北海道発!商品誕生エピソード 北海道発!商品誕生エピソード【苫小牧産ほっきの削り節をふんだんに使ったほっき節しょうゆ/有限会社永見(苫小牧市)】

2019年5月13日 公開

苫小牧といえばほっきの名産地。そのむき身の削り節をふんだんに使った「ほっき節しょうゆ」がブームになっているとか。苫小牧新開町に工場を構える有限会社永見を訪ねました。

蕎麦屋や飲食店を支える天然だしの素づくり

有限会社永見
代表
桃井一元さん

会社のドアを開くと削り節の良い香りが鼻孔をくすぐります。人懐っこい笑顔で迎えてくれたのは、同社代表の桃井一元さん。
「弊社は蕎麦屋や料理店に納める『業務用天然だしの素』を調合する会社で、創業は57年前、自分は二代目です」
かつては天然だしといえば鰹節、昆布、煮干しと決まっていたとか。しかし近年は店舗ごとに多彩な削り節をブレンドした“オリジナルのだし”を使うのが主流なのだそう。
「例えば魚の削り節も鰹節、鮭節、鯖節など種類が豊富になっていることに加え、産地や削り節を製造する企業によって、味や風味もまちまちです。弊社は全国から多種多様な削り節の原料を仕入れ、厚さを調整したり複数種を混ぜたりしながら、店の意向にフィットする天然だしを提供しています」

ほっきの削り節のうまさをたくさんの人に伝えるには

桃井代表がほっきの削り節を手掛けたのは16年ほど前。地元のラーメン店主の「ほっき貝を使った商品はないの?」という言葉がきっかけでした。
「商売柄で思いついたのが削り節です。ダッチオーブンを使って試作してみるとこれがなかなかうまい。すぐに製造会社にむき身を送り、本格的な削り節を製造してもらいました」
一般的に削り節は古来から伝わる温燻と呼ばれる製造方法で作られています。
「ナラやサクラ等の堅木を燃やし、その熱と煙でいぶしながら干していきます。ほっきも鰹と同様にガチガチの硬さになるんですよ」
それを0.6ミリ程度の厚さに削ったのが、世界初の『ほっきの削り節』。一口いただいてみると、香ばしさとまろやかさが口いっぱいに広がっておいしい!
「そのままでも食べられる上に使い方も多彩で、プロの評価も高く“コレはいける”と商品化したのですが…」
ん?ですが…?
「価格がネックでした。鰹節に比べると値段は約10倍。いくらおいしくても手が出ない、というのがお客様の声でした」
すでに全国ブランドでもあった苫小牧産のほっき。仕入れ価格を下げるのは至難の業です。かといって、評価が高いほっき節の製造をあきらめたくはない。悩んだ桃井代表の脳裏に浮かんだのが、ほっき節のだしを加えた醤油。
「醤油ならほっき節を効率良く使えるし、その分売価を抑えることもできる。結果的に多くの人にもほっき節を楽しんでもらえます」
こうして平成17年天然うま味調味料「ほっき節しょうゆ」が誕生したのです。

本物は必ず評価されるという信念を貫いて

化学調味料を一切使わないだしパックなど、材料・製法にこだわった商品がたくさん。

発売当初はPRも生産量もささやかなもの。販売先も地元の道の駅など、ごく一部に限られました。
「静かなスタートでした(笑)。それでも口にしたお客様からの『おいしい』『だしが効いてる』の声は届いていました」
中でも桃井さんが喜んだのは「自然の味がする」という評価。
「だし醤油の中には化学精製したエキスを使っている商品も多いんです。でもうちはほっき節の自然なだしだけ。他の原料にもこだわっていますし塩分も控えめです。体に本当にやさしい醤油なので、いつか日の目を見ると信じていました」
その言葉通り商品の人気は日増しにアップ。『白身魚に合う』など具体的な評価も寄せられるようになります。その声に後押しされるように取扱店も道外に広がっていきました。
「発売十数年を超えた今でも売上が伸びています。本物は必ず受け入れられる…、あきらめないで良かったと思いますね」
昨年はこの醤油のプレミアム版も登場。「価格をどう抑えるのかがポイントかな」と笑う桃井代表の挑戦はまだまだ続きそうです。

ここがこだわり!開発のポイント

全原料が道産+国産だけ
十勝産大豆に北海道産小麦、国産の厳しい管理のもとに生成された塩など、原料には絶対の自信あり!
小瓶1本に1個分のほっき
苫小牧産の新鮮なほっきからつくる削り節で、だしのうま味を醸成。豆腐にかけるとおいしさがよく分かる。
常識破りのブルーのラベル
醤油関連商品ではなかなか使われないラベルデザインを採用。「スーパーに陳列されると目立つんです」と桃井さん。
プレミアム版は1本にほっき節が3個も!
極上のだしを堪能していただきたい。そんな願いからプレミアム版は1本に3個分のほっき削り節を使用。うまさが濃厚!

有限会社永見

国内の多彩な産地から原料を取り寄せ、飲食店の個性にあった業務用天然だしを製造している。
苫小牧市新開町1丁目16-2
TEL.0144-57-3966
https://umamijapan.co.jp/

北海道発!商品誕生エピソード

最新記事5件

恐竜から鳥へ、生命の歴史が潜む。作ろう!フライドチキンの骨格標本【いしかり砂丘の風資料館】 2024年2月26日 公開

フライドチキンから生命の進化の歴史をたどるというユニークな講座を企画・指導している同館学芸員・志賀健司さんにお話を伺いました。

親子三代で引き継がれる、汗と涙の結晶。焼カシュー【池田食品株式会社】 2023年10月30日 公開

「焼カシュー」誕生の秘密を、同社三代目であり取締役の池田晃子さんに伺いました。

老舗菓子店の銘菓がリブランディング「生ノースマン」【千秋庵製菓株式会社】 2023年2月27日 公開

連日完売を続ける新商品誕生の裏側を探るべく、製造元である千秋庵製菓本社を訪ねました。

アイヌ伝統の薬草と北海道素材で作るのど飴「MINAMINA」/株式会社The St Monica[札幌市] 2022年4月18日 公開

開発を手掛けた株式会社セントモニカの代表、七戸千絵さんにお話を伺いました。