「藪の中」を知らなくても十分楽しめますし、青空文庫で原作が読めるので、読んでから来ていただけるとより一層面白く観ていただけると思います。
※配役は日程により異なります。

ジョブキタ北八劇場シリアスシリーズ 納谷版〜藪の中

真冬の札幌、吹雪の夜。 とある飲み屋の周年パーティーで、ある騒動が起こる。 数日後、そこに居合わせた一人が遺体で発見される。警察はそれを事故死と判断するが…。
それぞれが持つ「あの日の記憶」。 それは語る者によってどこか食い違い、視点がぼやけ、証言は互いに矛盾していく。 誰もが語り、誰も同じことを語らない。 果たして真実はどこにあるのか? 事実を突き止めることはできるのか? 真実と事実が、幾重にも交錯する。

●本作品は、さっぽろアートステージ舞台芸術部門「札幌劇場祭Teater Go Round(TGR)2025」の大賞エントリー作品です。

原作/芥川龍之介
脚本・演出/納谷真大
出演/〈シングルキャスト〉五十嵐みのり、内崎帆乃香、小西麻里菜、小林エレキ、坂口紅羽、明逸人、山野久治
〈ダブルキャスト〉大田黒ヒロタカ、神成悠平、菊地颯平、柴田智之、納谷真大
【日程】
前期/2025年11月29日(土)〜12月7日(日)
後期/2025年12月24日(水)〜12月28日(日)
(20ステージ)※開場は開演30分前

【チケット】
・一般:5,000円
・学生:2,000円
・中学生以下:1,000円
※すべて税込※前売当日共通

【会場】
ジョブキタ北八劇場
札幌市北区北8条西1丁目3番地

詳細・申し込みはこちら
ジョブキタ北八劇場公式サイト
https://kita8theater.com/

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