北海道ビジネスニュース【ふくしのよろずや 神内商店合同会社】
2021年1月11日 公開
北海道の福祉をもっと元気にするために、現場の問題解決にひた走る「なんでも屋」。

ボランティアから飛び込んだ福祉の世界。
「福祉や介護事業所の運営は施設長など現場側が仕切るのが一般的です。しかし、施設長が異動や転職をしてしまうと、それまで築いたノウハウやルールが継承されないケースが多くありました。そこで運営側と現場側を分け、きちんとしたルールやプランを運営側がつくることや、両者をつなぐマネージャーを育てることで、経営や人員不足、現場の負担といった問題を解決できることに気付いたのです」。
さらなる知識を身に付けるべく、働きながら北海道大学公共政策大学院の修士課程を終了。2016年に新たに誕生した介護福祉経営士の1級も取得します。苦労をいとわず経験を積んだ神内さんは、自らのノウハウや知識、人脈を業界全体へと還元するため、勤めていた特養老人ホームの施設長を辞して2019年、独立の道へ。「どうしても一か所にいると視野が狭くなりますし、業界全体を良い方向に導きたいと考えました。そのための選択肢は独立しかないと思ったんです」。
「アンパンマン活動」と、ITの活用でより良い業界に。
「コンサルティングで増えているのがコンプライアンスのご相談です。近年はさまざまな業種が福祉の経営に参入していますが、経営について詳しい一方で法律や規則に疎い会社が多いのです。逆に長く福祉に携わっている団体や企業では、よく言われるように経営、人材育成の不足などの問題を抱えています」。
さらに注目したいのが、AI・ICTといったIT技術の導入サポート事業。最新のテクノロジーを利用することで、現場の負担の軽減や業務の効率化、データの蓄積などさまざまなメリットが生まれるそうです。「福祉は医療と違って科学的なエビデンスではなく、過去の事例や考察、利用者の経歴や観察に応じてプランを決定します。個々のデータを蓄積していけば、事業所内での情報共有はもちろん、ケアプランの立案の元となる〝宝の山〟となるはずです」。
他にも福祉業界に人材を増やす活動や、社会から孤立した人をなくすための行動など、ボランティアで取り組んでいることも多いのだとか。さらに、北海道社会福祉士会会長や、各福祉団体の理事、大学の非常勤講師など数多く顔を持つ神内さん。「僕のようにフラフラした人間が必要なのかもしれませんね」と笑います。
誰もが気軽に介護士になれば、この国の問題が解決する。
また、今以上に問題が大きくなるのが介護現場の人員不足。介護が必要な高齢者の人数は、2040年にピークを迎えて現在より5割増の約950万人になると言われています。加えて働き手となる若者の人口が減少するため、より多くの介護士が必要となります。
「『お年寄りが好き』といった軽い理由でもいいので一度、働いてみるといいでしょう。どんな人でも、介護される側になる時が必ず来ます。親や親族の介護にも直面するでしょう。そんな時、自分が介護士になった経験は必ず生きるはず。資格を持たなくても働ける介護助手などの仕事もありますし、やってみて合わなければ辞めればいいんです。また福祉業界は転職や出戻りにも寛容で、働き方も昔からは変わりましたので、一度は辞めた方でも、どんどん再チャレンジしてみてください」。
介護は利用者に真摯に向き合うことで、自分ではできない疑似体験ができるのが魅力と語る神内さん。「経営者も芸能人も必ず介護のお世話になります。そんな人の話を毎日聞くことは、どんな勉強よりも自らの成長につながるはずです」。熱く語る神内さんの目には、福祉業界の明るい未来が見えているようでした。
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ITの活用について「福祉はヒト対ヒトで行なうのが一番」と自身も考えていた時期があったそう。一方、導入することで利用者と向き合う時間が増える、といったメリットのほうが大きいと説きます。
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「週刊介護新聞」では、30週にわたり介護業界のAI・ICTの活用に関する記事を連載していた。
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ユーモアを交えた語り口で、セミナーや講演も好評です。
ふくしのよろずや 神内商店合同会社
https://jinnaisyouten.com/
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