AIの「鮮度」を常に保つプロセスを世界中に。【AWL(アウル)株式会社】
2022年8月4日 公開
既設の防犯カメラを活用するというひらめき。
「創業当時は、ディープラーニング(機械学習の手法)の期待値が高く、AIが確実にメインストリームになる未来が見えていました。僕はもともと大手企業の社員として、IT先進地の米国カリフォルニア、シリコンバレーで新規事業の創出に携わっており、現地でもスタートアップや世界をリードするサービスが次々と誕生するのを目の当たりにしています。その熱気を自らも作り出したいと、2017年からAWLに参画したんです」
同社のサービスを代表するのが既設のセキュリティーカメラをAI化する「AWLBOX(アウルボックス)」。大手ドラッグストアチェーンの母体・サツドラホールディングスと業務提携し、研究開発や商品企画、実証実験を重ねる過程の「ひらめき」から生まれたという。
「当社の専門分野は『エッジAI』と呼ばれる端末自体にAIを搭載する技術です。主要顧客である小売店の課題解決に、AIを組み込んだカメラを新設する手法を考えていましたが、部材を揃えるだけでも莫大なコストがかかります。頭を悩ませていた時、多くの店舗にはすでに防犯カメラが設置されていることに気づき、その映像を集めて効率的にAI処理するとコストが抑えられるのではないかとひらめいたんです」
お客様に合った広告を表示し、店舗をメディア化。
「国内にはAIをテーマにした大学研究室はまだまだ少なく、そもそも人材の需要に対して供給が間に合っていない状況です。しかも、当社は資金も知名度もまだまだですから、目を向けてもらえる機会は多くありません。そのため、海外の工科大学卒業生や文部科学省(MEXT)、JICA(国際協力機構)の留学生・インターン生といった人材に着目しました。外国人は英語で書かれた最新のAIの論文を正確に読み解けるなど、結果としてレベルの高い人的なリソースをそろえることができたと思います」
最近は、こうしたグローバルなメンバーとともに「店舗のメディア化」にも力を入れている。主要顧客の小売業界では、お客様がどう商品までたどり着き、それを使い続けてもらうかがニーズの高い課題なのだそう。
「その解決策として店内のデジタルサイネージにエッジAIを搭載し、お客様に合わせた広告を表示するテクノロジーを提供しています。通過数や商品を見ている時間、視聴数の計測、性別・年齢の属性などの分析をもとに、販売促進を支援するのが目的です。ただし、特定の人物を識別させず、個人情報を絶対に侵さないようにコントロールすることが難しさであり、当社の社是でもあります」
AIを「腐らせない」ための学習プロセスが大切。
「AIを社会実装する際、工場でネジの不良品を見つけるといった環境の変化が少ないケースであれば、何もせずとも上手く活用できるでしょう。一方、リアルな社会は常に状況が変わるものです。例えば、コロナ禍以前はマスクといえば白でしたが、現在は黒をはじめカラフルな商品も数多くあります。この場合、AIをアップデートさせなければ、マスクを認識できなくなるんです」
同社でも「AWLBOX」の開発中に、ラボでは認識精度が高かったものの、実店舗で検証した途端に機能しなくなった経験が何度もあった。つまり、刻々と変化する環境下ではAIの鮮度を常にキープさせるための「学習プロセス」を用意することが大切なのだという。
「当社はエッジAIを実店舗にフィットさせるために、独自のノウハウを積み上げてきたことで、『腐らない学習プロセス』を確立させつつあります。その応用範囲を広げ、いずれは世界中のAIアプリに、このプロセスを導入するのが最終目標です。僕らがトップランナーになれるチャンスも、ポテンシャルも大きいと考えています」
AWL株式会社
グローバルビジネスに挑戦するJ-Startup HOKKAIDO企業
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